最新作『ひそひそ星』の公開が5月に控える園子温監督初の美術館での個展「ひそひそ星」のオープニングイベントが2日(土)にワタリウム美術館で行われ、園子温監督とChim↑Pomの卯城竜太とエリイが登壇した。

常に時代を挑発し、世の常識に疑問符を投げかける映画監督・園子温が、構想25年を経て製作されたモノクロSF作品『ひそひそ星』。その待望の最新作の公開まで約1ヶ月となる、4月3日(日)より3ヶ月間に渡って、自身初となる美術館での個展「ひそひそ星」がスタートした。展覧会は、「ひそひそ星」がそのシークエンスを飛び出し、独立した三つのポエム空間として凝縮されている。

展覧会の開始に先駆けた2日(土)に関係者向けのオープニングイベントが行われ、本展覧会と映画『ひそひそ星』などについて語られた。

園子温による個展「ひそひそ星」の歴史は、昨年6~7月に高円寺のGarterで行われた同名の自身初の個展にさかのぼる。当時、個展のキュレーターを務め、園に展覧会の誘いをしたのはChim↑Pom(卯城竜太、エリイ)。卯城は、「園さんはもちろん映画監督なんだけど、やってきたこと全てを芸術家の活動として捉えなおしたら面白いなと思って。アクティビスト的な活動も多かったし、ジャンルに囚われていない。それを展示として見せてみたいなと思ってやったのが“ひそひそ星”展なんです。」と振り返った。園が卯城に説明したのは、「ひそひそ星」と対になっているのが“東京ガガガ”(園がかつて主宰していた路上パフォーマンス集団)だという。園は「高円寺は東京ガガガの拠点でもあったので、当時を彷彿とさせるワイルドなものにしたいという想いはありました。」と振り返る。会場の建物全てを覆う、300メートル以上の横断幕に肉筆のメッセージを公園でひたすら書き、腰が上がらなくなるほどだったと振り返る。聞き手として登壇したワタリウム美術館の和多利は、「高円寺の展覧会は園さんの“うるさい部分”と“静かな部分”の両方が表現されていて、それぞれ7割、3割ぐらいのキュレーション振りが見事でした。今回の展覧会はかなり映画寄りに静かにまとめていきたいと思いました。」と違いを語った。和多利から今回の展覧会のオファーを受けた際に園は、「展覧会も自主映画と一緒で、1本目は和気あいあいで許されるところがあるけど、2本目は厳しい目ににさらされることになるから気を引き締めないと・・・」と怖さと迷いも感じていたことを明かした。

話題は監督最新作の『ひそひそ星』になり、園監督は、「この映画は、25年前に初心で書いたシナリオを、現在の商業にまみれた僕がもう1回全部を振り出しに戻す決意も込めて作ったものだから、すごく重要なんです。」と思い入れたっぷりに説明。一方で、「この映画は完成させたくなくて、編集をずっとやってて、音入れもまだこれから続くんです。」と並々ならぬ思い入れがあるようで、「人類の想い出を配達する宇宙船の話だから、もし完成した場合、土の中に寝かせて時間を超えて他の時代の人が観てくれればいいなと思っていた。」と本作への思いを込めて語った。卯城は映画について、「信じられないほどの感動とインスピレーションを受けた」と絶賛し、続けて、「映画は映画なんだけど、ジャンルを超えて人間が作る芸術のひとつの極致として色んな角度から見ることができる」とその魅力を語った。エリイは、「びっくりした。こんな映画今まで観たことないし、これは歴史的な1本になると確信しました。」と熱く語り、和多利は、「今回展示される絵コンテをきちんと見たら、映画がこれにかなり忠実に作られていることが分かります。多分6~7割は活かされてるんじゃないか。」と語ると、卯城も「SFに時代が追いついたということなんですね。」と賛同した。

園は「ひそひそ星 園子温作品集」に、“ひそひそ星”について2万字に及ぶ文章を寄せているが、それについて、「直観的に作った映画を、その文章を書いて、さらに詩として表現することで、なぜこの映画を作らなければならなかったのか整理できて明確に言えるようになった。」と語った。卯城は、「1本の映画を作ることで、展覧会になったり本や文章になったり、ひとつの作品に色んな人がインスパイアされていって、違う形を作っていく。抽象的でありながら現実を描いてもいるから皆が主体者としてシェアしたくなる。この映画にはそういう魅力がある。」とコメントした。最後に園は、「これから未来に作る映画の全部が映画『ひそひそ星』に詰まっている。」とメッセージを贈った。
*1・・・「ひそひそ星 園子温作品集」朝日出版社、4月下旬一般発売、予価2,300円

園子温展「ひそひそ星」

会期:2016年4月3日(日)~7月10日(日)
開館時間:11時から19時まで(毎週水曜日は21時まで延長)
休館日:月曜日
入場料:大人1,000円、学生(25歳以下)800円、小・中学生500円、70歳以上の方700円
 ※ペア券・・・大人(2人)1,600円、学生(2人)1,200円
会場:ワタリウム美術館(東京都渋谷区神宮前3-7-6)
 ワタリウム美術館 園子温展「ひそひそ星」公式サイト

『ひそひそ星』

『ひそひそ星』ビジュアル

映画『ひそひそ星』は2016年5月14日(土)より新宿シネマカリテにて公開!

監督・脚本・プロデュース:園子温
出演:神楽坂恵、遠藤賢司、池田優斗、森康子、福島県双葉郡浪江町の皆様、福島県双葉郡富岡町の皆様、福島県南相馬市の皆様
配給:日活
2016年/日本/100分

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