「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023」長谷川敏行プログラミング・ディレクター インタビュー

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INTERVIEW

7月15日(土)より開催されるSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023の長谷川敏行プログラミング・ディレクターにインタビューを行った。

今年は昨年に比べて応募本数が大幅に増え、過去最多の1,246本となりました。特に長編の日本作品は倍近くになっています。

長谷川 例年増えてきていたのがコロナで落ち着いていたので、今年が急にということではないと思っています。長編は3作目までという縛りがあるので、これから出ていこうとしている監督たちがようやく映画製作ができる状況になってきたのかもしれません。

応募作品の傾向を教えてください。

長谷川 日本作品はインディペンデント映画としてなんとなくイメージされる自主映画的な映画が多かったですが、今年はもっと前を向いている気がしました。よりコマーシャル性が強かったり、「この作品で劇場公開をするぞ」という気概を感じさせる作品が多かったと思います。エンターテインメント性かつ社会派のメッセージがある作品など、自主映画のクオリティとは違う印象でした。

国内コンペティション[長編部門]

海外作品はいかがでしたか?

長谷川 主人公が女性という作品が多かったです。『助産師たち』『シックス・ウィークス』もそうですが、生まれてくる命と向き合うというところでは、女性を中心に据えている映画が際立ち、強い印象を残していました。『バーヌ』も息子の親権を求めた母親を題材にして、『マイマザーズアイズ』も母と娘の物語です。選んでいる途中ではもっと母親をテーマにしている素晴らしい作品もあったのですが、より広がりのある作品を選ばせていただきました。

国際コンペティション

ドキュメンタリー映画が2本入っています。

長谷川 予備選考の段階で残っていたドキュメンタリーは内容も構成も全く違うとてもおもしろいものがありましたが、今回選んだ2本も趣の異なる作品です。パーソナルなものと気候変動を題材にしたドキュメンタリーですが、それ以外にもストーリー仕立てのモノだったり、アニメーション仕立ての作品だったり、構成から内容まで驚くような事実をもとにした物語もあり、おもしろいドキュメンタリーが多かったです。もっとドキュメンタリーで入れたい作品もありましたが、ドキュメンタリー映画祭ではないので(笑)

『イントゥ・ジ・アイス』は気候ドキュメンタリーですが、出てくる科学者が魅力的で人間ドキュメンタリーでもあります。地球温暖化をテーマにしていますが、それよりも知られざる真のヒーローを描いたところでもあります。今起こっている現状を命と引き換えにデータとして集めていくことをしている人がいるから、我々が考えることができるということが分かるものです。実際に大きなスクリーンで映されたら、氷の溝の中に下っていくところは背筋が凍る映像です。『あなたを探し求めて』はパーソナルなものですが、ストーリーとしても感動的です。

先ほどお話にあった『バーヌ』はヴェネチア国際映画祭でワールドプレミア上映された作品ですが、『僕が見た夢』はベルリン国際映画祭でインターナショナルプレミア上映されました。

長谷川 『僕が見た夢』は2018年に本映画祭で『家(うち)へ帰ろう』(映画祭上映タイトル『ザ・ラスト・スーツ』)が上映されたパブロ・ソラルス監督の長編3作目の作品です。前作『家(うち)へ帰ろう』が感動的でしたが、今回の『僕が見た夢』については、同じ監督が作ったものとは思えないくらい趣が違うのですが、パブロ・ソラルス監督は本当に演出がうまいと感じさせます。ラストに向かって感情を畳みかけてくるような、押し寄せてくるような感動、演出の積み上げが本当に上手だと思いました。

国内コンペティション[短編部門]

特集として「中国映画の新境地」という企画があります。

長谷川 「活弁シネマ倶楽部」から提案されたものを受ける形でやってみましょうとなりました。今年や昨年もそうですが、コンペティションにアジア映画が少ないんです。日本でアジア映画を上映する映画祭は多く、我々の映画祭で選ばれる作品になかなかアジア映画祭が残らない。国際映画祭と銘打っている以上さまざまな国の映画を上映したというという思いもありました。日本で未公開のおもしろい上映と企画ができるのであればやりましょうと実現した企画です。アジア映画がないのでこれが一本あることでとてもよかったです。

特集「中国映画の新境地~KATSUBEN Selection~」
『椒麻堂会』

特別上映という枠組で『尾かしら付き。』が上映されます。

長谷川 埼玉県では若手クリエイターの支援事業を行っているのですが、この作品はユニバーサルミュージックアーティスツと共同で製作した作品です。彩の国ビジュアルプラザで作ったというところでワールドプレミア上映をしましょうとなりました。制作支援はだいぶ形としてできてきていて、そこは20回重ねてきた中でかなと思っています。応募されてくる作品のクオリティが上がってきていることにもつながっていると思います。

「SKIPシティ同窓会」という企画も楽しみです。ラインナップはどのように決まりましたか?

長谷川 過去に出品された監督で、時期に偏りがないように前期・中期・後期と分けさせていただきました。この期間に参加ができる監督で、特に海外の映画祭でも評価されている方が多いというところも考慮しました。日本国内だけではなく、映画祭の歴史を感じられる話を伺えればと思っています。作家性の強い作品もありますし、コマーシャル性も強い作品もあります。

最近では片山慎三監督は今回上映される『さがす』が長編2作目ですが、ディズニープラスの『ガンニバル』などを手掛けていますし、日本の映画界からも熱い視線を集めているという感じがするので、そういう監督が出てきてくださることはうれしいです。

トークイベントでは、基本的には当時の映画祭の事や、上映した作品までのお話、いかにして商業デビューに向かわれたかというところなどをお話いただく予定です。

【写真・文/編集部】

STORY
“若手映像クリエイターの登竜門”として、映画界の未来を担う新たな才能の発掘を目的に2004年より毎年開催されてきたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭。記念すべき第20回となる今回は、スクリーン上映とオンライン配信のハイブリッドで開催される会期はスクリーン上映が7月15日(土)~23日(日)、オンライン配信が7月22日(土)~26日(水)に開催される。


TRAILER

DATA
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023
[スクリーン上映]7月15日(土)~7月23日(日)にSKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ホール、多目的ホール(埼玉県川口市)ほかで開催
[オンライン配信]7月22日(土)~7月26日(水)に配信
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