『その瞬間、僕は泣きたくなった-CINEMA FIGHTERS project-』今市隆二、松永大司監督 インタビュー

  • HOME »
  • インタビュー »
  • 『その瞬間、僕は泣きたくなった-CINEMA FIGHTERS project-』今市隆二、松永大司監督 インタビュー

INTERVIEW

詩と音楽、映像を一つに融合したプロジェクト第3弾となる映画『その瞬間、僕は泣きたくなった-CINEMA FIGHTERS project-』の『On The Way』で主演を務める今市隆二(三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE)と松永大司監督にインタビューを行った。

―まず楽曲が先に作られたと思うのですが、監督はどの時点から参加していらっしゃるのですか?
松永監督 初めに今市と一緒に撮るということが決まって、そこから作詞家の小竹正人さんとお話をしました。今回、僕がアメリカに留学していたこともあったので海外で撮りたいという気持ちを伝えて、どんな映画を撮るかのお話をしていた時に、最初は黒人の男の子と隆二との交流を撮りたいなと思ったんです。最後に教会かどこかでコミュニケーションを取れたら・・・というようなことをざっくりと言って、それで小竹さんに書いていただいたのが「Church by the sea」です。結局、全然違うメキシコの移民センターで撮ったんですけど、もともとお話したテーマは近いものがありました。

―劇中にも教会が出てきますが、楽曲とリンクしていますよね。
松永監督 そうですね。レクイエムになったらいいなという気持ちがありました。

―ロケは何日間くらいでしたか?
松永監督 僕はみんなが来る1か月前からメキシコにいて、全体では10日くらいですね。撮影は4日です。

『On The Way』

―本格的な演技は初挑戦ですが、それがメキシコでのロケで大変だったと思います。クランクイン前に準備したことはありますか?
今市 今回が初めての演技で、しかも松永監督と一緒にできるということで、自分の中では何にでも準備をして臨むタイプなので、演技レッスンをしていきたいというかしなきゃいけないと思いました。それを松永監督に相談させていただいたら、「絶対にしないでくれ」と言われました。監督を信じて、そのまま演技レッスンも一切せずにメキシコに行きました。監督とはクランクイン前に2回食事をさせていただいて、その中でプライベートから仕事の話までいろいろな話をしていただきました。その時に、「アーティストとしての今市隆二を撮るのではなくて人間としての隆二を撮りたい」とおっしゃっていただきました。監督が本当にフランクな方で、話せる部分を作ってくださいましたし、映画に対する思いも話してくださったので、近づきやすかったというか、その2回で信頼関係は徐々に出来上がりました。クランクインの前夜には、監督と(ダニエル役の)パコとセリフ確認して、そこでも監督が映画への思いや愛を伝えてくれたのでその時には監督についていこうと決めていました。

―「アーティストとしての今市隆二ではなく人間としての隆二を撮りたい」ということですが、それはどのように実現しましたか?
松永監督 今市隆二という名前があって、そこには歌い手としてステージに立つという日常で隆二が日々やっていることを取り外すことが僕にとっての大きな仕事だと思いました。僕とご飯を食べるときと、ライブをしているときでは当然スイッチが変わっているわけです。それは本来、アーティスト・今市隆二としては必要なことですが、この映画で一人の健太という男を演じるにあたってははぎ取ってほしいと思ったんです。ただそれは簡単なことではないです。普段の隆二のアーティストとしての立ち振る舞いは身体に身についているもので、それはすごいことなんです。マイケル・ジャクソンはいつでもマイケル・ジャクソンであるように、その裏の顔は分からないけど人の前に出るときは意識しているから自然とスイッチが切り替わる。メキシコに入ってから数日間でそれを外してもらうというのは本当に大変で、それもあり撮影での最初のカットはものすごく撮ったんです。

―20テイク撮ったとお聞きしました。
松永監督 あれ、実は30テイク撮ったんですよ(笑)
今市 30ですか!?
松永監督 いろんな記事に“20テイク”って出ていたけど、27テイクなんだよね(笑)それくらいやったので、スタッフもパコも隆二もよくついてきてくれたなと思いました。でも、それをやらなかったら進まなかったなと思いました。わざとやりたかったわけではないけど、テイクを重ねるごとに隆二の中で戸惑い、永遠の時間に感じられたと思うけど、あれで隆二が健太に移行することができたと思います。あとなるべく現場で隆二を三代目 J SOUL BROTHERSに戻さないように気をつけました。スチールカメラマンにも撮るときにポーズを作らせないでくれって言っていました。それは身についているので。そういうことをしたことが今回の大きな演出だったと思います。

―23分間で健太の人間性の動きが捉えられているので、その最初のテイクのおかげというのが大きいですよね。
松永監督 そうですね、でも最終的にはカメラの前に立つ人間が覚悟を決めてやるしかないことです。そこは隆二に感謝をしています。信じてくれていた。そこにちょっとでも疑問があると無理です。だから絶対いいものを撮ろうと思ったし、最終的に完成した作品は“いい作品だな”と思いました(笑)主人公はダメなやつですけど、最終的に吐露できる。そこにいくまでが撮れたのがよかったです。

