『台風家族』尾野真千子 インタビュー

INTERVIEW

映画『台風家族』で草彅剛演じる鈴木小鉄の妻・美代子を演じた尾野真千子にインタビューを行った。

―ストーリーを聞くと変わった家族という印象を受けたのですが、見てみるとありがちなで共感する部分が多くありました。お話を受けたときはどのような印象でしたか?
尾野 ありがちと言えばありがちな話が、途中からありがちの中にありがちではないものが入ってくるという世界観がおもしろいなと思いました。なんとなくですが、おもしろくなりそうだなと思いました。

―個性豊かなキャラクターばかりです。現場の雰囲気はいかがでしたか?
尾野 現場の雰囲気はとてもよかったです。ただ暑かったです。大変な思いといえばそこですね。暑かったです。みんな熱中症ぎりぎりでやっていたんじゃないかなというくらいでした。クーラーもないですし。カットがかかったときにすぐにつける扇風機のありがたさを感じました。たまに差し入れで飲み物やアイスクリームを持ってきてくださったり、そういう幸せがありました。

―劇中の通りの現場だったということですか?
尾野 持ち主の方が使わずに、取り壊しになってしまう一軒家で、最後に私たちに好きに使っていいと言ってくださいました。

―それはリアリティが出ますよね。
尾野 リアリティがありましたね。やりやすいし、住んでいた人の匂いが残っているというか、作られたものではないところで撮影するというのは、受け継ぎたいという感覚がありました。

―その家でおもしろいストーリーが展開されます。娘役の甲田まひるさんは初めての演技ということです。
尾野 彼女は楽しんでやっていました。彼女はもともとジャズピアノを弾く方だったので、繊細。監督の注文を一字一句聞き逃さず一生懸命に、自分が今までにやってきたこととは全然違うことを乗り越えていましたね。一生懸命でした。

―それに対して夫役の草彅剛さんはなかなかクセのある役柄でした。尾野さんの役柄との対比がおもしろかったですが、共演はいかがでしたか?
尾野 2人だけでの芝居はあまりなかったです。みなさんがいる中で旦那さんがいてということが多かったので、家族に混ざるってこういうことなのかなと思いました。お嫁に行って家族に混ざる、入るに入れなかったり、ここは口出しちゃいけないとかを体験している感じでした。兄弟はセリフが多いんですけど、私はあまりセリフがないので、それを見ていてたまにちょこっと言うだけなので、お嫁に行った感じがありました。

―そうめんの絶妙なタイミングが本当に難しそうでした。
尾野 タイミングは監督に言われました。みなさんの言葉を聞き逃さず、「今だ!」と思ってやっていました。聞いていないとできないですね。自分もいるんだということも感じて頂きたかったので一生懸命アピールしながらやっていました。

―カメラが回っていないところではどのような雰囲気でしたか?
尾野 みんな個々にしゃべっていました。体調のこととか。みなさんそんなに歳が離れてないので。最近腰がとか、アレルギーとか。「こういう器具があるからいいわよ」、「じゃ私買ってみる」とか。草彅さんからも「この飲み物いいよ」って言われて、「どこに売ってるんですか?」「○○に売ってるよ!」みたいな会話をしたり、みんなで共有しながらいろんな人の話を聞いていました。

―楽しそうですね。
尾野 そうですね(笑)そこに彼女(甲田)が加わって、みんなのアイドルみたいに、初孫のようにかわいがられて。撮影終わってからも釣りに行ったり、たまにご飯に行ったり、楽しんでいました。

―タイミングのお話以外で市井監督からの演出はありましたか?
尾野 監督は「ここはこういうシーンなのでこういう気持ちでやってほしい」と丁寧に一人ずつお話をされる方だったので、一人、一人キャラを作りやすかったです。監督の中で思い描いている、「この人はこういう人だと思います」という中で皆さん自分なりの芝居をやっていました。細かいことは忘れましたけど、注文が多かったのは覚えています(笑)

