アーカイブブック『Y』を発売する小関裕太にインタビューを行なった。
本作は、2014年から2024年までの雑誌「プラスアクト」シリーズにおけるインタビューと写真を抜粋再構成、さらに新たな撮り下ろしと最新インタビュー&座談会を加えた、これ以上ない大ボリューム<計208ページ>の永久保存版。新たな撮り下ろしは2テーマ。スタジオでのモノクロ撮影では、ただそこに存在する個としての小関裕太に焦点をあて、新たな一面を目の当たりにできるインパクト大な写真に仕上げた。伊豆大島ロケでは圧巻の自然と向き合う姿から等身大の旅姿まで、様々な表情が写し出されている。
小関 最初は『プラスアクト』という雑誌を通してインタビューで追ってくださっていた方が、この10年間のインタビューを1つの本にまとめてみませんか?と提案してくださったので、すごく面白そうだと思いました。30歳を迎えるにあたってすごくぴったりなタイミングで光栄なことだと思いました。
小関 まずは裕太の「Y」と、「なぜ」っていう意味で「Why」と言いますし、「Yes」とか「Yesterday」とか、30歳ということでアニバーサリーの「Year」だったり、あとは「foryou」とか「andyou」という、あなたがいるっていう意味で「You」とか、「Y」から始まる意味合いのある言葉がたくさんあるねということで、「Y」になりました。
小関 僕が一番思い入れがあったのが座談会の部分です。(この本と同じ)ワニブックスさん制作でファースト写真集を出していて、そのインタビューページも当時『プラスアクト』に載っていたので、ファースト写真集での出来事も一部アーカイブの中に入っています。この10年間とアーカイブを語るには、当時ご一緒したメイクさん、衣装さん、カメラマンさん、そして編集の方と、当時のマネージャーさんとの座談会をどうしてもやりたいと思い、それを叶えてもらった企画が入っています。何よりファースト写真集の当時は10代だったのでお酒が飲めませんでした。僕以外の皆さんが、写真集を撮影した大分の焼酎と、飲むたびに(焼酎に入れた)かぼすが増えていくのを外側からずっと見ていました。「大人っていいな」と思いながら、僕は写真集に載せるであろう絵などをノートに描きながら、みんなが飲み続けているのがすごく羨ましかったんです。今回はそのかぼすの焼酎ハイボールを飲みながら座談会をしたいというのを叶えてもらい、すごく美味しくて楽しかったです。
小関 インタビューは、今までのものがまるまる載っていて、さらに加えて今回振り返ってみてのインタビューと座談会があります。過去のインタビューは、この雑誌の中では赤裸々に話すと決めてずっと受けてきました。そういう信頼感のある雑誌だったのですが、「こんなことを語っているんだ」というのを恥ずかしながら振り返りつつ、当時実はこう思っていたということが、30歳を迎えるにあたってのインタビューにたくさん書いてあります。雑誌やメディアを通して外に言葉が出ることの嬉しさの反面、怖さもすごくあります。
その中でセレクトした言葉への恥ずかしさもありつつ、メディアを通して外に言葉が出ることは嬉しさの反面、怖さもすごくあり、自分がセレクトした言葉への恥ずかしさや責任感もありますし、実はこの言葉の中には本当は辛い時期でもあったんだよ、というのを語れているのはアーカイブ本ならではです。一人の俳優の歩みを読むというよりは、ある一人の人間がこういう経験を経てきたんだと、最終的に30歳になって振り返った時に「実はこの時こう思っていたんだ」という、一人の人間の苦悩や軌跡が面白く読んでもらえたら嬉しいです。「こういうパターンの人生もあるんだ」という感じで受け取ってもらえる、味わい深いインタビューになったと思います。
小関 意外と変わっていなかったのは年齢観に対してです。「昔からこう考えていたんだな」と。20歳の頃のインタビューを読むと、自分の20歳への思い出と変わっていないなと。美化もされていなければ削られてもいなくて、結構そのままなんだなという驚きがありました。逆に「こういうことが新鮮だったんだ」ということもありました。当時、先輩からの言葉をそのまま話していたこと。声を掛けていただいたことが嬉しくて、たくさん話していたのですが、今振り返るとちょっと恥ずかしいなと感じました(笑)。
