『更年奇的な彼女』クァク・ジェヨン監督 インタビュー

INTERVIEW

『更年奇的な彼女』

『猟奇的な彼女』(2001/韓国)『僕の彼女はサイボーグ』(2008/日本)に続く、“彼女”シリーズ三部作の完結編として、中国で製作された映画『更年奇的な彼女』のクァク・ジェヨン監督にインタビューを行った。

大好きな人との結婚を夢見る女の子、チー・ジア(ジョウ・シュン/日本語吹替え:藤原紀香)。大学の卒業式にウェディングドレスで出席し、同棲中の恋人にプロポーズしたが―「結婚は考えられない」。プライドは崩れ、トラウマを引きずった彼女は26歳で更年期と診断される。そんなある日、大学でもっとも冴えない男だったユアン(トン・ダーウェイ)に助けられる。親友の毒舌女リン・シューアル(ジャン・ズーリン)の猛反対を押し切り、冴えない彼との奇妙な同居が始まる―。

―本作でも、監督の過去作と同じように濃いキャラクターの女性が多く登場しますが、モデルはいますか?
私の周りで言いますと、娘たちよりも妻ですね。妻と似ているキャラクターを描写していることはあります。行動そのものというよりも、妻の行動を見て、そこから想像力を刺激されるということがあるんです。だから、妻が現実的ではないような行動を取っているのではなくて、妻のとった行動から想像力を働かせて作り変えるということはあります。

―監督が描く女性観を教えてください。
強いキャラクターであればあるほど、内面に弱さが隠されていると思っています。あるいはその両方をバランスよく取っているんじゃないかと思います。別の言い方だと、弱さを隠すために強く見せているって言うこともあると思うんです。私が描くヒロインたちは一見強く見えますが、実は悲しみと心の痛みを持ち合わせている。一方、男性は弱く見えるのですが、好きな人のことを大切にしてずっと守り続けていく。そう考えると弱く見える男性が実は強かったり、あるいは持続力を持っているといえると思います。

―今でも変わらず若い感覚で描ける秘訣はありますか?
私もだんだん年を重ねていますので、そういった感覚を維持し続けるというのは本当に大変なことだと思っています。以前に比べると少し感覚が鈍っているところもあるかもしれません。でも幸いなことに助けになっているのが、私の周りにいる娘たちです。娘たちを通して、いろんなことを受け継げているのかなと思います。最初に私の映画を見てくれる観客は娘たちだだという思いで作っているので、そういう感覚が維持されているのかなと思います。

―“彼女”シリーズ三部作として、韓国、日本、本作の中国でピュアな男性を描いていますが、各国で違いはありますか?
特に三カ国を区別して考えたことはないのすが、演技パターンが俳優によって違いますので、その違いがあるんじゃないかなとは思います。実は『猟奇的な彼女』のチャ・テヒョンさんは演技が少し大げさだったので、逆にそれでより弱く見えたんじゃないかなと思います。彼女役のチョン・ジヒョンさんがそれを受けて反応を見せますよね。韓国でもその役をできるのはチャ・テヒョンさんしかいないと思います。『僕の彼女はサイボーグ』でジロー役の小出恵介さんは内面を見せてくれる俳優で、感情に正直に演じてくれました。チャ・テヒョンさんは涙は見せていない。それを考えると日本人のほうが気持ちに率直なのかなと思いました。韓国の場合は男性が泣くのは恥ずかしいという見方もあります。中国は韓国よりは気持ちを表に出しているなと思います。ユアンは弱く見えるけど、マッチョ的なところもあるけれど、そこを抑えて、女性に優しく接しています。

―ユアンは男性から見ても理想的な男性像ですが、監督の理想像でもありますか?
もし全ての男性がユアンのような男性だったら彼が魅力的に見えないんだと思うんです。彼の場合は長い間、ひとりの女性をずっと思っていて、ずっと変わらない愛を捧げています。なかなかそういう人は現実にはいないんじゃないかと思います。一般の観客の皆さんは彼のようにはできないと思いますが、少しでも彼に近づこうと努力をすれば愛も叶うと思います。

―中国での製作ですが、撮影方法の違いはありますか?
韓国や日本で考えていた映画作りとは全くシステムが違いました。この作品は私が中国で最初に手がけた作品ではなく、もともともは別の作品を撮るために中国に行きましたが、ひとつは撮影の途中で中断してしまい、もうひとつは企画の段階で流れてしまいました。私としては中国市場や、現場を知った上でこの作品を手がけることになりました。今回は最初の作品のスタッフが再び集まって作ったので不思議な縁ですね。縁と言えば、日本のテレビドラマを見るのですが、全部通してみたのは2作品だけです。そのうちの1作品が藤原紀香さんが出演していた「スタアの恋」(2001/フジテレビ)なんですけど、今回私から藤原さんを指名したわけではないので、これも不思議な縁だと思います。
*1・・・本作のヒロイン、チー・ジアの日本語吹替えを藤原紀香が担当

―監督の過去作にも共通する言葉や感性がありますね。
意識しているわけではないのですが、共通点にはなっていますね。

―本作の撮影でもっとも苦労したシーンはどこですか?
水が車に入ってくるシーンです。俳優たちは冷たい水の中なので、なおさら大変だと思います。苦労したのは俳優のスケジュールで、一日も休まずに39日間で撮らなければいけなかったのです。少しでもずれてしまうと撮り損ねてしまう。

―ところで、チー・ジアの髪型が気になるのですが、意図をお聞かせください。
チー・ジアを演じるジョウ・シュンさんはもともとロングヘアーだったんですが、このキャラクターを表現するときに、破天荒な感じが合わないと思い、別のスタイルを望んでいました。『僕の彼女はサイボーグ』の綾瀬はるかさんのような髪型はどうかなと提案してみたところ、コーディネーターの方を通してこの髪型を提案していただきました。

『更年奇的な彼女』クァク・ジェヨン監督インタビュー (3)

『更年奇的な彼女』クァク・ジェヨン監督インタビュー (2)

『更年奇的な彼女』 (1)

『更年奇的な彼女』 (2)

『更年奇的な彼女』ポスター

TRAILER

DATA
映画『更年奇的な彼女』は2016年4月8日(金)よりTOHOシネマズ日本橋、TOHOシネマズ新宿ほか全国で順次公開!

監督:クァク・ジェヨン
出演:ジョウ・シュン トン・ダーウェイ ジャン・ズーリン ウォレス・チョン
配給:アジアピクチャーズエンタテインメント/エレファントハウス/カルチャヴィル
配給協力:DMZ tokyo

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