オリバー・ストーン監督

米国最大の機密を暴いた男を描いた『スノーデン』の記者会見が1月18日(水)に都内で行われ、オリバー・ストーン監督が登壇した。

笑顔で登壇したオリバー・ストーン監督は「今日は皆さんお集まりいただきありがとうございます。今回、映画を携えての来日となるので、あまり政治的ではなく映画の話ができればいいなと思います」と挨拶。今回3年半ぶりの来日となる監督だが変わったと感じる点を問われると「変わっているかどうかは分かりません。このホテルに詰め込まれてずっと取材受けていますから、もう“過労死”状態です」と笑いを誘い、過密スケジュールであることを明かした。

スノーデンを題材にした理由を「僕自身、今までも自分の時代に興味を持って映画作りをしてきました。『オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史』という作品を手がけて、1890~2013年の歴史を扱うということをして、2013年はオバマ氏がこの監視社会のリーダーとして引っ張っていっている時代でもありました。1月にこのシリーズをリリースしたその後6月にエドワード・スノーデンがあのような形で告発を行ったわけです。我々がそのシリーズの10章目で扱った監視社会というテーマをまさに改めて“そうなんだ”という風に感じさせられたニュースが目に止まった」と語り「映画にしようという興味はまったくなかった。ニュースを追うという気持ちはなかった」と話し、続けて「2014年1月にスノーデン氏の人権は弁護士から連絡をいただいて『モスクワに会いに来てくれないか』と誘われ、2年間で9回に渡って本人に話を聞く機会を得ました。その中でエドワード・スノーデンの視点から語れる、彼のバージョンの映画にしようという気持ちになっていたわけです」と語った。

実際にどれだけのことが事実なのかと問われると「描かれていることは全て自分がどう思うということは入れていません。スノーデンが自分に語ってくれた内容を映画化した」と話し「もし彼の言っていることが間違いなのであれば、僕自身の今までの経験値や自分の心で感じた部分で言うと、彼は世界で最も素晴らしい役者だと言える。つまり彼が言うことは真実だ」と考えを述べた。また「彼自身から僕が聞いたのは『アメリカが日本国民を監視したいと申し出たが、日本の情報機関がそれは違法であるし倫理的にもいかなるものかと拒否された。しかし構わず監視をした。同盟国でなくなった瞬間にインフラを全て落とすことができるように、民間のインフラにマルウェアを仕込んである』と言われた」と明かした。

本作はアメリカの資本が入っていないと明かし「フランス、ドイツなどスノーデンをリスペクトしてくださっている国からの出資で作られています。もちろん、アメリカのメジャースタジオさんにも話はしましたが断られています。理由は分かりません」と語り「日本の方にもぜひ観ていただいて、この問題の巨大さ、複雑さを是非考えていただきたい」と願いを込めた。

米国による膨大な個人情報監視の事実を暴いた男“エドワード・スノーデン”の半生を、アカデミー賞を3度受賞した巨匠オリバー・ストーン監督が描いた本作。2013年6月に元CIAおよびNSA職員の告発によって暴露されたアメリカ政府が秘密裏に構築した国際的な監視プログラムの存在。カメラの前に立ち、素性を明かしたごく普通の29歳の青年は、なぜ輝かしいキャリア、恋人と築き上げた幸せな人生を捨ててまで重大な告発を決意したのか。国を愛する平凡な若者が、恐るべき現実に理想を打ち砕かれていった過程を描く。

【取材・写真・文/蔭山勝也】

オリバー・ストーン監督

オリバー・ストーン監督

『スノーデン』ポスタービジュアル


映画『スノーデン』は2017年1月27日(金)よりTOHOシネマズ みゆき座ほか全国で公開!
監督:オリバー・ストーン
原作:ルーク・ハーディング「スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実」(日経BP社)
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、シャイリーン・ウッドリー、メリッサ・レオ、ザカリー・クイント、トム・ウィルキンソン、リス・エヴァンス、ニコラス・ケイジ
配給:ショウゲート
2016年/アメリカ、ドイツ、フランス/135分/PG-12
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