『雪の花 ―ともに在りて―』三木理紗子 インタビュー

INTERVIEW

『雪の花 ―ともに在りて―』で、与平(宇野祥平)の娘・はつ役を演じた三木理紗子にインタビューを行った。

黒澤明の助監督を務め、監督デビュー作『雨あがる』(2000)以来、一貫して人間の美しい在り方を描いてきた小泉堯史監督が、吉村昭の原作「雪の花」(新潮文庫刊)を映画化。江戸時代末期。死に至る病・疱瘡(天然痘)が大流行して多くの人命が奪われていく中、福井藩の町医者・笠原良策は、どうにかして人々を救う方法を見つけようとする。妻・千穂に支えられながら、京都の蘭方医・日野鼎哉に教えを請いに出向いた良策は、異国では疫病の予防法として「種痘」が伝わっていることを知る。予防法成功の鍵となる「種痘の苗」を入手すべく、様々な困難にぶつかりながらも絶対に諦めない良策の志は、やがて藩を、そして国をも巻き込んでいく。知られざる無名の町医者は、どのようにして日本を救ったのか?笠原良策役には松坂桃李、良策の妻・千穂役に芳根京子、そして良策を導く蘭方医・日野鼎哉役に役所広司。

本作への出演が決まった時の気持ちをお聞かせください。

三木 オーディションで選んでいただいたのですが、合格の連絡を電話でいただいて、とても嬉しかったです。オーディションの時に、はつにとても感情移入をしてしまって。自分の中でちょっと手応えがあって、この作品に携われたらいいなと思っていたので、素直に嬉しかったです。

どういったところに手応えを感じましたか?

三木 オーディションは本読みから始まって、一つ一つ言葉だけを丁寧に言って、その次に感情を入れてと何回かやらせていただきました。その中で、ふっと心に落ちる部分があって、この役をすごくやりたいと思えました。

初めての時代劇ということで、所作など難しい部分もあったかと思います。

三木 撮影に入る前に監督から所作や姿勢などが書かれた資料をいただいて勉強しました。和装での生活は慣れていなかったので、立ち方や座り方などを読み込んで実際に練習してから撮影に臨みました。

オーディションでは感情移入したということですが、はつの魅力はどこにあると思いますか?

三木 はつは疱瘡(天然病)にかかってしまって絶望を感じる役なんですけど、笠原先生と出会って、なんとか希望を見つけて生きていきます。とても心の強い素敵な子だと思いました。

共感する部分や共通点はありましたか?

三木 はつは絶望的な状況から生きていく希望として、「紙漉き歌」に夢中になっています。私もお芝居や歌が生きがいなのでそこは共通していると思います。

劇中では歌っていらっしゃいますね。

三木 「紙漉き歌」を実際に歌わせていただいたのですが、民謡を歌うのは初めてでした。事前にたくさん聞いたんですけど、現地の方が実際に歌っているCDを監督がくださって、それを聞いて抑揚のつけ方などを練習して本番に臨みました。衣装合わせの時に歌ったのを監督が聞いてくださって、それでもう少し自然に歌って、優しく歌ってなどのアドバイスをいただいて、それをもとに歌い方を変えたりしました。

本作ではワンシーンワンカットでフィルム撮影が行われたということですが、撮影はいかがでしたか?

三木 リハーサルは何回もやりましたが、本番はほぼ一発撮りでした。撮り直しがきかないので、とても緊張感はありました。フィルムの現場は初めてだったので、こんな風にやっているんだと思いました。

役作りはどのように行いましたか?

三木 基本的には自分で作りました。事前に資料だけではなくて、監督から映画や本をいただいていたので、どんな時代だったのかは現場に入る前にたくさん勉強させていただきました。はつは原作にない役なので、どう演じればいいんだろうと悩んで、監督に「何歳くらいの設定ですか?」といろいろと聞いたんですけど、「等身大のままやってほしい」と言っていただいたので、自由にやらせていただきました。

松坂さんとの2人のシーンも素敵でした。共演していかがでしたか?

三木 松坂さん演じる笠原先生はずっと温かくて、表情とか仕草がずっと温かくて。はつも、私自身もどんどん心を開いて行けた気がします。

お話もされましたか?

三木 緊張しすぎて何を話したか全然覚えていないんです(笑)でも優しく声をかけてくださったのは覚えています。撮影の序盤に緊張のあまりに私がNGを出してしまったときに「ごめんなさい」と言ったら、「大丈夫だよ」と優しく言ってくださって、とても救われました。みなさん本当にやさしくてすごく穏やかな現場だったので、緊張感はありましたがすごく楽しい撮影の日々でした。

特に楽しかったと感じるところはありますか?

三木 今回、私は特殊メイクをしていただいていたのでその時間が長くて、髪も今回は地毛で結っていただいていて、あまりない経験だったのでたくさん貴重な経験をさせていただきましたし、その間にいろんな方とお話しすることができて楽しかったです。

とても映像が美しいと思いましたが、完成した映画を見た感想を教えてください。

三木 私も自然がすごく美しいと思いました。私は出ていないんですけど、山を越えていくシーンは画面越しにも迫力が伝わって本当にすごいと思いました。あとは自然の音もそのまま乗っかっているところが素敵だと思いました。

この作品に出演して成長したと感じる部分はありますか?

三木 作品に入る何か月も前に本をくださったり、一つの役に対してすごく準備をできる期間をいただけたので、自分の中で役に対する取り組み方だったり、役作りの意識がすごく変わりました。ドラマの現場だと本読みの時間があることは少なかったり、ひとつの役に対して準備する時間が短かったりするので、今回の作品を通して、こういう風に役について、時代について調べて、こういう風に取り組めばいいんだということが分かったので、これからも活かしていきたいと思いました。

三木さんが演じたはつや作品の注目ポイントを教えてください。

三木 物語としても生きていく糧、生きがいを見つけていくということも一つのテーマだと思うんですけど、はつの絶望から希望を持って生きていくところへと感情の変化や、「紙漉き歌」にも注目して観ていただけたらと思います。

ヘアメイク:井下成美
スタイリスト:末吉久美子

衣装/
ワンピース moyan ecri
イヤリング Mon Amie jewelry(karhtu)
リング yuu(karhtu)
パンプス RANDA
【問い合わせ先】
 moyan ecri
 karhtu
 Mon Amie jewelry
 yuu
RANDA(06-6451-1248)

【写真/蔭山勝也、文/編集部】


TRAILER

DATA
『雪の花 ―ともに在りて―』は2025年1月24日(金)より公開
監督:小泉堯史
出演:松坂桃李、芳根京子
 三浦貴大、宇野祥平、沖原一生、坂東龍汰、三木理紗子、新井美羽
 串田和美、矢島健一、渡辺哲/益岡徹、山本學、吉岡秀隆/役所広司
配給:松竹
©2025映画「雪の花」製作委員会

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