『麻希のいる世界』新谷ゆづみ インタビュー

INTERVIEW

『麻希のいる世界』で青野由希役を演じた新谷ゆづみにインタビューを行った。

本作への出演が決まったときはどのようなお気持ちでしたか?

新谷 すごく嬉しかったです。塩田明彦監督とは『さよならくちびる』(2019)でご一緒したときに、またお仕事したいと思っていました。まさか監督から脚本を書いていただくなんて思っていなかったので、そのことがものすごく嬉しかったですし、感謝の気持ちしかなかったです。

麻希役の日髙麻鈴さんとは出演が決まった時に連絡を取り合ったとお聞きしましたが、普段から連絡を取り合ったりしていますか?

新谷 頻繁に連絡も取りますし、会ったりもします。(共演が決まって)とても嬉しかったです!

実際に脚本を読んでいかがでしたか?

新谷 最初に読んだ時はなかなか衝撃的な展開が多くて、一度で理解できたシーンと「なんでこうなるんだろう」と監督に聞いてみたい部分もありました。でも、全部を通して読んでみるといろいろなことを考えさせられるおもしろい脚本だと思いました。

90分で波乱万丈な展開があります。演じる側の気持ちとしては難しい部分も多いですよね。

新谷 麻希と出会うところからラストまで、主人公もそうだし出てくる登場人物それぞれが成長している感じがします。それぞれが最初から最後まで通して見ると、成長ポイントがあると思います。

新谷さんが演じた由希の成長ポイントはどこだと思いますか?

新谷 由希は病気をしがちな女の子で、何のために生きているか分からないという日常を送っていたんですけど、麻希という不思議な魅力の女の子と出会って、 “こんな風に強く生きている実感を持ちたいという”憧れを持つようになりました。最初はただ生きているだけだったけど、どんどん麻希のように生きている実感が持てるようになったと思います。

それは演技にもとても表れていますよね。麻希に惹かれていく様子が映し出されていますが、どういったところに惹かれていると思いますか?

新谷 麻希はすごい生命力を持っていて、由希から見ると生きてるという感覚がすごくあって、ちゃんと人生を生きているという感じがあります。日常をちゃんと生きてるっていう感覚が由希にはなかったから、演じる上では“そういうふうになりたい”という憧れから入っていきました。

序盤では麻希に影響されることも多かったですが、新谷さん自身は人に影響されることってありますか?

新谷 あります。この映画の撮影では、麻鈴が演じている麻希にも影響されたり、麻鈴自身にも影響されました。『さよならくちびる』のときもそうだったんですけど、アドリブを入れたり、突拍子もないことをすることがあるんです。監督にとってはそれが大きな衝撃でもあったみたいです。そういう私が考えていなかったことをしたりするところがすごくおもしろくて憧れます。今回も、私が考える演技プランとは違う目線で麻鈴が考えてきたりしていて、人それぞれ考え方が違うんだなというおもしろさがありました。

本作に出演して特に経験として得られたことはありますか?

新谷 この作品の中では大きく成長できたと思います。クランクインからクランクアップまでの間で、自分の中でステップアップできた気がしています。手探りな部分があったからこそ、由希の気持ちを分かりたいというのがあったので。そういったことを日々考えているうちに役に対する思いや、お芝居に対する思いが撮影期間の中で増えてきました。

気持ちが揺れ動くことも多い役ですが、苦しかった部分などはありましたか?

新谷 劇中で麻希が由希のことをもてあそぶようなことをされると、由希としての気持ちもそうだし、私本人の気持ちとしても、好きだからこその気持ちの沈み具合がありました(笑)ただ、それは私として見ただけで、由希にとってはハッピーエンドだとお伝えしたいです。

撮影で特に楽しかったことはありましたか?

新谷 2人で自転車に乗るシーンが楽しかったです。麻希が後ろにくっついて乗ってくれて、由希としても嬉しいだろうし、私も楽しかったです。あとボーリング場でボーリングの球を拭くのが楽しかったです!私はバイトをしたことがなかったので、役ですけどバイトをするという経験を初めてできたのが嬉しかったです。すごい楽しかった!

