『きさらぎ駅Re:』恒松祐里 インタビュー

INTERVIEW

撮影/蔭山勝也

映画『きさらぎ駅Re』で、前作できさらぎ駅に取り残された堤春奈役を演じる恒松祐里にインタビューを行った。

2004年1月8日、「はすみ」と名乗る女性がこの世に存在しない「きさらぎ駅」という異世界駅に辿り着いた体験を匿名掲示板『2ちゃんねる』に投稿したことをきっかけに、ネットミームとして普遍的な人気を誇る「きさらぎ駅」。2022年6月に映画『きさらぎ駅』が公開され、ネットや口コミで大流行、スマッシュヒットを果たした。そして、パワーアップした新作続編『きさらぎ駅Re:』で主演を務めるのは、前作で宮崎明日香を演じた本田望結。そして前作できさらぎ駅に取り残された堤春奈役を演じた恒松祐里が続投。さらに前作から佐藤江梨子ほか、芹澤興人、瀧七海、寺坂頼我らも再び登場。新たな顔ぶれとして奥菜恵、大川泰雅らが登場し、物語に彩を添える。

前作から3年経っての続編です。初めに話を聞いた時はどのような気持ちでしたか?

恒松 本当にびっくりしました。マネージャーさんから電話で「嘘みたいな話なんですけど、『きさらぎ駅』続編やるみたいです」と言われて、「えー!」と驚いてしまって。そこから台本をいただいたら、本当に面白くて、撮影が楽しみというか、初号で見るのが楽しみでしょうがなかったです。

撮影/蔭山勝也

前作は公開後に口コミで話題になっていきました。

恒松 お客さんの数もレビューの数もどんどん増えていき、すごいことになっているなというのは、公開当初から感じていました。公開が終わってからの配信でも、まさかのNetflixで1位になった時もあって、「えっ」みたいな感じで、「みんな、『きさらぎ駅』が好きすぎじゃない?」と思うほどでした。でも、それくらい愛していただいて、本当に嬉しいです。

撮影/蔭山勝也

前作の『きさらぎ駅』の時にもお話を伺った時に「ホラーが苦手」とおっしゃっていました。今回は撮影や試写は楽しめましたか?

恒松 今回は前作をご覧になった方が見ていただけるとより楽しめる作品になっています。前作よりも人間の怖さのようなものが、より色濃く描かれていると思います。SNSの怖さだったり、きさらぎ駅から帰還したことで明日香が世間のSNSの反響で叩かれていくのですが、そういった怖さが描かれています。ホラー的な怖さについては、前作を見て慣れたというのもあるかもしれませんが、今作はより笑えました。笑いながら見ていました。

撮影/蔭山勝也

ホラーなのに笑いながら見れるのはいいですね。

恒松 前作も映画館で笑って見てくださってる方が多かったんですけど、今回もそうなったらいいなというか。私はどうしても自分が強すぎる場面で笑っちゃうんです。「いや、強すぎでしょ」と。自分で演じているんですけど、自分でツッコミしながら笑っていて。それは前作もそうだったんですけど、今作は私だけじゃなくて、本田さん演じる明日香も強くなっていて、その2人が一緒にアクションをしているシーンが本当に面白いので楽しみにしていただけたら嬉しいです。

撮影/蔭山勝也

前作よりもホラー映画が苦手な方でも見れる気がしました。

恒松 本当にそうだと思います。前作の方がよりホラー要素が強いというか。みんなきさらぎ駅がどんな状態かわからない状態で見るから、より怖いのかもしれないです。本作では、分かっていて見に来てくださっていると思うので、より楽しめると思います。でも、感動するシーンがあるので、『え、きさらぎ駅で感動するの?』という部分も見ていただきたいです。前作よりも物語の深みが増していて、キャラクターの心情もより色濃く描かれています。

撮影/蔭山勝也

本田さんとの再会はいかがでしたか?

恒松 二十歳を超えて、本当に大人になられて。でも相変わらず明るくて、芯が強くて、本当に可愛いですし、素晴らしかったです。本田さんは晴れ女で、グラウンドのシーンがあるんですけど、その時が台風予報だったんです。でも、もう本田さんがいる時はずっと晴れていて、本田さんの撮影が終わってから雨が降って。本当に「ありがとう」と。「いてくれたおかげで撮りきれた」という感じでした。

撮影/蔭山勝也

前作では恒松さんが演じる春奈が主人公でしたが、今回は本田さんが演じる明日香が主人公として物語が進んでいきます。前作との立ち回りの違いはありましたか?

