『東京ウィンドオーケストラ』中西美帆・坂下雄一郎監督 単独インタビュー

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INTERVIEW

有名オーケストラと間違い、アマチュア楽団を屋久島に呼んでしまった・・・ひょんな勘違いから始まるハートウォーミングコメディ『東京ウィンドオーケストラ』で初主演となる女優・中西美帆と坂下雄一郎監督にインタビューを行った。

―今回の映画の着想に至るきっかけはなんですか?
坂下監督 まずこの話を頂いたときには物語の指定はなかったのですが、オーディションをするということで、ある程度の人数を使った話を、ということで結果的に演奏隊の話になりました。

―具体的な時期でいうと、いつごろにどういった段階があったのでしょうか。
坂下監督 話があったのは2014年の春か夏かくらいで、本当はその年のうちに撮影をするつもりでシナリオやスケジュールを考えていました。その後事情があり、撮影は翌年となりました。2015年の夏になるということで、それを目標にシナリオを書き、その年の春あたりにオーディションなど色々と動き始めました。

―撮影は屋久島オールロケで2週間ということですが。
坂下監督 まぁこれくらいの規模の映画ならこれくらいかな、という感じですね。
中西 今回の作品では、屋久島オールロケということもあり現場の雰囲気が合宿のような楽しい雰囲気で、本当にあっという間でした。

―思い出に残っている場所などありますか?
坂下監督 ホテルがよかったですね(笑)
中西 確かに(笑)劇中にも登場したホテルに宿泊したので、とてもいい所に泊まらせていただいたので!素敵なところでした。

―『東京ウィンドオーケストラ』は観終わった後、どこか胸がすっきりとした気分になるような作品に仕上がっていると思います。これは監督としても狙われているところでしょうか?
坂下監督 割と王道、複雑でなく、シンプルなものがいいと思いますし、みんなが観て楽しめる、そういう映画が好きなので、そういったものを目標として作りました。

―胸がすっとする一つの要素である、「変化」という点について主役を演じる中でどのように考えていらっしゃいますか?
中西 「変化」ということに関して言えば、冒頭と終盤で繰り返されるほぼ同じセリフについて、私はもともと台本を読んだ印象から終盤では明るい感じで言おうかと思っていたのですが、監督から「とにかく抑えて」と指示を受け、それだからこそ最後の演出が効くんだなあと完成した映画を見て感じました。映画全体で2日間のお話ですので、樋口詩織がそこまで大きく変わるわけでも成長するわけでもなく、それよりも日々のなかの可笑しみを描いている作品なのかなあと思っています。

―中西さんは初主演作品ということで、思いや感想があれば教えてください。
中西 この『東京ウィンドオーケストラ』のお話を頂いたころ、ちょうど役者として悩んでいた時期で、今振り返ってみると自分の中で樋口詩織というキャラクターに出会えたことは、役者としてターニングポイントになると考えています。最初は淡々としたというか、ぶっきらぼう、どこかふてぶてしいようなキャラクターをヒロインとして演じるということは、とても勇気がいるということでもあったのです。現場でも、プロデューサーさんが「役に入っているときの中西さん怖い」と仰っていたりして、気にしてもしかたないのですが見る側の印象も考えたりしてしまっていたのですが、振り返って完成した作品を見た時に、自分の普段のイメージと違う、かけ離れたキャラクターを演じることがこんなにも楽しいものなんだなと大きく実感しました。

―主演からの「ターニングポイントになった」という言葉、監督としてはどう感じてらっしゃいますか。
坂下監督 よかったですね。
中西 冷たい~(笑)
坂下監督 この間もこの話したので。

