『小さな園の大きな奇跡』

わんわん泣けるほど感動的で、理屈抜きで笑顔になれる。

ある日、有名幼稚園の園長だったルイは、エリート教育に疲れて退職し博物館で働く夫のドンと世界一周の旅行に行く夢を叶えるべく旅に出るつもりだった。仕事を辞め、習い事をする日々にテレビであるニュースが流れてきた。それは、出生率が下がり続け、幼稚園の廃校が相次いでいる。元田(ユンティエン)幼稚園もその1つで園児も資金も足りず、園長や教員が辞職し残されたのは代理教師1人名と経済的理由により転園できずにいる園児5名だけで、幼稚園は月収4500香港ドルで園長兼教員を募集するというニュース。給料が少ないうえに掃除や雑用もしなくてはいけないという最悪の条件。だが、気になって仕方がないルイはその幼稚園を訪ねることに。初めは警戒していた園児だが徐々に笑顔を見ることができるようになり、ルイは夫に反対される覚悟で引き受けることにする。

この物語は実際に起きた物語で、ルイ先生のモデルになったのはルイ・ライホン。2009年に香港郊外の元郎(ユンロン)にある元岡(ユンコン)幼稚園が資金難で閉園の危機にあり4500香港ドルで園長を募集していると話題になった。給与だけでなく、掃除、雑用、車の運転までも一人でやらなくてはならない重労働。数人の応募はあったが、唯一、ルイ先生だけがこの幼稚園の園長になることを希望したそうだ。この映画が公開されたことにより、「エリート教育よりも設備のいい高級幼稚園よりも、先生の熱意やこどもを愛する心こそが一番」と気づいた香港市民は多く、現在、ユンコン幼稚園は園児数68名、入園の空きを待つ子供が80名以上いるという。そしてルイ先生はいまも4500香港ドルの園長先生を続けている。
※4500香港ドル=約6万円、普通の幼稚園の園長に比べると1/6~1/8、有名幼稚園の園長なら10倍の給与もあり得る

ゆっくりとピアノの演奏が物語を進めてくれる。そして、涙が止まらなくなる。でも、映画館を出るときには笑顔でいることができるだろう。ハンカチ必須な物語!香港映画は日本人にはあまり触れる機会が少ないかもしれないが、この作品は国境を越え、あらゆる人が楽しむことができる。子供でも大人でも見た人の心に学ぶことの大切さを教えてくれる。どの国の人でも子供の頃は夢を見るのではないだろうか。でも、その夢は現実に押しつぶされてしまい忘れてしまうこともある。そんな子供の頃の自分の夢を思い出すことができる。幼稚園、保育園であった出来事なんて覚えている人のほうが少ないのではないか。なぜ通っていたのか。あなたは子供の心をつかむときに勉強は好き?と聞くであろうか?遊ぶということ、そんなことではなく、彼女たちは勉強をしたくて幼稚園に通う。字が読めるようになればお父さんの仕事の手伝いができるから。そんな答えが返ってくるだろうか。どんなに立派な建物でなくても教師の心が大切なのだ。教師は人の人生に影響を与える重要な仕事。あなたはこれまでの人生でどれだけの先生に出会ってきたであろうか、人生で一人は良い先生に出会えただろうか。もし、一人でも思い当たる人がいるのであればそれはとても幸せなことなのかもしれない。

(text:片岡由布子)

映画『小さな園の大きな奇跡』は2016年11月5日(土)より新宿武蔵野館ほか全国で順次公開!
監督:エイドリアン・クワン
出演:ミリアム・ヨン、ルイス・クー、リチャード・ン、アンナ・ン、スタンリー・フォン、サミー・リョン
配給 武蔵野エンタテインメント
2015年/香港、中国/112分


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