コムアイ、バリー・ジェンキンス監督


『ビール・ストリートの恋人たち』の公開記念イベントが2月13日(水)にTOHOシネマズ シャンテで行われ、バリー・ジェンキンス監督、水曜日のカンパネラのコムアイが登壇した。

2月25日[日本時間]に発表を控える第91回アカデミー賞で、助演女優賞(レジーナ・キング)や脚色賞、作曲賞にノミネートされている本作。今回、そのアカデミー賞の発表を前に、初来日を果たしたバリー・ジェンキンス監督と、「水曜日のカンパネラ」のボーカルとして活躍するコムアイが登壇した。

ジェンキンス監督は、本作のアカデミー賞へのノミネートについて「ワクワクしています」と笑顔でこたえつつ、「(前作では)いろいろありましたから・・・(笑)」と、前作『ムーンライト』が作品賞を受賞した際の発表ミスを挙げ、会場の笑いを誘った。

コムアイは、本作を鑑賞して「人々の厳しさ、重くのしかかってくるもの。一方でっ立ち向かっていく愛と生命力」をポイントに挙げ、「二つの気持ちがミルフィーユみたいに交互に伝わってくる」とコメント。さらに「ロマンティックでもあるし、苦しくなる気持ちもある」と感想を伝えた。そんな本作の物語を、ジェンキンス監督は「(通常は)恋愛を描くときは愛だけを描くことが多い。この作品に惹かれたのは、人種問題が文脈として描かれているラブストーリーだったから」と原作の素晴らしさを明かした。

アーティストとして活躍するコムアイは、「最初の30秒で、この監督がいかに音楽を大事にして撮っているかが分かる」とコメントすると、ジェンキンス監督は「このことを指摘してくれたのはコムアイさんが初めて」と笑顔を見せ、「最初は全部ジャズと考えていたのですが、編集中に違うなと思い始めた。映画の音楽は、“そういう感情になってくれ”と感情を押し付けてしまうことが多々あるのですが、作曲を担当したニコラスは役者が何を感じているか、伝えようとしているかを増幅してくれる」と音楽へのこだわりを明かした。

また、本作の脚本は、前作『ムーンライト』と合わせて、ブリュッセルとベルリンにこもって書いたというジェンキンス監督。その理由について「アジアは遠すぎたのでヨーロッパにしました」と冗談を交えつつ、「(本作の原作者である)ジェイムズ・ボールドウィンは旅をしながら執筆活動をした。自分も旅をしながら書きたいという時期でヨーロッパに向かった」と明かし、さらに「キャリアや業界からも解放されて書かなきゃいけないと感じた」と、映画化権の取得よりも先に書き上げたことを明かした。

さらに、本作では「70年代にハーレムで活躍した写真家がインスピレーションになっている」と明かしつつ、「ただ、小津安二郎の『東京物語』に影響されている部分もある。キャラクターが観客に目線を合わせる部分があるが、『東京物語』を見て初めて知った手法」と明かした。そのことから、「(本作では)映画の中で目を合わせることができるので、アフリカ系アメリカ人の経験を味わっていただければと思います。これは映画の贈り物だと思います。みなさんを招待しているので、足を踏み入れてもらえれば」と本作の楽しみ方を語った。

本作は、1970年代のNYに生きる若きカップルの愛の物語。前作『ムーンライト』でアカデミー賞作品賞に輝いたバリー・ジェンキンス監督がずっと映画化を夢見ていたジェイムズ・ボールドウィン原作「ビール・ストリートの恋人たち」(早川書房刊)を基に、愛よりも、もっと深い“運命”で結ばれた、恋人たちのラブ・ストーリーを描き出した。

【取材・写真・文/編集部】

映画『ビール・ストリートの恋人たち』は2019年2月22日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開!
監督・脚本:バリー・ジェンキンス
原作:ジェイムズ・ボールドウィン「ビール・ストリートの恋人たち」(川副智子訳、早川書房より近刊)
出演:キキ・レイン、ステファン・ジェームス、レジーナ・キング、ディエゴ・ルナ、エド・スクライン、デイヴ・フランコ、ペドロ・パスカル
配給:ロングライド
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