客席の中央を通り登壇した4人。アンダーソン監督は「一番最初にこのアイデアが思い浮かんだ日から、この日を楽しみにしていました。日本の文化、日本の映画、日本の方々からインスパイアされた日本を描きました。（日本の観客を前に立てる）この瞬間が僕のゴールだった」と6年にわたる本作の製作を振り返り、挨拶した。日本の映画は10代のころからよく見ていたというアンダーソン監督は「日本が大好きで、日本で映画を撮影したいと思っていた」と語ったが、本作では自身が描く“日本”を舞台にしたストップモーション・アニメとなったこは「僕にとっては予想外でした」と明かした。

本作は豪華なボイスキャストが話題となっているが、本作で小林市長役の声優を務めるとともにキャスティング・ディレクターを担当したのは「ウェスとは長く付き合っている」という野村。今回本作で日本人のボイスキャストを探すタイミングで「監督に聞いて、年齢や姿が近い人で、お互いを知っていて、言うことを聞いてくれそうな友だちを集めた」と語り笑いを誘った。しかし、集めてはみたものの、「情報が教えられなかった」と苦悩もあったようで、「一人ずつ録音して、毎回ウェスに送った」と繰り返し行ったことを明かした。また、その声を聞いて入れ替えることもあったようで、RADWIMPSの野田洋次郎については「ウェスがニュースきゃすったーに向いているのではないかと言うので、連絡して『君はニュースキャスターだから天気予報を読んでほしい』と言ったらびっくりしながら快諾してくれた」と明かした。

この日登壇したボイスキャストを務めたランキンは「全部が難しかった」と声優へのチャレンジへの苦悩を語り、ゴールドブラムは「私は脚本が送られてきて読んで、録音スタジオでたった2時間だけ仕事をした」とあっという間の録音だったことを明かし、笑いを誘った。また、キャスティングを担当するとともに声優も務めた野村は「録音してから（自身が演じた役のパペットを）見たら、自分よりごついおじさんでびっくりした（笑）」と明かしつつも、実際にロンドンで撮影現場を見たというが、「今日撮ったシーンをみんなで見ようとなったけど、前の日に丘の上にいた犬が、丘の裾まで降りてきただけで、それを観たときは絶望しました。一生終わらないんじゃないかと思いました」と非常に時間がかかるストップモーション・アニメの制作について語った。

イベントでは観客からの質問も寄せられ、アンダーソン監督の映画に見られる“孤独”という点について、アンダーソン監督は「孤独については映画の大きな位置を占めています。映画を作るときには孤独をよく考えます。いつかは孤独をもっとフィーチャーした映画を作りたい」と語った。また、その独特の作風が話題を呼ぶことが多いアンダーソン監督作品だが、インスピレーションについて聞かれると「何を参考にしたいかをリストアップします」と作品ごとに写真家や音楽、映画などをリストアップしていることを明かし、「僕の映画作りのコツがあるとすればそれかもしれない」と語った。

最後にアンダーソン監督は「映画を作った人たちの、日本の文化、日本の映画、日本の方々への敬愛を感じていただけたら幸せです」とメッセージを送った。また、イベントでは、本作『犬ヶ島』の公開初日の舞台挨拶にウェス・アンダーソン監督とコーユー・ランキンが登壇することが発表された。舞台挨拶は５月２５日（金）の19:00～、TOHOシネマズ六本木ヒルズにて行われる。チケットの詳細は こちら。

全編にわたり日本を舞台に、失踪した愛犬を探す少年と犬たちの壮大な旅と冒険をストップモーション・アニメーションで描き出す本作。声優陣として、ビル・マーレイ、ジェフ・ゴールドブラム、エドワード・ノートンらアンダーソン監督作品常連の豪華俳優陣に加え、スカーレット・ヨハンソン、グレタ・ガーウィグ、ブライアン・クランストン、ヨーコ・オノら多彩な才能が集結、さらに日本人ボイスキャストとしてRADWIMPS・野田洋次郎、夏木マリ、村上虹郎、渡辺謙らといった日本を代表する異色なキャスト陣も参加している。

【取材・写真・文／編集部】