『種まく旅人~華蓮のかがやき~』平岡祐太 インタビュー

INTERVIEW

『種まく旅人~華蓮のかがやき~』で実家のれんこん畑の後継ぎ問題に直面する銀行マン・山田良一役を演じた平岡祐太にインタビューを行った。

作品の印象はいかがでしたか?

平岡 地域に根付いた作品だなという印象でした。以前出演させて頂いた、映画『人生、いろどり』でも地域でお刺身のつまものを販売しているおばあちゃんたちのお話だったので、次はレンコンだ!という印象でした(笑)

脚本を読んでから役へのアプローチや準備をしたことはありますか?

平岡 僕の準備のやり方は何回もカフェに行って読み込むんですけど、今回は準備の時間に余裕があって、何回も繰り返し読むという作業がたくさんできたので、そこからこの作品をどのように演じていこうかと考えました。例えば(共演者の)大久保(麻梨子)さん演じる彼女に対しては言い合いのようなセリフであっても言い合うのではなくて、良一という人は相手のテンションに乗っからず喋ろうとか。あとは地域のただの農業映画のようにはしたくなかったです。ヒューマンドラマみたいなものを取り入れたくて、池井戸潤さんの『空飛ぶタイヤ』を見ながらその町工場の雰囲気みたいなものを取り入れたいなと思い、研究をさせてもらって、僕が(演じる良一には)銀行員としても顔があるのでそこでは、お仕事ドラマに見えるようなたたずまいでいれたらいいなというのは台本を読んでいくうちに思ったことですね。最初に畑に入るシーンがあるのですが、そこでようやく笑えたらいいかなとか。空の綺麗な自然を感じて、風を感じて、土の匂いを感じて初めて笑えるというか、そういうキャラクター作りにしたいなと思って最初はやってましたね。

演じる良一とご自身の共通点はありましたか?あるとしたらどのようなところですか?

平岡 祖父が農業をやっていてお米を作っていたので、そういう意味では農家というのはそんなに遠く感じなかったなというところでは良一と似たような感覚は得ているのかもしれませんね。あとは、女性との距離感は良一とは近いかもしれないですね(笑)あんまりぶつかり合いたくもないですし、近いかもしれないですね。

男性との距離感は同じでしたか?

平岡 良一のほうが僕よりフランクな人かもしれないなと思います。同級生とみんなでワイワイするシーンも普段の僕のほうが遠慮していると思います(笑)自分との共通点は普段あまり考えないですね。作品から得られるものに共感できるかどうか、そっちのほうが映画に出演するにあたって大切かなと思っています。全然理解できないものに出演すると何かわからず終わってしまいそうなので・・・。

今回の大自然の中での撮影で印象に残ったことはありますか?

平岡 匂いって(映像だと)伝わらないものだと思うのですが、実際の畑は泥で匂いが結構きついんです。自然の力を借りるというのが正しいのかもしれないのですが、お芝居をせずとも、例えば勝手に泥の中は歩きづらいですし、お芝居で歩きづらくする必要もないし、自然にそのまま乗っかるしかない、というようなことは多かったですね。

役者さんもスタッフさんも歩くこともままならなかったですか?

平岡 スタッフさんが泥の中でこけたりすると周りみんな喜ぶっていう(笑)そういうのはなんかみんな気持ちが子どもになって、童心にかえっていました(笑)泥で遊んだ記憶がある世代なので(笑)頭で考えずとも自然が教えてくれるようなところはありましたね。

今回の撮影で挑戦だと感じたことはありますか?

平岡 まずレンコンが泥の中にあることも知らなかったので、そこから掘り出して大きい消防士が使っていそうなホースでレンコンをどんどん洗っていく、地味なその作業が経験したことがなくて楽しかったですね。

ホースは重かったですか?

平岡 重いですね。たまに農家の方がやっていたのはそれをそのまま泥にさして、天気がいい日に上にやると虹が見える(笑)そういうことをやってましたね。

共演した栗山さんと大久保さんはどのような印象でしたか?

平岡 栗山さんとは20代前半の頃に最初に共演してから4度目くらいなのですごく気心が知れた仲で、なぜか一緒になることが多いですね。大久保さんもすごく前に共演していて、なのでみんな知り合いでした(笑)だからお互いがどういうお芝居をするのかも大体想像がつくのですごく安心してやってましたね。

栗山さんとのレンコンの花が咲く明け方のシーンはとても綺麗でしたね。

平岡 実はそのシーンは編集で僕の寄りがなくなっていたという・・・(笑)のちのち聞いてみたらたたずまいを見せたかった。自然の中に良一という人がポツっといる姿を見せたかったということでした。

好きなシーンはありますか?

平岡 僕が畑で寝ているシーンで「りーん!」って言った瞬間にカエルがケロケロっていうんですけど、そこがカエルと共鳴している感じがすごく笑えるなって。製作側の遊び心を感じました。

映画が大阪編金沢編というような感じでしたね。

平岡 都会に住む感覚と田舎の感覚は一緒というのはないなって思いましたね。大久保さん演じる役は今っぽい人の象徴。そういうのも出ていてよかったなと思いました。

今回レンコンの映画ですが、平岡さんのおすすめレンコン料理などはありますか?

平岡 レンコンが嫌になるくらいレンコンをとって、レンコンばかり出てきていたんですよ(笑)お弁当もほぼ毎回レンコンが入っていて。(採ったレンコンを)その場で食べさせてもらったりもしました。個人的には自粛期間中にレンコンのきんぴらをスーパーで買ってきてそれを細かく切ってご飯に混ぜて食べるんですよ、おいしいです。

撮影が終わってからもレンコンを食べていたのですか?