―健太の顔になっていきますよね。
松永監督 あまり心を開かないというのがリンクしていきましたね。よくぞがんばってくれたなと。もう一回やれって言われたら嫌だよね?
今市 嫌ですね(笑)やれって言われたらやりますけど、“まじか・・・”ってちょっと考えますね(笑)
松永監督 別の作品では一緒にやりたいですけど、撮影素材が全部無くなって、もう一回一から撮ってくれって言われたら無理だよね(笑)それくらい、あの時あの瞬間しか撮れない。今市隆二のドキュメンタリーですね。

―27回撮って心が折れたと。どのようなモチベーションで続けられましたか?
今市 もちろん27テイクも撮るとは思っていないし、初めてなのでうまくいくとも思っていないし。でもまさか27テイクも(笑)監督が言っていることは理解してやっているんですけど、全然OKが出ないんです。どうしていいか分からなくなってくる、でもやるしかない。永遠の時間じゃないけど、どうしたらいいんだろうっていうのがずっと続きました。それも「はい、OK!」という感じでの終わりじゃないんです。限られた時間の中でやらなければいけないことがあって。それが自分の中で悔しくて、でもそれは自分のせいだし。唖然というか空っぽになって、“まだ最初のテイクなのに・・・”という思いにはなりました。
松永監督 それが健太の疑似体験ですよね。たぶん健太の中には何もないんです。仕事をしたいけど辞めちゃった。彼しか持っていない孤独感や絶望感を持っていて、それを隆二があの27テイクで健太と同化したと思うんです。だから絶対必要でした。撮影本番にならないとできないことってあるんです。その時に隆二なのか健太なのか分からなくなる。でも、それは後からしか分からないことです。あの最初の撮影の後に、トボトボと歩きながら次の現場に向かう中、「いやーっ」って言葉少なに隆二がつぶやいていた。あの瞬間、隆二本人が責任とか絶望とかいろんなものを一番抱えていたと思います。それが最終的に映画を作ったと思います。本当にがんばってくれました。
今市 絶望・・・。たしかに近いかもしれないです。自分のせいだし、人ともしゃべりたくないし、結構初めて味わったというか。アーティストとしてデビューしてから来年で10年になるんですけど、なかなかそれくらいやらせていただいている中で、怒られることがあまりない中「地に足つけろ!」とか「かっこつけるな!」とか監督に言われ、ショックに近い感じもありました。
松永監督 普段のアーティストとしての今市隆二が本当にすごいし惚れ惚れするけど、僕が隆二に見ている別の魅力があることも感じました。ないものは撮れないけど絶対にあるから、そこが出てくれれば絶対にこの作品はよくなると思いました。簡単ではないですけど、メキシコの嘘がない土地で撮影していますから。今市隆二の本当の人間としてのパワーが出てこないとクライマックスを迎えられないと思いました。

『On The Way』

―本作ではほとんどBGMがないですよね。
松永監督 鳥のさえずりや音だけでメキシコを感じるので、それで十分でした。一度だけ音楽を使っていますが、あとは最後の歌だけです。いい素材には、余計なことはやらなければやらないほうがいいと思いました。

―銃を突きつけられるシーンの緊迫感がものすごかったです。あの時の今市さんの表情が忘れられません。
松永監督 あの時は隆二に任せていました。もう健太だし、パコもできているので余計なことはほとんど言っていないです。隆二がそこに生きていましたからね。

-23分間であの成長が納得いける作りになっているのはすごいことですよね。
松永監督 説明しすぎないように、ギリギリのところにしています。2回目観た、1回目とはまた別の発見もあると思います。

STORY
EXILE HIRO、SSFF & ASIA 代表の別所哲也、作詞家・小竹正人の3人によって打ち出された本プロジェクト。2017年の第一弾、2018年の第二弾に続く第三弾は、三池崇史、行定勲、松永大司、洞内広樹、井上博貴が監督として参加。三池監督の『Beautiful』にはEXILE AKIRA、行定監督の『海風』には小林直己(EXILE/三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE)、松永監督の『On The Way』には今市隆二(三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE)、洞内監督の『GHOSTING』には佐野玲於(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、井上監督の『魔女に焦がれて』には佐藤大樹(EXILE/FANTASTICS from EXILE TRIBE)が出演。そして第三弾の主題歌には、Crystal Kay、Leola、RYUJI IMAICHI、LISA、琉衣による5つの楽曲を起用。


TRAILER

DATA
映画『その瞬間、僕は泣きたくなった-CINEMA FIGHTERS project-』は全国で公開中!
配給:LDH PICTURES
©2019 CINEMA FIGHTERS project

PAGETOP
© CINEMA Life!