『か「」く「」し「」ご「」と「』菊池日菜子 インタビュー

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INTERVIEW

映画『か「」く「」し「」ご「」と「』で予測不能な言動でいつもマイペースな黒田文(通称パラ)役を演じる菊池日菜子にインタビューを行った。

本作は、“少しだけ人の気持ちが見えてしまう”男女5人の、純度100%の尊い日々を描く青春ラブストーリー。住野よるの原作は累計発行部数80万部を突破し、2017年の原作発売から若者を中心に根強い人気を誇る。W主演を務めるのは奥平大兼と出口夏希。奥平は引っ込み思案で自分に自信の持てない主人公・京を、出口は底抜けに明るい性格でヒロインよりもヒーローになりたいと願う・三木直子(通称ミッキー)を演じる。さらに、体育会系でいつも明るく笑顔な人気者・高崎博文(通称ヅカ)役に佐野晶哉(Aぇ! group)、予測不能な言動でいつもマイペースな黒田文(通称パラ)役に菊池日菜子、内気で控えめな性格である日突然学校に来なくなる宮里望愛(通称エル)役に早瀬憩と、勢いのある若手キャストが集結した。メガホンをとったのは中川駿監督。

完成披露舞台挨拶では「パラに出会えて成長できた部分があった」とおっしゃっていましたが、どのようなところでそう感じましたか?

菊池 本当に素直な言葉を伝える時、私自身としてはすごく労力が必要で。「ごめんね」を伝えるだけなのに、それだけで涙が溢れ出て止まらなくなって、泣かない方がいいシーンで泣いてしまうことがあって。そういう経験があったからこそ、自分自身の人間性だったり、私が今抱えている、こうありたいという理想とのギャップだったりを、振り返って分析する必要がありました。撮影期間を経て、そういう自分に還元して見直すことを無意識にやっていたからこそ、人間として成長できたのかなと思いました。

それは何かきっかけがあったんですか?

菊池 「ごめんね」を、(早瀬憩演じる)宮里ちゃんに伝えるシーンがあるのですが、まさにそのシーンで、泣きたくないけれど涙が出てしまって。角度を変えて考えてそれを落とし込むまでに時間がかかりました。そういった経験が成長に繋がりました。

役作りについてはご自身で作り上げた部分も多かったですか?

菊池 本読みの段階で提示したものを、中川監督から「僕はいいと思うよ」「僕もそれを想像していた」と言っていただけたので、それをベースに作っていきました。実際にクランクインしてからも、自分が準備していったパラをすごく尊重してくださったおかげで、私なりに解釈したパラをお見せできたのかなと思います。

ご自身と似ている部分はありますか?

菊池 パラはなりたい自分と本当の自分の間で揺れているというか。なりたい自分に支配されすぎてしまって、結局自分を押し込んでいるような印象があるのですが、私もそういう経験があって。学生時代は周りの目を気にしすぎて、鬱屈した気分になることもあったので、そういった部分を膨らませました。自分の経験だけに頼りすぎると、観てくださった方がパラのどこに共感するのかと確信が持てなかったので、自分の過去談にならないよう意識していました。

この5人の中でパラが一番気になるキャラクターで、共感できる部分がとても多いと感じました。

菊池 嬉しい、私もです。内に秘めている部分がありのままの人間であることというのは忘れないようにしていました。

これまでに菊池さんがあまり演じてこなかったようなキャラクターだと思いました。

菊池 そうですね、かなり挑戦的でした。今回は声のトーンを少し低くしたり、目線や表情の作り方もガラッと変えて挑戦しました。撮影を終えてみるとすっごく楽しかったなと。私としてではなくて、役として生きられたという実感が初めてありました。私はいつも演じるにあたって、菊池日菜子をできるだけ排除したいと思っていて。過去を投影しつつキャラクターを作り上げていくのも素晴らしいと思うのですが、私はかけ離れたところで生きていたいという思いがあります。パラは内面に重なる部分はあれど、表情だったり話し方だったりに似ている部分はあまりなかったので、挑戦できてとても楽しかったです。心の底から役者をやっていてよかったと思いました。

ご自身の成長も含めて、いろいろと発見があった撮影期間だったんですね。

菊池 本当にそうだと思います。1か月の撮影期間だったのですが、パラを演じつつ、なぜか自分に立ち返るみたいな瞬間がすごく多くて。その時は意識していなかったのですが、ありのままの自分を前より愛せるようになったのかなと思います。

それは素敵ですね、とてもかっこいいことだと思います。

菊池 たぶんかっこよく言っているだけです(笑)

早瀬憩さんにお話を伺った時に、菊池さんが寄り添ってくれたとおっしゃっていました。一緒にいると安心するということでしたが、結構お話をされましたか?

菊池 そうなんですか!嬉しいです。年齢は6つくらい離れているんですが、初めに話したのがいこ(早瀬憩)で。初めに「なんて呼んだらいい?」と聞いてから、“いこちゃん”と呼ぶことになり、そこからどんどん現場で距離を縮めていって、“いこ”と呼ぶ関係になりました。いことは2人でご飯に行ったりもしたのですが、妹であり、同志であり、友達でありという感覚です。

撮影現場は実際の高校だったということですが、どのような雰囲気でしたか?

菊池 佐野くんが一番のムードメーカーでした。彼が現場の空気を作ってくれていたので、それに乗っかって遊んでいました。何も考えずに5人みんなで遊んでいた時間が学生みたいで楽しかったです。控室も1つの教室だったので一緒に過ごした時間も長く、中川監督が用意してくださった筋トレ器具をみんなで使ったりもしました。

他にもそのみんなで何かしたことはありますか?

菊池 ただ話していることが多かったですね。黒板に落書きをしたりとか。撮影部のすごくかっこいい女性を巡って、「さっき話してきた」とかマウントの取り合いをしたり(笑)、逆に「撮休はどこに行くんですか?」という話をしたと自慢されたり。

菊池さんは撮休には何をしていたんですか。

菊池 そのかっこいい撮影部の女性と一緒に海へ遊びに行きました(笑)

菊池さんが本作で特に気に入っているシーンはありますか?

菊池 忘れられないシーンは、文化祭が終わって、昇降口から校門までみんなで走るシーンです。走った後にパラがバテてしまって、それを出口夏希ちゃん演じる三木ちゃんが、振り向いて「パラ遅すぎ」と言うシーンがあるんですが、その振り向いた瞬間の三木ちゃんが美しすぎて、その瞬間が忘れられないです。一目惚れってこういう感情なんだろうと思いました。

楽しそうな撮影期間を経て完成した本作は、菊池さんにとってどのような映画になりましたか。

菊池 私は今23歳なのですが、今の私が作品を観てすごく心を打たれて、あの時の自分を救ってくれたというか。あの時、うまく関われなかったあの子のことを愛おしく思えるような作品だと思っています。中高生だけではなく、学生時代を経験した全ての大人の方に観ていただきたいと思っています。1人1人にフォーカスを当てて、誰しもが考えたことのある、だけど相談することではないような細かい心の機微を美しく描いているので、年齢や性別に関わらず、多くの方に観ていただきたいです。

【写真・文/編集部】


TRAILER

DATA
『か「」く「」し「」ご「」と「』は2025年5月30日(金)より全国で公開
監督・脚本:中川駿
出演:奥平大兼、出口夏希
 佐野晶哉(Aぇ! group)、菊池日菜子、早瀬憩
配給:松竹
©2025『か「」く「」し「」ご「」と「』製作委員会
©2017住野よる/新潮社

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