平岡 撮影終わってからちょっと間を空けました(笑)ありがたいことに、現地の方もレンコン映画をやっていると言うと、うちのレンコンおいしいんだよってレンコンばっかり集まってきて(笑)みんな優しいんですけどね。

他の農家の方々も関わっていたのですか?

平岡 そうですね、撮影しているときにあんまり知らないことも多かったのですが、撮影終わりに映画に関わってくださった現地の方みんなで親睦会みたいなのをやった時には100人くらいいたのでこんなに人がいたんだって思いました(笑)

今回の撮影を通じて日本の農業について感じるところや印象が変わったところはありますか?

平岡 僕が以前出演した『人生、いろどり』という作品の頃よりは農業が農業女子と呼ばれるようになったり、農作業服が若い人向けのデザインになったり、この数年で変わってきたんじゃないかなと思いますね。若者の人が入りやすい環境というのは国や農業に関わる方たちが新しく取り組んでいることなのかなとは思います。あとハイテク農業とか楽しそうですよね、ドローンを飛ばしたり、機械で全自動でやってくれたり。そういう工業要素が入ってくると楽しそうですよね。

物語のメインの農業の他にも、平岡さん世代の方が直面しそうな悩みが描かれていますが演じていてどうでしたか?

平岡 覚悟を持って自分の道を決めるって本当になかなか勇気がいることだなと思いましたね。自分はいま36歳なのですが、コロナになって自粛期間のときも自分って何をするべきなんだろうというのをすごく考える時期で、それまでは結構色々なことに興味が出てしまい、もし役者やれなくなったらインテリア好きだし、インテリア関係の仕事探そうかなとか色々妄想はしていたんですけど、コロナになったらエンターテインメントや楽しませてくれるものを強く感じてもっとこのエンタメの世界でなにができるだろうって強く思いました。ある意味この世界で生きていくって覚悟を見つけたような時期でしたね。良一もそうですけど周りの環境によって人って動かされるなというのは感じましたね。決断するというのは何かを捨てなくてはいけないし、すごく大変なことだなと。

●ヘアメイク:MIZUHO(vitamins)
●スタイリスト:石橋修一
【衣裳協力】
Iroquois/イロコイヘッドショップ
(問い合わせ先)
イロコイヘッドショップ 渋谷区恵比寿南3-8-3
03-3791-5033

【写真・文/編集部】

STORY
<加賀れんこん>が紡ぎ出す絆―。きっと、あなたも“大切なあの人”に逢いたくなる――。シリーズ1作目『種まく旅人~みのりの茶~』(2012)は、映画俳優としても活躍していた塩屋俊の企画から始まり、自らがメガホンをとり、大分県の「お茶」をテーマに制作された。2015年に2作目『種まく旅人 くにうみの郷』が、淡路島の「タマネギと海苔」をテーマに制作され、2016年に岡山県の「桃」をテーマに3作目『種まく旅人 夢のつぎ木』が公開された。そして、シリーズ4作目となる本作の題材は石川県金沢市の伝統野菜でもある「加賀れんこん」。後継者不在に悩む農業の現実を見つめなおす重厚な内容に加え、農業で活躍する女性たちを登場させ、心温まるヒューマンストーリーを完成させた。メガホンをとったのは井上昌典。主演は、シリーズ2作目に続き農林水産省で農業の活性化に向けて頑張る主人公・神野恵子役を演じる栗山千明。実家のれんこん畑の後継ぎ問題に直面する銀行マン・山田良一役を平岡祐太。その恋人を大久保麻梨子が演じる。さらには木村祐一、永島敏行、綿引勝彦など豪華実力派俳優陣が顔を揃えている。

大阪・堺市で銀行マンとして働く山田良一にある日、故郷の金沢でれんこん農家を営む母から「父親(竹市)が脳梗塞で倒れた」と電話が入る。一方、神野恵子は農林水産省かられんこん農家の視察として金沢へ向かう。訪れた高津農園では農業を会社として運営。神野は農作業を楽しそうにこなす従業員たちを取材していくうちに、農業が抱える問題点の解決策を見いだせるような気がしていく。先代から受け継いだれんこん農家を守り続けてきた父が病に倒れ、れんこん農家を嫌う良一が農家を継承しなければ、畑の存続は厳しい上に、借金の返済を抱える山田家は、銀行から返済納期を迫られ、畑を引き継ぐか売却かの二択を迫られる。やがて銀行で担当していた顧客が自殺をしたことに失意してしまった良一は農家を継ぐことを決意。恋人の凛を大阪に残したまま、思いを断ち切るかのように農作業に没頭する良一だが大きな試練にみまわれる。凛は良一のことが忘れられず金沢を訪れる。山田家のれんこん畑を何とかしようと頑張る神野は、農家に抵抗を隠せない凛を強引に農作業を手伝わせる。良一にとって初めての収穫の時、良一と両親、神野、そして凛たちは無心にれんこんと向き合うことに。農業が繋いでいくそれぞれの思いは、どんな結末を見出すのか――。


TRAILER

DATA
映画『種まく旅人~華蓮のかがやき~』は全国で順次公開中!
監督:井上昌典
脚本:森脇京子
出演:栗山千明、平岡祐太、大久保麻梨子、木村祐一(特別出演)、永島敏行、綿引勝彦、吉野由志子、柴やすよ、駒木根隆介、小久保寿人、平山祐介
配給:ニチホランド
©2020 KSCエンターテイメント

PAGETOP
© CINEMA Life!