『スターシップ9』アテム・クライチェ監督 単独インタビュー

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INTERVIEW

近未来アクションドラマ映画『スターシップ9』でメガホンを取るアテム・クライチェ監督に単独インタビューを行った。

エレナはまだ見ぬ未知の星を目指して、一人恒星間飛行を続けていた。一緒に飛び立った両親は既にいない。近未来、過度の公害に汚染された地球には未来はなく、人類は新しい星への移住を必要としていた。ある日、スペースシップの給気系統が故障し、エレナは近隣のスペースシップに救援信号を送る。その呼びかけに応えて姿を現したのが、エンジニアの青年アレックスだった。一目見て、互いに恋に陥る二人。しかし、エレナはこの飛行に隠された秘密を知らなかった。それは、人類の未来を賭けた高度な実験だった。二人はなぜ出会ったのか―。

―本作が長編監督デビュー作ですが、非常に作りこまれた世界観に驚きました。
 SF映画は、スペインで製作されるほかの映画に比べて小中規模程度の予算しか獲得できません。だから、プリプロダクションに非常に時間をかけました。5週間半で撮影しましたが、チームの撮影現場もスペインとコロンビアだったので事前準備が大変でした。

―今回スペインのSF映画が日本で公開されるのは画期的なこと。スペインではSF映画はどれくらい作られていますか?
 日本での公開は非常に嬉しいです。日本で配給されることに私自身が一番驚きました。日本でスペインのSF映画が公開されるのは珍しいことだと思いますが、そもそもスペインでもSF映画はジャンルとしては多くはないので、スペインの人にとっても珍しいタイプの映画だと思います。スペインでは、ジャンルとして多いのはスリラーが多いです。本作は、スペインで公開される2か月前ごろからハリウッドに注目されていて、“小作品だけどおもしろいSFが出来たらしい”ということでLAのエージェントから連絡を受けました。スペインで公開されてからもSFというジャンルに慣れていないということで、親しんでもらうための作業が必要だと感じました。

―本作はドラマの要素が強いですよね。監督自身はどういったジャンルに当てはまると思いますか?
 アメリカでは“現実に即したSF”という位置づけにされる映画だと思います。SFのように始まりますが、その中で一番描かれるのは登場人物であるエレナがどうやって現実に解決していくかです。孤独に生きている二人の心理的な葛藤や問題を現実に即して解決していくかが中心になっています。SF的な流れではありますが、中心にあるのは二人がお互いの問題を解決していく事だと思います。

―衝撃的な展開といっても過言ではありません。このような展開を選んだ理由は?
 映画をスタートするときには観客の視点がエレナの視点と同じであったほうがいいと思いました。だから観客が持っている情報は、その時エレナが持っているものと同じところからスタートします。その後、展開が始まり、そこが“現実に即した”展開になる。現実はこうだったというところで新たに展開するのは面白くなると思いました。

―現実的にあり得るリアリティが描かれています。物語のアイデアはどこから来ましたか?
 劇中で起こったことが現実に起こっても全くおかしくないというところは、この映画の重要なことのひとつです。NASAでも生命体が存在しうる星が7つあると発表していました。ということは、こういった実験が始まっていてもおかしくはない。しかし、そういった技術が今はないということです。ただし、将来的に地球が危なくなっていって新しい星を探さなければいけなくなった時に、劇中と同じような実験が始まると思うんです。この映画では人間同士の葛藤や二人の愛がテーマにありますが、将来的にこういった実験が必要になったとき人間を使った実験段階があると思う。どこまで人間を使っていいのか、どこまでが許されるのかがこの映画の先のテーマとしてあります。人間が新しい薬を開発した時も臨床実験という段階はあるので、宇宙開発においてもそういった段階は必ず出てくると思います。それが今であってもおかしくはありません。しかし、どこまで許されるのかが私の映画の問いかけにもある。今回初めて東京に来て、4日間滞在していますが、東京は高層ビルが多くまさに近未来にふさわしい街で、この映画のようなことが起こってもおかしくないなと思います。しかし、なぜこの映画の撮影の舞台にコロンビアのメデジンと言う街を選んだのかと言うと、近代的な高層ビル街もありますが、対極にある貧しい地区もある。近未来は両極化する世界になると思う。混沌とした部分をどこかに入れたいと思いました。

―コロンビアで撮影するということはもともと考えていたことですか?
 最初から考えていました。メデジンの光景は、おそらく日本人から見ても違和感を覚える、珍しい部分があると思う。スペイン人にとっても異様な感じを受けるところがあるので、それを入れたかったので、最初の段階からメデジンで撮影することを考えていました。撮影の75~80%がコロンビアで、残りがスペインです。制作は10人ほどスペイン人ですが、残りの150人くらいはコロンビア人のスタッフが多かったです。

―エレナ役のクララ・ラゴさん、キャラクターに合っている素敵な印象を受ける方ですが、キャスティングの経緯を教えていただけますか?
 クララさんは、私がほかの脚本を書いたときに出演していた女優さんで、『ヒドゥン・フェイス』(2011)という作品にも出演していました。この世代ではスペインの女優ではNo.1 だと思っています。彼女がこの役について、“今までやった中で一番つかみどころのない役だ”と言っていた。まさにその通りで、役柄の設定では人間と接触してこなかった、友達もいない一人で育ってきたと描かれていました。役作りも難しかったと思う。しかし、彼女は勘のいい役者だと思っていて、つかみどころのない役でも直感を頼りに作り上げていった。それと肉体的にも対応出来るフィジカルも持っていました。

アテム・クライチェ監督

TRAILER

DATA
映画『スターシップ9』は2017年8月5日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で順次公開!
監督・脚本:アテム・クライチェ
出演:クララ・ラゴ、アレックス・ゴンザレス、ベレン・エルダ、アンドレス・パラ
配給:熱帯美術館
© 2016 Mono Films, S.L./ Cactus Flower, S.L. / Movistar +/ Órbita 9 Films, A.I.E.

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