『寝ても覚めても』が9月12日[現地時間]に第43回トロント国際映画祭で上映され、濱口竜介監督が登壇した。

初のトロント国際映画祭への参加となった濱口竜介監督。到着翌日からカナダの媒体による取材が行われ、「フィクションでありながら自分の内側にある感情と出会う、まるで瞑想をしているかのような特別な映画体験だった」「寓話のようでありながら、誰しもにあてはまるところあって説得力がある」「リアリティがあって感情豊かな台詞が素晴らしい」などと称賛された。

快晴となった12日、劇場前には上映直前まで押し寄せた映画ファンが列をなし、Scotiabank Theater スクリーン2(客席476席)は満席となった。プログラミング・ディレクターのジョバンナ・フルヴィが「『寝ても覚めても』は、独自の優れたスタイルと特別な語り口を持った映画。そして濱口監督はこれからもたくさんの名作を生み出していく監督です」と紹介。盛大な拍手が送られる中、上映後のQ&Aに濱口竜介監督が登壇した。

観客からは、映画化のきっかけや映画にあたってこだわった点についての質問、「(猫の)ジンタンの演技が素晴らしかった」「朝子の行動に驚き、引き込まれた」「串橋(瀬戸康史)の発言によって一気に緊張感が高まるシーンが素晴らしかった」などの感想が上がった。

英語タイトル(『AsakoI&II』)について濱口監督は、日本語のタイトルが『寝ても覚めても』で、これが“寝ても覚めても、あなたのことを24時間考える”という、より恋愛映画らしいタイトルであること、英語タイトルはワールドセールスを担当するmk によって付けられたものだが、ヒロイン朝子の第1章、第2章という彼女の変化を表すタイトルとして間違っていないなと思ったことを明かした。

また、東出昌大演じる予測不能な行動をする麦のキャラクターの背景には何かあるのか?という質問に対して、原作者の柴崎友香から「実は麦は宇宙人で地球で感情を学んでいる途中」という裏設定があると聞いて腑に落ちた、と暴露し会場を大いに湧かせた。

Q&Aが終わった後も、監督に感想を伝えようと行列ができ、サイン攻めに合う監督の姿はさながらスターのよう。中には、「カンヌで『寝ても覚めても』を観た友人から、“とにかくよかったから絶対に観て!”と言われて来て、非常に感動しました」という観客もおり、すでに国際的に口コミが広がっていることが感じられた。カンヌ国際映画祭でお披露目された本作は今回のトロントでの北米プレミアを経て、今後もニューヨーク映画祭、釜山国際映画祭、サンセバスチャン国際映画祭と世界中を回る

公式上映直後の濱口竜介監督コメント

満員の熱気が溢れた会場での上映、終映後も止まない熱狂を感じました。Q&Aでは、観客のみなさんが、映画をしっかりと観てくださっていることが伝わってきて嬉しかったです。ここトロントから、『寝ても覚めても』が北米に広がっていってくれたらと思います。

惹かれあう亮平と朝子―。朝子がかつて運命的な恋に落ちた恋人・麦と、亮平は顔がそっくりだった―。本作は、二人の同じ顔をした男とその間で揺れ動く女の物語。主演・東出昌大が、同じ顔をしていながらもタイプの違う男・亮平と麦という一人二役に初めて挑み、唐田えりかがヒロイン・朝子を演じる。メガホンをとるのは、前作『ハッピーアワー』でその名を世界に轟かせた気鋭・濱口竜介監督。第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、海外メディアに絶賛された。

映画『寝ても覚めても』は全国で公開中!
監督:濱口竜介
原作:柴崎友香「寝ても覚めても」(河出書房新社刊)
出演:東出昌大、唐田えりか、瀬戸康史、山下リオ、伊藤沙莉、渡辺大知(黒猫チェルシー)/仲本工事/田中美佐子
配給:ビターズ・エンド、エレファントハウス
©2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS