『未来世紀SHIBUYA』白石晃士監督 インタビュー

INTERVIEW

Huluオリジナル『未来世紀SHIBUYA』の白石晃士監督にインタビューを行った。

本作が生まれた経緯をお聞かせいただけますか?

監督 Huluさんから企画をいただいたがキッカケです。その時は近未来モノで、科学技術やAIの使い方について警鐘を鳴らすという要素を扱ったPOVモノということでお話を受けて、興味深い内容でしたので「やらせていただきたいです」ということで企画が始まりました。

白石監督は本作の脚本も担当していらっしゃいます。

監督 脚本家の保坂(大輔)さんに、プロデューサー陣含め打ち合わせながら書いていただいて、ある程度固まった段階で“監督視点も入れましょう”ということで自分がリライトして打ち合わせをして、また保坂さんに戻したりもして。あとは保坂さんと私のスケジュールによって、どちらかが忙しい時は時間ある方が書いたりして。最終的に撮影現場や日数に合わせるリライトは私がやりました。

最初から6話というのは決まっていたんですか?

監督 6話は決まっていました。最初は1話35分という話だったんですけど、いろいろあって最終的には1話40分になりました。

白石監督はホラーやサスペンスのイメージが強いので、明るい感じで始まる本作が意外に感じました。

監督 最初は割とシリアスな方向だったんです。プロデューサーとしても、私の既存の作品を見てホラーとかバイオレンスばかりですから、それを見てそう企画されたと思うんですけど、近未来モノは幅のある視点取り組めるので、今この規模でシリアスな内容にしたとして、自分だったら見たいと思うかなと考えて。物語の入りはライトで楽しい方が入りやすいと思うし、コメディをやってみたかったので。この作品は完全にコメディかというと違かもしれませんけど、ライトなユーモアを含めた、言ってみればブラックユーモアの作品ですね、明るさ寄りの。見やすいユーモアを入口にしながらシリアスな要素も扱うほうが見やすいと思うし、見る立場から言うと、こういうのがいいんじゃないでしょうかと提案をさせていただきました。

色合いやデザインもとてもきれいです。

監督 美術の方や衣装メイクの方と、なるべくカラフルなものにしたいというお話をしました。近未来モノだと薄暗いディストピア感があるものが多いので、それは見飽きているし、そんなにお金をかけられないので、視点の違いでおもしろさを見せないと勝算はないと思って、カラフルなディストピアものがいいんじゃないかと思いました。

個性的なキャラクターが次々と登場しますが、これらのキャラクターはどのように生まれたのですか?

監督 ミツル(金子大地)とカケル(醍醐虎汰朗)は、大友克洋さんの『AKIRA』に影響を受けた部分があって。『AKIRA』はシリアスなSFなんですけど、中心に金田というキャラクターを置くことで明るさもある。その金田が分離してできたようなキャラクターです。

見てもかわいらしさもあり、がんばっている姿も応援したくなります。

監督 仮の編集をパソコンでチェックしてたんですけど、うちの3歳の子が、見るって言ってきかなかったので、途中で飽きると思ったんですけど見せたら、第1話の最後まで集中して見てくれて、笑って楽しんでくれて。それが半年前くらいですけど、ついこの前最近の編集を見ていたら「正義マンだ!」と言って、一回見ただけなのに「正義マン」を覚えてくれてました。子供も楽しめる作品になっているんだろうと思って、嬉しかったです。

キャスティングで重視したところはありますか?

監督 キャラ分けして、それぞれが立ってほしいと思いました。外見がなるべく違う人を選ぶというのは当然ですけど、あとは作品と同じように演じる人もカラフルにしたかったので、なるべく雰囲気の違うみなさんをキャスティングして、ぶつかった時に何が起こるかというのを見たいと思いました。この2人組に、宇野(祥平)くんや藤森(慎吾)さんが合わさるとどうなるかとか、この2人にどういうキャラクターをぶつけようかなと考えてキャスティングしたというところはあります。

篠原悠伸さんが演じる田中もいい味を出してますよね。

監督 田中には、撮り手として自分の要素が入っているかもしれないです。2人のブレーンで裏方なので地味目な印象にしています。

宇野さんが演じるマネキンおじさんがインパクトが大きかったのですが、演出面では特に何かありましたか?

監督 宇野くんがやってくれると決まったので、宇野くんに演じてもらうことを想定しながら脚本を修正していき、現場では彼にお任せにしました。作中でいろいろやっていたのは全部宇野くんが現場で自らやったことです。

新型コロナウイルスの影響で撮影が延期されたと聞きました。脚本が進化したということですが、どのあたりが進化しましたか?

監督 一番大きいのはミツルのキャラクターの変更です。当初ミツルはまじめで大人しくて優しくてというキャラクターだったので、アクションが多いカケルと比べて引っ込んじゃうなと。もっとミツルを立たせる方法はないのかと考えました。未来にはミツルみたいに自然にジェンダーの感覚を備えている方は結構いるんじゃないかと思います。ほかにも出したかったんですけどミツルだけになっちゃったんですけど、ミツルというキャラクターを変えたことによって、お話の中で出来事に直面したときの周りのリアクションが変わってくる。特に3話のAIとの恋愛のところで、恋愛観のとらえ方が変わってきたところがあります。ちょっとずつの変更ではありますけど、感覚的にはかなり大きい変更をしたと思います。クランクインする前に、延期する前の第1話を間違えて読んじゃったことがあるんですけど、これで撮らなくてよかったなって思いました(笑)

AIの恋愛を扱っていますが、寄り添える感じがあって感動しました。

監督 あの話を作る最後の段階で、プロデューサー陣脚本家の保坂さんも私の言うことを理解してくれなかった(笑)「そこまでやらなくてもいいんじゃないですか?」っていう感じだったんですけど、AI側の立場に立っていないんじゃないかと思って。作り手もその話に出てくる涼太というキャラクターも独りよがりに感じて、もっとAIを一人のキャラクターとして寄りそって描きたかったんです。最終的には納得してもらいました。

白石監督はモキュメンタリー的なものがお好きなのかなと思っていますが、このような形での撮り方は当初から考えていましたか?

監督 POVもいろいろなスタイルがあるので。あの形に落ち着いたのは割と最終段階かもしれないです。カメラがとらえた映像で構成されているという風にして、途中でいろいろあって、最終的にスマホで撮った配信動画番組の形に落ち着きました。POVは心情を描きたいときに、視点が限定されているので難しいんですけど、逆にその視点の中で描き切るからこそ、より面白くなるところもあったりします。原始的にシンプル化することで研ぎ澄まされる部分があるというか。

最後に本作をご覧になる方にメッセージをお願いします。

監督 ユーモアまみれの作品なので、気軽な気持ちで見始めてもらえたらうれしいです。そして、ハマって全話を見終えたときには、きっと見始めたときには思いもしなかった場所に連れて行きますので、行先不明のドラマをぜひ楽しんでください。

【写真・文/編集部】

STORY
本作が映し出す世界は、デジタル技術が今よりもさらに進んだ2036年の日本。何の取り柄もお金も無いデジタル社会の底辺に生きる若者が動画配信WeTuberとして、“元気”と“友情”を武器に“バカパワー全開“の体当たりで、一攫千金を夢見て、人生大逆転の配信動画を撮る姿に密着した新感覚の配信動画。本作に登場するWeTuber〈正義マン〉のミツル役とカケル役を演じるのは金子大地と醍醐虎汰朗。カメラマン・田中役に篠原悠伸、ミツルたちが憧れるデジタルハイスペック超人気カリスマWeTuberキリタ役を藤森慎吾、その妹で同じく人気WeTuberアコ役をHina(FAKY)、さらに、彼らの人生を大転換させるキーパーソン〈マネキンおじさん〉役を宇野祥平が演じる。


TRAILER

DATA
Huluオリジナル『未来世紀SHIBUYA』(全6本)は配信中!
監督:白石晃士
出演:金子大地、醍醐虎汰朗、篠原悠伸、Hina/藤森慎吾、宇野祥平
©HJホールディングス

PAGETOP
© CINEMA Life!