―尾野さんご自身はどう演じようと思ったことはありましたか?
尾野 三歩後ろを歩き、旦那よりも先に行かない。草彅さんを見て芝居をしていました。自分の中で何かを考えていたとかではなく、草彅さんありきでお芝居をしていました。

―それがすごく出ていますよね。草彅さんがあれだけ自由に動いているように見える裏でそういった演技が効いていますね。
尾野 常にセリフをしゃべると草彅さんを見る。「うちの旦那がこんなことを言っているから私も賛同しなきゃ」みたいな思いでいました。

―完成した映画をご覧になって、気に入ったシーンはありましたか?
尾野 全部気になりますけど、やっぱり家族というか兄弟のやり取りは見ものでしたね。楽しかったです。

―演じていて難しかったことはありますか?
尾野 本当にしゃべらないから、いつしゃべるというのが難しかったです。自由に芝居をやりつつ、そう見せつつ、すごい話を聞いている。勝手なことをしない(笑)私がやっちゃうと、こっちに目がいってもダメだし、難しいですね。控え目って難しいんだなと思いました。

―あるあるなお話が多いと思いました。尾野さんが共感する部分はありましたか?
尾野 あのようにもめたりすることはないです。自分の旦那さんが一番だと思っているところは母と父を見ているみたいだし、父あってこその家族という気持ちは共感できます。

―若い子が見てもおもしろいと思うし、ある程度経つと心にグッとくるものがありますよね。すごい泣きました。
尾野 うれしいですね!気持ちが動くのが素敵です。

―コメディ要素が多かったと思うのですが、撮影中は手ごたえはありましたか?
尾野 笑いが起こるかなと思ったシーンは何度もありました。必死にやっていましたけど、おもしろいなと思う部分がありました。MEGUMIちゃん(演じる麗奈)の彼氏(佐藤登志雄/若葉竜也)なんて笑いの要素たっぷりですもんね。でも本人は結構緊張していました。「こんなことしなきゃいけない」って。私がそうめんを食べるのも、ここでズルッて音を立てて食べなきゃいけないと思うと、ここは笑いのポイントなんだろうなと思いつつも、こっちは食べるタイミングがありますから必死ですよね。でもそうやって必死にやったことが笑いに包まれたりするとうれしいですね。笑ったり泣いたりしてくださるとやったかいがあります。

―尾野さんが感じる本作のおすすめのポイントを教えてください。
尾野 “家族”。それに尽きますね。『台風家族』というだけあって、本当に台風のような家族でしたから。それぞれの絆とか思いもあります。意外と笑える中で伝えているものがたくさんある家族です。

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STORY
本作は、市井昌秀監督が構想から12年間あたためてきた“両親への想い”を形にしたオリジナルストーリー。鈴木家のきょうだいは10年ぶりに実家へ戻ってきた。銀行強盗を企て2000万円の大金と共に忽然と姿を消してしまった両親の“見せかけ”の葬儀を行うために。そこには〈怒り〉〈愛情〉〈嫉妬〉〈後悔〉〈許し〉・・・誰もが共感するさまざまな感情が紡がれている。世界一“クズ”な一家だけれど何故か憎めない、そんな愛すべき鈴木家の“台風”のようなめまぐるしい夏の一日は、果たしてどんな結末を迎えるのか。ブラックユーモアあふれる物語に隠された家族ひとりひとりの想いを知ったとき、思いがけない大きな“感動”が押し寄せてくる―?家族って何だろう──これは普遍的な“家族”の物語。


TRAILER

DATA
映画『台風家族』は2019年9月6日(金)より26日(木)まで全国で3週間限定公開!
監督:市井昌秀
出演:草彅剛、MEGUMI、中村倫也、尾野真千子、若葉竜也/甲田まひる、長内映里香、相島一之、斉藤暁/榊原るみ・藤竜也
配給:キノフィルムズ/木下グループ
©2019「台風家族」フィルムパートナーズ

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