恒松 前回はみんなを引っ張っていく側でした。みんなきさらぎ駅について何も知らない状態だったので。でも今回は明日香も、その春奈と同じかそれ以上の知識を持っているので、春奈の立ち回りとしても引っ張られる側に変わっています。明日香が引っ張ってくれて、春奈は着いていく感じだったので、それがすごく新鮮でした。今回の作品では何度も繰り返していくところがあって、そこできさらぎ駅にと捕らわれた人たちの心境がどんどん変化していくので、春奈も人間として深みを増して、キャラクターとしても面白くなっていっています。 

撮影/蔭山勝也

今回新たに気づいた魅力はありますか?

恒松 前作から引き続きで春奈の良いところは、人間らしいところだと思います。明日香を助け出したいと前作でも思っていたし、言っていたけれど、いざ自分がそういう状況になってしまうと、やっぱり誰だって自分を助けたくなってしまうと思うんです。春奈のそういう部分が多分多くの方に共感していただいて、反響をいただいたのかなと思います。今回は、そんな春奈が、きさらぎ駅にトライしていく中で、いろんな人との友情も芽生えていって、前作の春奈からどんどん変わっていく様子が描かれていて、その変わっていく姿も人間らしいなと思います。めちゃくちゃ善人にはなりきれないけれど、それも踏まえていい人でいたいと思っている、すごく人間らしくていいキャラクターだなと今作でも思いました。

撮影/蔭山勝也

そのキャラクター象についてはご自身からアイデアを出して取り入れた部分もありますか?

恒松 結構あります。今回も永江監督がすごく自由にやらせてくださいましたし、私たちもやりたいことがたくさんあったので。私だけのパートだと、前作で変顔みたいな驚き方をしているシーンがあるんですけど、あの顔をどうしても今回も入れたいと思って、監督に「この顔できるシーンはないですか?」と聞いて、「ここだったらできそう」というところでやらせていただいたりとか。木でおじさんを倒すシーンがあるんですけど、その時の侍みたいなかっこいい感じは、私が提案してやってみたり。あとは、明日香が劇中で車を運転するんですけど、最初はめちゃくちゃ下手だったのに、どんどん上手くなっていくんです。最後には片手運転できるぐらい上手くなっていって、その横で春奈も明日香の上手さによって反応が変わっていくんですけど、「上手すぎて安心して寝ちゃうまでいくというのはどうですか?」というのを監督に相談したら「いいね」となって。その方が彼氏と彼女みたいな感じでおもしろいかなと思ってアイデアを出しました。シーンごとにみんなでいろいろとアイデアを出しながらやっていました。

撮影/蔭山勝也

初めから演出が細かくあったというよりは、それぞれが作り上げていった部分も大きいんですね。

恒松 そうですね、前作で演じた人たちが自分のキャラクターを分かっているからというのもあります。監督は新たに加わった方たちにはちょっと演出をされていましたけど、私たちはもう本当に「好きにやって」みたいな感じでした。

撮影/蔭山勝也

それで、あの掛け合いが生まれて面白く仕上がるのはチームワークがよかったということですね。

恒松 チームワークがめちゃくちゃいいです。前回は本当に大変で、カメラマンさんと息を合わせながら、カメラマンさんが後ろに引いたら飛び出してくるという動きを現場に行く前にスタジオで練習してから撮影に臨んだりとかしていて、舞台みたいな感じで稽古もしたので、より仲良くなったんですけど。今回はカメラマンさんもスタッフの皆さんも一緒なので、前回のチームワークの良さを引き継いで作品に臨めました。新たに入ってきたメンバーの皆さんもすごく面白い方たちばかりで、『きさらぎ駅』ももちろん見てくださっていて、みんな緊張せずにリラックスした空気感で撮影できたので、毎日がクリエイティブしている、面白いことをしている現場だと思いました。

撮影/蔭山勝也

ある意味で自由な演技ができる作品ですね。

恒松 そうなんです。異世界だから何をしてもいいので、それが楽しかったです。普通のリアリティのある芝居だったら、もっとびっくりするでしょうと思うような場面でも、ここは異世界だし、私たちもう慣れているんで、みたいなところがギャップがあって面白いなと思いました。

撮影/蔭山勝也

他にも印象的なシーンはありますか?