―楽団員はオーディションで選ばれた比較的歴の浅い俳優の方々ということですが、印象などいかがでしたか。
坂下監督 応募者全員会ってみようということで面接をした後、20人くらいが選ばれて、稽古場のようなところで4日間ほど、シナリオを元に役を回しながら演じてもらったりしました。なので、人となりというか、この人はこんな感じだなあという雰囲気は掴んでいました。最初シナリオを書いているときに、役をワークショップで決めてからその人に当て書きすると決めていたので、そこから想定しつつ書き直したという感じです。
中西 監督から「役場職員と楽団員は対立するんだから仲良くならないでください」と言われていたのですがオールロケでずっと一緒にいたら放っておいても仲良くなってしまって、そういう意味で楽しくやっていました。感銘を受けたエピソードとしては、自分の中で台詞を吐くのにちょっとだけもやっとしていたシーンがあって、作品を見たらなるほどと思ったのですが、そんな時に小市さんが「それはそれでいいんだよ、僕自身もこの台詞腑に落ちないなとか、どんな気持ちで言えば、ということがあるけれど、大丈夫だよ。坂下監督のこの脚本は本当いい本で、才能のある監督だから、信じて思い切って言えば、完成した作品を見たときに必ず繋がっているし、納得できると思うから、思い切って言ってみ。」と背中を押していただいたことがありました。

―他に撮影中のエピソードは何かありますか?
坂下監督 実景日という風景を撮影する日には、自然相手の撮影なので苦労しました。日が暮れそうになる中、ギリギリで必死でした。サルには苦労させられましたね。
中西 昔から坂の多いところに住んでいて、習慣がなかったので自転車に乗るのがとても苦手で、台本を読んだときに自転車を漕ぐシーンが2回ほどあったので「自転車乗れないんですけど大丈夫ですか?」と尋ねたら、監督は「ゆっくりなので大丈夫だと思います」と仰っていて、じゃあ大丈夫かと思って現場入りしてみると、監督から「中西さんここ全力で漕いでください」と言われて、「え?」と思いながらやるしかないと・・・。本編をよく見ていただくとわかるのですが、私左足の靴が脱げちゃっていて、そのまま本編に使われているんですが・・・。さらによく見ると、あのスピードなのに私ブレーキに手をかけていなくて、足で止めてしまっているんですよね。それで靴が脱げてしまったのです。

―劇中演奏される曲の選択にはどのような意図があるのでしょうか。
坂下監督 中学生の方々の演奏される曲は、元々練習されていた大会の課題曲のようなものをそのまま使わせていただきました。楽団の演奏する曲は、音楽家の方にいくつか候補を頂いた中からなるべくあまり聞いたことのないもの、さらにマーチの持っている雰囲気がいいなと思い選びました。

―今後の作品の予定はありますか?
坂下監督 2本撮影が終わっていて、どちらももうすぐ完成します。うち1本、『エキストランド』は今年公開予定です。
中西 私は映画が好きなので映画が多くなってしまいますが、2017年1月21日に『惑う After the rain』という作品が公開になります。

―これから映画をご覧になる皆さんにメッセージをお願いします。
坂下監督 他愛もない話なので、笑って観ていただければありがたいです。
中西 観終わった後に、温かい気持ちになれる作品だと思います。単純に、ただただ楽しく、難しいことを考えずに観られるのがこの作品の魅力だと思うので、是非幅広い世代の方に、一人でも多く見ていただければと思います。

【取材・文・写真/坂東樹】

TRAILER

DATA
映画『東京ウィンドオーケストラ』は2017年1月14日(土)より鹿児島ガーデンズシネマにて先行公開、1月21日(土)より新宿武蔵野館ほか全国で順次公開!
監督・脚本:坂下雄一郎
出演:中西美帆、小市慢太郎松木大輔、星野恵亮、遠藤隆太、及川莉乃、水野小論、嘉瀬興一郎、川瀬絵梨、近藤フク、松本行央、青柳信孝、武田祐一、稲葉年哉
配給:松竹ブロードキャスティング/アーク・フィルムズ
2016年/日本/75分
©松竹ブロードキャスティング

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