小関 総合してすごく面白い20代だったなと思います。苦悩も含めて、すごく血肉になったし、「悔しい」という思いとかにちゃんと答えを未来の自分が与えるというか、過去の自分の悔しさに1つ1つアンサーを渡せるような20代後半になれてたんじゃないかなと思いました。
小関 20代の時は、例えばハンカチを持ってるような男性のような。ハンカチは紳士の象徴でもありますが、使ったら洗ってアイロンがけをしたり、畳んだりして、また定位置に戻して、それをまた次の日使ってとかっていう面倒くさいことをやれる余裕があるのは大人っぽいなというのを20代前半で思っていました。細かいことに気づき、気配りできる男性になりたいなという思いで、20代前半の時に抱いていた自分の30歳への幻みたいなものが、全部が全部じゃないとは思うんですけど、一応具現化できたなというはありました。丁寧な人間になっていたいなというのがありました。
小関 でも20代前半は特に頭の中も散らかってましたし、やりたいことがありすぎて、結局全部手に付かないみたいな部分もありました。どうしたらこのモヤモヤというか、このできなさを改めていけるのかっていうのを毎日課題に過ごしてました。
小関 そうですね。構築するという一面もあったんですけど、自分自身を壊して作るみたいな20代だったと思います。
小関 表紙や印象的な白黒の写真は、そこに「いる」ということを意識して、逆に意識せずにそこにいる状態を閉じ込めようという話になりました。30歳というものが一つの大きなきっかけでこの本が出来上がっているので、「今まで」と「これから」、アーカイブと未来というテーマを根軸に撮影しました。無機質で、ありのままの自分のような、過去も未来も感じられる写真ということで、そのテーマになりました。
ファースト写真集『ゆうたび。』もそうだったのですが、「旅」がひとつの大きなテーマです。僕自身、一人旅が好きで海外に一人で行ったりもしますし、カメラを始めたきっかけも自分自身を知ってみたいという、自分探しのツールとしてある種の旅をしてみたいという感覚で始めました。「旅」がキーワードになっているので、このアーカイブ本の中でも、撮り下ろしで一つ旅をしようと。過去を振り返っているような旅をテーマに、伊豆大島へ行って撮影しました。
小関 「ワクワクすること」が10代の頃から変わっていない気がします。振り返ってみると、今の自分の目線からもそうですし、僕が尊敬する方々が見た僕の感想や、先輩方が言っていたことなどが、20代の頃に自分がインタビューで吐き出していたこととリンクしていて。大変なこともたくさんあったし、楽しいことばかりではなかったのですが、「間違ってはなかったな」と頷けるような今になっていると振り返って思いました。「ワクワクすること」を追うということも、20代でチョイスすることと30代でチョイスすることは大きく変わりますが、根底にあるのは、その時にワクワクしていることを追い、何かをし、それを誰かと共有したり共感したりしていくことが、自分の原動力になっているのではないかと今でも思います。
小関 僕はめちゃくちゃ恥ずかしい1冊です、くすぐったいというか(笑)
小関 もちろん応援してくださってる方の中には読んだことがある記事ばかりかもしれませんし、「あ、思い出した、懐かしいな」と思うことも、応援してくださってる方なりの10年もあると思うので、その中で改めて読んでみて、どう思われるのかなというのが僕自身も楽しみです。振り返りのインタビューもあるので、それを経て、当時のインタビューの印象も変わるんじゃないかなと思います。今、時が経ったからこその見え方になってると思うので、そんな振り返りになってたらなと思います。
そして、この本が出来上がってから応援してくださって読んでいる方だったりとか、興味はないけど、たまたま見てみたという方にとって、1人の人間の価値観の構築を「こういう人もいるんだな」という意味で、その時々の生の言葉が残ってるのが面白いことだと思うので、僕としてはすごく恥ずかしいんですけど、人間本みたいな感じで、面白がってくれたらいいなと思います。
ヘアメイク:堀川 知佳
スタイリスト:吉本 知嗣
【写真・文/編集部】
小関裕太『Y』
2025年7月10日発売
価格:2,860円(税込)
仕様:A5判・ソフトカバー・4色+1色/計208ページ