恒松 みんなで一致団結していくシーンがあるんですけど、そこで台本に「アルマゲドンのように歩く」みたいに書いてあって、みんなで格好つけて、「よし、敵に戦うぞ」というようにチームワークができていくのがヒーローみたいに見えてくるみたいな。そういう感じでネタ要素をたくさん入れていました。

撮影/蔭山勝也

そういった部分も前作から進化した点かもしれませんね。

恒松 前作との違いはやっぱりキャラクターたちにより厚みが出たというか。記憶が積み重なっていく中で、春奈たちもどんどん成長していって、きさらぎ駅に取り残された人たちの心情がよりリアルに描かれているところが違いなのかなと思います。

撮影/蔭山勝也

前作とは代わったキャストもいますが、撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?

恒松 新たなキャストの人たちも本当に面白くて。ホストのハヤト役の大川(泰雅)さんが、名刺を出すシーンでかっこよく出す練習を家でやるために名刺を持って帰っていて。でも本番になったら手のアップの時にめちゃくちゃ緊張しちゃって、大川さんの手の震え待ちがありました。あとは夫婦を演じられている柴田(明良)さんと中島(淳子)さんは実際にご夫婦なのですごく息がぴったりで、本当にあのままというか。大輔役の寺坂(頼我)さんは続役ですけど、最初にきさらぎ駅に来た人のはずなのに、前作も情けない可哀想なキャラクターでしたけど、今作でもいじられてるというか、きさらぎ駅にいじられてるというか。一人一人のキャラクターが立っているので、それは前作に引き続き面白いところだと思います。

撮影/蔭山勝也

とても楽しそうな撮影現場ですね。

恒松 楽しい現場でした。ずっと笑っていました。初日から電車のシーンだったんですけど、みんな息ぴったりで、新しいメンバーは「おお、ここかあ」と言って、私たちは「うわ、懐かしい」と言いながら入ってきて。電車のシーンは走る時間が決まっているので、ワンカットでOKを出さなきゃいけないとかシビアだったんですけど、最初からいいチームワークでした。

撮影/蔭山勝也

恒松さんはさまざまジャンルの作品に出演されていますが、恒松さんご自身が見る好きなジャンルはありますか?

恒松 いろいろと好きなんですけど、やっぱりマーベルや戦う系も好きです。物語的に好きなものがマーベルにも通ずるんですけど、何か歴史があって、それが集結して、みんなの思いが重なった時に感動します。最近だとアニメの「チ。-地球の運動について」を見ていたんですけど、「チ。」もどんどん主人公が変わっていく中で一貫して地動説を信じるという精神を受け継がれているみたいな。マーベルもアイアンマンの精神を受け継いで世代交代されていくみたいな、みんなのバトンを渡した先にあるものに感動する傾向があるんだなと自分最近気づきました。1作品でも「繋がった」と感じる作品が好きです。

撮影/蔭山勝也

本作や春奈の見どころを教えてください。

恒松 前作できさらぎ駅に取り残された春奈が明日香に助け出されるところから始まります。私が演じる春奈は、前作では引っ張っていく役柄でした。今回は明日香に引っ張られていく役柄に変わっています。相変わらず春奈はすごく強くて、予告にもありますがおじさんを石で倒したり、木で倒したり、いろいろとやっています。明日香も強くなっているので、今回は2人で協力して敵を倒していく『きさらぎ駅』になっているので、絶対楽しんでいただけると思います。

スタイリスト;武久真理江
ヘアメイク:横山雷志郎

【写真/蔭山勝也、文/編集部】

STORY
3年前、異世界「きさらぎ駅」から奇跡の生還を果たした宮崎明日香(本田望結)。しかし、彼女の外見は20年前のままその異質な存在は、世間の冷たい視線と疑念に晒されることとなった。孤独と絶望に沈む明日香の前に現れたのは、ドキュメンタリーディレクターとして名を馳せる角中瞳(奥菜恵)。この運命的な出会いが、明日香の心に新たな決意を芽生えさせる。かつて命を懸けて救ってくれた堤春奈(恒松祐里)、そして異世界に取り残された者たち彼らを助けるため、明日香は再び「きさらぎ駅」へと足を踏み入れる。果たして、彼女を待ち受けるのは救済か、それともさらなる絶望か。前作を凌駕する衝撃の展開に、あなたは息を呑む――。


TRAILER

DATA
『きさらぎ駅 Re:』
公開劇場は 映画公式サイトでご確認ください。
監督:永江二朗
出演:本田望結
 芹澤興人、瀧七海、寺坂頼我、大川泰雅、柴田明良、中島淳子
 奥菜恵/佐藤江梨子
 恒松祐里
配給:イオンエンターテイメント
©2025「きさらぎ駅 Re:」製作委員会

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