『ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~』登山家オム・ホンギル インタビュー

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INTERVIEW

『ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~』

壮絶な挑戦を行った登山家と仲間たちの軌跡を描いた映画『ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~』で実在の主人公で登山家のオム・ホンギルにインタビューを行った。

―ヒマラヤの魅力とは何ですか?
オム・ホンギル 言葉で表現するのは限界がありますが、大きな感動や敬う気持ちの一方で恐れる気持ちを持たせてくれるのがヒマラヤです。大自然の偉大さや神秘さを感じさせてくれます。ヒマラヤを見ていると、ため息が出てしまいます。私という存在について悟らせてくれますし、また自分自身について振り返らせてくれる、そんな場所です。それと同時に挑戦の対象でもあります。

―映画をご覧になっていかがでしたか?
オム・ホンギル 映画は11回見ました。気に入っています。私は一人の観客でもありますし、同時に実在人物として私がその経験者でもあるわけですから、見るたびに本当に感動します。映画ではありますが、現実とあまり距離感がなく、リアリティがあると思います。ヒューマン遠征隊として私があそこに向かったのは11年前のことだったんですけど、最近行ったような感じを受けますし、生々しく当時のことが甦ってきます。映画を見ていると何か共有できるような感じがします。

―韓国の山岳活動はどのような状況ですか?
オム・ホンギル 非常に活発であると思います。登山人口が相当増えています。韓国の人口は5000万人くらいですが、1500万人以上が登山をする方たちです。韓国内のみならず、外国の高い山に挑戦をする方も増えていますし、またトレッキングに行く方の人口も増えています。愛好家の方も相当増えています。

―自身の役をファン・ジョンミンさんが演じることをどう思いましたか?
オム・ホンギル 非常に演技力が優れている方なので、もちろんよかったなと思いました。

―ファン・ジョンミンさんとお話はされましたか?
オム・ホンギル 話しましたし、お酒をごちそうになったこともあります。酔っぱらうほどは飲まないです(笑)適度に飲みます。

―オム・ホンギルさんから見て、ファン・ジョンミンさんはどんな方ですか?
オム・ホンギル とても有名な方にもかかわらず気さくな方です。格式ばっていないですし、人間味がありますし、情もある方です。

―この映画を作ろうと思ったきっかけは何ですか?
オム・ホンギル この映画を作ろうと思うに至るまでは、非常に悩みました。何度かオファーをいただいて、お断りをしたのですが、悩んだ末に作ろうと決心しました。その理由は、最近の世の中はあまりにも高度に発展してしまったために、人と人の関係や縁が本来は重要であるにもかかわらず、その重要性について忘れて生きているようなそんな感じがしたからです。

―この映画で伝えられたらいいなということはありますか?
オム・ホンギル 共同体として生活していく上で必要な、人への思いやりや譲り合いの精神、お互いを理解すること、また仲間や人に対する愛情、そういったものがなくなってきているのではないかなと思います。また、人が交わす約束が軽んじられていることも多くなってきていると思います。この映画にはヒューマニズムがあちこちに散りばめられてあります。人が出会うことによって結ばれた縁の重要性、また後輩の遺体を収集することを心の中で約束し、それを履行しなければいけないという、お互い仲間を思いやる気持ちや頼りあう気持ち、また一つの共同体としての意識を持つことが重要なのではないかと思います。人間が守るべき義理、生きていくうえで守らなければいけない道理がヒューマン遠征隊の中には息づいていると思い、そういうこともこの映画を通して作りたいなという風に思いました。またこの映画を観た方々が、映画を通して、そういったことを感じてほしいと思いました。自分自身について振り返り、また周りの人について考える時間を、この映画を通して持ってもらいたいなと思いました。

―撮影現場には行きましたか?また、登山に関するアドバイスなどはしましたか?
オム・ホンギル 韓国国内の撮影現場には行きました。登山に関するアドバイスは、スタッフや俳優自身が撮影に入る前に基本的なこと、ロッククライミングやアイスクライミングのようなテクニカルな部分を学びました。撮影をするときは、プロの登山家が数人常駐していて、テクニカル技術的な部分は現地で指導し教えていました。

―あなたにとっての山とはどんな存在ですか?
オム・ホンギル 私にとっての山は心の中のふるさとであり、また魂が休まるところでもあります。山の中にいるととてもリラックスすることができますし、幸せを感じることができます。しかし、8,000メートル級の高い山に登るとなると違い、それは挑戦の対象になります。成功するために、限界や危険な状況を克服し、打ち勝たなければなりません。登山は、山という存在に対して恐怖心も感じますし、また敬う気持ちも感じます。いくら私が8,000メートル級の山を登った経験が多いとしても、山に登るときはいつも初めてのような気持ちです。ですから、怖いという気持ちがある一方で、胸がドキドキワクワクときめく気持ちもあります。また毎回新しい挑戦をするわけですから、震える気持ちもあります。漠然とした思いが交差します。山は壮大で神秘的で美しいですが、内側の世界に入ってしまうと冷酷で冷たいのです。一瞬のミスも許されない世界に入っていくというわけです。

―山に入るときに精神的、体力的に重要なことはありますか?
オム・ホンギル その二つがどちらも重要です。体力があって精神力がないのも駄目ですし、精神力があって体力がないのも駄目です。同じようにどちらも必要ですが、どちらかというと精神力のほうが必要だと思います。ですが、全体的に同じくらい重要です。

―一番最初に山に登ろうと思ったきっかけは何ですか?
オム・ホンギル 生まれは韓国の南にある海に近い地域です。3歳の時に両親とソウルの近くの地域にある山の中に引っ越しました。3歳の時から山の中で生活し、成長していく中で、自然に山のことを知っていくことになりました。登山をするきっかけは、家から10分ほど離れたところに大きな岸壁があり、週末になると登山家がキャンプをしたり、ロッククライミングをしていました。幼いころからそういう姿を見て、衝撃を受け、好奇心を持つようになりました。すごく楽しそうだし、すごくスリリングだなと思うようになりました。そして中学生のころからロッククライミングの世界に入るようになりました。私の住んでいた町から大きな通りに出るには、40分~1時間ほど降りていかなければならず、そういう山の中の家で35年間暮らしていました。毎日山を登ったり下りたりしていましたので、自然と身体の部位が発達していきましたし、自然と登山をするのに適した登山に順応するような体型へと変わっていったわけです。

―今後登りたい山はありますか?
オム・ホンギル 私は目標としていた山、夢や目標はすでに達成しましたので、登りたいという山はありません。今は第二の人生に挑戦をはじめています。オムホンギルヒューマン財団という財団を作りまして、ヒマラヤの奥地に学校を建てる事業を行っています。ヒマラヤから戻ってきたものとして、今まで手助けや恩恵を与えてくれたことに対してやらなければいけないと山が悟らせてくれました。子供たちの夢をかなえるためにヒューマンスクールを立てています。

―最後にメッセージをお願いします。
オム・ホンギル この映画を見た方に大きな感動を感じてほしいです。暮らしや人生において、愛やそういったものを感じさせてくれる大事なものになってくれればいいと思います。

『ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~』オム・ホンギル インタビュー (1)

『ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~』オム・ホンギル インタビュー (3)

『ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~』

『ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~』ポスター (2)

TRAILER

DATA
映画『ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~』は2016年7月30日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、シネマート新宿ほか全国で公開!

監督:イ・ソクフン
出演:ファン・ジョンミン、チョンウ、チョ・ソンハ、キム・イングォン、チョン・ユミ
配給:CJ Entertainment Japan
2015年/韓国/124分

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