『キム・ソンダル 大河を売った詐欺師たち』パク・デミン監督 単独インタビュー

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INTERVIEW

伝説の詐欺師キム・ソンダル率いる4人の詐欺師たちが、戦が絶えない朝鮮時代を舞台に国をも動かす巨悪に立ち向かう新しい時代劇エンタテインメント『キム・ソンダル 大河を売った詐欺師たち』のパク・デミン監督にインタビューを行った。

―前作から6年空いていますが、本作の着想が生まれたのはいつ頃ですか?
 『影の殺人』の後にいくつか脚本を書きましたが、いずれも製作途中で中断しました。本作の着想は3~4年前です。最初は私自身が企画したのではなくて、製作会社からシナリオを渡されて読みました。そのシナリオではキム・ソンダルという人物は登場したのですが、彼が主人公ではなくて、主人公の相手役として登場していました。私は、キム・ソンダルという人物に魅力があっておもしろいと感じたので、むしろキム・ソンダルを主人公にして撮った方がおもしろいのではないかと思い、シナリオを渡してくれた製作会社に提案して私が脚本を書きました。

―キム・ソンダルは日本ではあまり知られていないと思いますが、韓国ではどれくらい有名な方ですか?

 韓国の説話に出てくる人物で、韓国ではよく知られた人物です。大多数は、名前は知っていて、川を売ろうとした詐欺師であるということくらいは知っていると思います。説話を手に取って読んだ人は多くないかもしれませんが、詐欺師と言えばキム・ソンダルというほどです。例えば、現代で大きな詐欺事件が起きたら「現代版キム・ソンダル」と例えられるくらいに有名な詐欺師のアイコン的存在です。詐欺師でも悪党ではなくて、貴族階級の人を懲らしめるヒーロー的詐欺師です。

―ほかの作品ではなくて、キム・ソンダルを撮影しようと思った理由はなぜですか?
 途中で中断した作品は、シナリオに取り掛かった段階やアイテムを探している段階では興味があってシナリオを書き始めたのですが、書き進めていくときにクリアできない問題点が出てきました。最終的に問題点を克服できないと感じて中断するに至りました。書いているときにキム・ソンダルをもらったのではなくて、中断したあとで、次の作品を探している段階でシナリオを見せられました。

―キム・ソンダル役のユ・スンホさんは、説話に出てくるほど有名な詐欺師を演じるには若いと思ったのですが、あえて若いユ・スンホさんをキャスティングした理由はなぜですか?
 説話に出てくるキム・ソンダルは、きっと結婚しているだろうし、40代くらいのおじさんのイメージでちょっとふてぶてしく笑っているイメージです。映画化するにあたって、それを変えられないかと思い、若くて活気のある人物にしたいと思いました。詐欺をし始めてそんなに経たないけど、詐欺を楽しんでいる人物として描きたいと思いました。それに合う若い俳優を探していたのですが、ユ・スンホさんは演技力も素晴らしいし、ビジュアル的にも若さあふれる詐欺師としてちょうどいいと思い、お願いをしました。例えるなら、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のレオナルド・ディカプリオさんのような、未熟なところはあるけど、詐欺をするのを楽しんでいる人物を描こうと思いました。もともと説話のキム・ソンダルは、後ろで手を組んで、がに股でゆったりと歩く、昔ながらのおじさんのイメージを持っていますが、それをがらっと変えて、映画ではあちこちを走り回る活力のあるキム・ソンダルを描きました。

―キム・ソンダルのエピソードはたくさんあると思いますし、続編も作れると思いますが構想はありますか?
 説話のエピソードのみならず、おもしろいキャラクターたちが詐欺集団をなしているので新たなエピソードを作り出す余地はあると思います。日本でたくさんの観客のみなさんが愛してくだされば、その可能性もあるのではないかと思います。

―女装するシーンがありますが、ああいったエピソードは元の説話からあったものですか?
 説話の中のキム・ソンダルは40代のおじさんなので、女装するというのはないなと思います。鶏を鳳凰として売るのと川を売るもの以外はオリジナルのエピソードです。ただし、売り方は映画ならではの違った売り方で具現化しています。

―場面転換が多い作品ですが、撮影中の大変だったエピソードはありますか?
 変装などはキャストもスタッフも楽しんでできました。ただ撮影の場所がいろんなところを移動しながらでしかも撮影がない日も移動にほとんどの時間を費やさなければいけないので大変でした。あとは映画のクライマックスのシーンでは、画面で見ると涼やかに見えると思いますが、真夏に撮影をしていたので暑かったです。特に俳優の皆さんは大変だったと思います。韓国の伝統衣装は、見た目は色合いも涼しそうに見えますが、二重三重と何枚も重ねてきています。あと伝統的な帽子も、かぶるためにはかつらのようなものをかぶった上でぴっちりと縛りつけなければいけないので、すごく暑いです。だから俳優の皆さんは倒れそうなくらいに大変だったと思います。監督の私はそれほど大変ではなかったです。劇中で、毛皮を着て狩人のような服装で鳥を売りに行くシーンは6月ごろの撮影でしたが、暑い時期でした。当初はユ・スンホさんとコ・チャンソクさんに同じような毛皮の服を着てもらっていましたが、コ・チャンソクさんの衣装に「これも加えてみようか」とどんどん加えていって、おもしろくなっていきました。帽子や武器をどんどん持たせたので、撮影の際はつらかったと思います。

―シウミンさんが映画デビューですが、演技指導で特に伝えたことはありますか?
 最初にシナリオを渡して、演じる役柄について話した時には「とにかく詐欺団の中で、一番末っ子の愛らしい弟分であってほしい」とお願いをしました。シウミンさんをキャスティングするにあたっては、オーディションを経ていますが、その時にシウミンさんを見て愛らしい人だというイメージを受けたので、そのイメージを映画の画面でも表現してほしいというようにお話をしました。シウミンさんは演技のことよりも、本能的に自分がどうすれば愛らしく見えるかが分かっている人だと思います。私も劇中でどうすれば活かせるのか、活かせる瞬間をキャッチすることを心がけましたし、シウミンさんもそれをキャッチして演じていたと思います。

―キャストはみなキャリアが異なりますが撮影中はいかがでしたか?
 4人の中でも特にコ・チャンソクさんとラ・ミランさんは共演したこともあり仲良しでした。現場ではほかの俳優にも自分から話しかけてくれて、ラ・ミランさんも冗談を言うのが大好きで、おかげで現場を愉快な雰囲気にしてくださいました。コ・チャンソクさんとユ・スンホさんは共演したことがありすぐに打ち解けました。シウミンさんもすぐになじんでいましたが、それはラ・ミランさんの果たしてくれた役割が大きかったと思います。シウミンさんが初めての映画の現場で、浮いたりなじめないようなことがないように、冗談を言ったり、しきりに話しかけてくれました。4人は家族のように現場でも過ごしていました。

―最後に、本作のおすすめポイントをお願いします。
 私が考える本作の魅力はキャラクターだと思います。詐欺集団がみんな愉快で魅力満点の映画になっています。後半では追撃戦もあります。当時の鮮やかな衣装も楽しんでもらえると思いますので、劇場でご覧いただければと思います。

TRAILER

DATA
映画『キム・ソンダル 大河を売った詐欺師たち』は2017年1月20日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ新宿ほか全国で順次公開!
監督:パク・デミン
出演:ユ・スンホ、シウミン(EXO)、コ・チャンソク、ラ・ミラン
配給:CJ Entertainment Japan
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