タイトなスケジュールでの撮影でしたが、他のキャストと話す時間などはありましたか?

新谷 作中だと仲良しの場面がないんですけど、それ以外では仲良しでした。とにかく楽しかったです。だから撮影が終わるのが寂しかったです。

演じる上で意識した点はありますか?

新谷 監督から由希はすごく強い子だと言われていました。表面的な弱さはあるけど中身はすごく情熱的で強い意志を持った女の子だと言われていたので、それが伝わるように常に何か考えをもって行動しようと思っていました。

ご自身と共通する部分はありますか?

新谷 あると思います。そこの部分を出すことってなかなか実際にはないので、それを役を通してできたので自分自身の成長にもつながった気がします。

一番成長したと思う部分はありますか?

新谷 最後の展開の説明を監督から受けた時に、見る人からしたら悲劇だけど、由希にとってはハッピーエンドだと聞いて、確かにそういう見方があるんだと、新しい映画の見方を発見しました。

さくら学院を卒業してからは女優として活躍していますが、さくら学院で経験したことが活かされている部分はありますか?

新谷 もう全部です!さくら学院で私は基本を学んだというか、本当に大切なことを3年間で学びました。細かいことから大まかなことまで、全部さくら学院に在籍していたときから今までにも通ずるものがあると思います。演技はライブとはまた違うけど気持ちは一緒です。ライブだと曲にかける思いがあって、今のお仕事は作品にかける思いがあって、どちらも似たものだと思っているので、さくら学院で経験したことがよかったと思います。

卒業してから3年くらいと、在籍していた時と同じくらい経ちました。この3年間はどうでしたか?

新谷 早ーい!(笑)さくら学院にいたときも濃かったんですけど、この3年間は個人での活動になって、いろいろな方との出会いが多い3年間でした。さくら学院時代とは違った自分の中に蓄えられる経験が多い3年間でした。

年が明けましたが、2022年の目標はありますか?

新谷 高校を卒業して、学生じゃなくなるという一つの節目にもなります。大人になる過程で、高校3年間や学生時代にいろいろな方に教わったこととかインプットしたことをアウトプットしていける年にしたいと思います。作品を通してもそうだし、SNSや取材を通して自分の考えをきちんと自分の納得できるようにアウトプットしていけるようにしたいです。

女優としては?

新谷 今はとにかくいろいろな作品に出たいです!この作品は暗めな映画ですが真逆の作品もやってみたいし、幅広く、自分の領域を確かめたいです。

最後にこれから本作をご覧になる方へメッセージをお願いします。

新谷 一つ一つの展開が起きるごとに由希と麻希の絆が深まっている思います。演じていて絆が深まっていく感覚があったので、それを経ての最後の展開を見て欲しいですね。最後は撮影でも自分の中でも衝撃的だったし、いろいろなことを考えるきっかけになったので、見る人に何かを感じていただけたらと思います。

【写真・文/編集部】

STORY
本作は、新谷ゆづみと日高麻鈴がW主演を務め、共演に窪塚愛流と井浦新を迎えた塩田明彦監督の長編最新作。塩田監督作品には3回目の劇中歌提供となる向井秀徳の参加も話題の注目作。物語は、重い持病を抱え生きる希望が持てない高校2年生の由希(新谷ゆづみ)が、破局的な性格だが美しい歌声を持つ同級生の麻希(日高麻鈴)に魅かれ、麻希とのバンド活動を通して生きる意味を問い直していく。


TRAILER

DATA
『麻希のいる世界』は2022年1月29日(土)よりユーロスペース、新宿武蔵野館ほかで公開!
監督・脚本:塩田明彦
出演:新谷ゆづみ、日髙麻鈴、窪塚愛流、鎌田らい樹、八木優希、大橋律、松浦祐也、青山倫子、井浦新
配給:シマフィルム株式会社
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