『サヨナラまでの30分』萩原健太郎監督 インタビュー

INTERVIEW

たった30分間、君は彼女に会うため僕になる―『サヨナラまでの30分』でメガホンをとる萩原健太郎監督にインタビューを行った。

長編2作目ですが、前監督作品の『東京喰種 トーキョーグール』とは全く違う作品です。監督をすることになった経緯を教えていただけますか?

監督 『東京喰種 トーキョーグール』が公開されたころにプロデューサーから話があって、「こういう内容の企画があってお願いしたい」と言われましたた。「本格的な長編映画は『東京喰種 トーキョーグール』しか撮ってないですが大丈夫ですか?」って言ったんですけど(笑)僕が前に撮った短編作品を見て、好きでいていただけたということでした。「ショートショートフィルムフェスティバル」で、日本人監督と日本人俳優で撮る作品と、韓国人監督と韓国人俳優で撮るというような作品2本を撮って、僕はその時『スーパースター』という作品を撮って、それを気に入っていただいたようです。

本作は萩原監督の短編映画『Snowman』とも似ているところがあるかと思ったんですけど、どういったところを意識されましたか?

監督 僕の中では『東京喰種 トーキョーグール』が異色だと思っています。あの後はそういう映画のオファーばかりきて戸惑いました(笑)

今回はオリジナル脚本です。難しく感じることはありましたか?

監督 難しい部分もありましたが楽しかったです。オリジナルだとどうにでもできるじゃないですか。僕が参加した時点で企画がすでにあったので、
そこにやりたいことをどう落とし込んでいくか考えました。
自分で脚本を書くこともあるので、他の人が書いたものに自分のアイデアを組み込んでいく作業は楽しかったです。
あとはキャラクターを自由に作れるので、キャスティングが決まってから当て書きをしてキャラクターを膨らましていきました。

先にキャストが決まっていたということですか?

監督 平行して決まりました。脚本が最終的には36稿までいったのですが、その途中でキャストが決まったので、そこで脚本を直していこうということになりました。

新田真剣佑さんは本作で歌声を披露しています。その新田さんに歌を任せようと思ったのはいつ頃ですか?

監督 プロデューサーがどこかで新田さんがボイトレをしている映像を事務所の方に見せてもらったということで、アキ役は新田さんでいきたいと思いました。

歌えることが前提で決まったということですね。

監督 そうです。劇中で北村さんはピアノをひいて、新田さんはギターを弾きますが、実は北村さんがギターを弾いて、新田さんがピアノを弾くといったような逆のことはもともと2人はできるんです。

それ以外に2人に求めたことはありましたか?

監督 新田さんと話したのは、アイドルじゃなくアーティストでいてくれとお話をしました。自分がどう見られているかを気にしないで欲しいとお願いしました。自分がどうみられているかではなくて、どうしたいか。それはレコーディングのときに話をしました。北村さんとはどうしたら颯太に見えるかという話をしていました。どうしてもかっこ良く見えてしまい、そうすると颯太に見えないので。

新田さんは、撮影中“(死んでいる役なので)自分が周りに見えていないようで寂しかった”とおっしゃっていましたが撮影はいかがでしたか?

監督 新田さん演じるアキの場合は、特に撮り方を考えました。引きの画だと存在しないとか、前半では颯太の肩越しでのアキはあるけど逆はないなど、いかに彼の存在をなくすかというルールを考えました。あと風が吹くと髪が揺れてしまうのでCG作業の工程で揺れている髪は全て止めました。影も全部消したので大変でした。

映り方もそうですがカメラワークもこだわっていらっしゃいますよね。

監督 めちゃくちゃこだわりました。何かアイデアを入れたいなと思って、それがギミック的なものではなく、シーンに意味があるようにするにはどうすればいいかと考え、豊かな画にしたいと思いました。

劇中の楽曲については、撮影よりも先にレコーディングを行ったと聞きました。撮影に入ってお芝居を実際にする前に録るには、そうとう気持ちを込めないと難しい曲もありますよね。

監督 そうです、レコーディングしたものを現場で流しながら撮影をしました。とても難しいと思います。歌詞があがったのも結構ギリギリだったりして、レコーディングの前日まで歌詞を直したりもしていたものもあったので二人は大変だったと思います。すごいですよね、撮る前にあの気持ちで歌えるのは。

音楽シーンの撮影は時間がかかりましたか?

監督 ライブハウスのシーンは2日間、フェスシーンは3日間で撮りました。

新田さんと北村さんとの撮影はいかがでしたか?

監督 2人ともストイックなので、妥協しないです。例えば新田さんは、すぐにOKを出さずにいると来てくれて「もう一回ね!」と自分から言ってやってくれたりとか。どうしたらいいものになるかを常に考えてくれる2人です。泣き言は言わない。相手がよくなるともう1人もよくなるという良い相乗効果はありました。

カセットテープが重要なアイテムとして登場します。このアイデアはどこから来たのですか?

監督 僕が企画に入る前に脚本家とプロデューサーが、音楽映画をやりたいと企画の話をしていて、その時にたまたまソニーの方から「カセットテープは上書きしても前の音が残っている」というのを聞いていて、それをもとにして作ったということです。

楽曲が印象的な作品です。androp内澤崇仁さんが音楽プロデューサーとして参加していますが、楽曲については?

監督 色々なアーティストさんが参加してくださり、それぞれがうまくバランスをとってくれています。あまり尖りすぎても受け入れづらくなってしまうし、ポップすぎてもつまらないし、ポップであってもセンスを感じる方々にお願いをしました。

いい楽曲が揃っていますね。

監督 (新田さんと北村さん)2人が歌うことでよくなる、ちゃんと2人の曲に聞こえるのがすごいことですよね。デモの段階でそれぞれのアーティストご自身が歌ってくださっているので、それはそれでかっこいいんですけど、2人が歌うともっとよくなる。それを計算して作ってくださっていると思います。

いろいろな方が作って2人が歌うというのはなかなかないですよね。

監督 ないですよね。新しい試みで、チャレンジングな試みでもありますね。

いろんなバンドに楽曲提供してもらうのは初めから決めていたことですか?

監督 そうです、それは当初から決めていました。

MVを撮ることも多い監督にとって、映画にとっての音楽ってどういうものだと思いますか?

監督 音楽も演出の一部ではあるので、映像と同じくらい大事なものだと思います。音楽が違うだけで映像の印象も変わりますよね。映画はほぼ視覚と言われているけれど、音楽は映像よりも無意識に人に訴えかけられるものだと思っています。そこに嘘はつかないようにするというのは気にしていました。例えば悲しいシーンですごく悲しい曲を流すと観客の感情を操作しているのでそれはやっちゃいけないと思いました。

最後に、この映画の見どころを教えてください。

監督 音楽ですね。演奏シーンです。演奏している彼らは魅力的だし、この映画でしか見られないところです。ワンシーンワンシーンに意味を持たせて撮ったので、撮り方を含めて考えながら見ていただけると、より楽しめるんじゃないかと思います。

【写真・文/編集部】

STORY
ある日、颯太が拾ったカセットテープ。それが再生されるたった30分間だけ、颯太の体の中身は死んだはずのアキになる。出会うはずのない2人を繋いだカセットテープはアキが遺したものだった。颯太の体を借りて、アキは恋人やバンド仲間に会いに行く。それは颯太と彼女との出会いでもあった―。アキと颯太の歌が彼女に届くとき、3人の世界が大きく変わり始める。限りある今を駆けぬける、青春音楽ラブストーリー。演技力と人気を兼ね備え、これからの時代を確実に担う注目俳優の新田真剣佑と北村匠海がW主演を務める。


TRAILER

DATA
映画『サヨナラまでの30分』は2020年1月24日(金)より全国で公開!
監督:萩原健太郎
出演:新田真剣佑、北村匠海、久保田紗友、葉山奨之、上杉柊平、清原翔、牧瀬里穂、筒井道隆/松重豊
配給:アスミック・エース
©2020『サヨナラまでの30分』製作委員会

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