フランスの作家ロマン・ガリのベストセラー自伝小説を映画化した『母との約束、250通の手紙』は、破天荒すぎる母親の“幸せのための啓発教育が見どころだ。

フランスの伝説の文豪ロマン・ガリ。外交官、映画監督、そしてプライベートでは『勝手にしやがれ』の女優ジーン・セバーグの夫と複数の顔を持ち、最後は拳銃自殺を遂げた。その波乱万丈で数奇な人生を描いた自伝『夜明けの約束』を、本作でセザール賞にノミネートされたシャルロット・ゲンズブールと、俊英ピエール・ニネという豪華共演で映画化。母ニーナの強すぎる期待と愛情を一心に受けて育ったロマンは、その溺愛の重圧にあえぎながらも、母の途方もない夢を叶えようと日々邁進する。戦地で戦っているときも、病床で苦しんでいるときも、母からの激励の手紙は毎週届き続けた。しかし、その250通にも及ぶ手紙には思いもしない秘密が隠されていたのだった・・・。第二次世界大戦下の激動の時代に翻弄されながらも、強すぎるほどの絆で、互いの存在だけを頼りに生き抜いた親子の愛に心揺さぶられる感動作。

本作の見どころは、なんといっても、その破天荒な母親だろう。女手ひとつで息子を育て、周囲からの蔑視、貧困に対して攻撃的なまでの姿勢で立ち向かう。お金を稼ぐためなら、詐欺まがいの商売もへっちゃら。ツケを踏み倒そうとする富豪夫人には屋敷へ乗り込み、罵倒も辞さない。すべては、息子との生活を守るため。息子に最良の教育を施すため。息子は将来、フランスに出て大物になる。大作家になって世界的に有名になる。そう信じてやまない。それでいて、そんな息子への愛情と信頼を、単なる甘やかしに終わらせない。

息子がつまらない町娘に引っかかっていると知るや、「あんな小娘なんか忘れなさい。大使になれば世界中の美女が寄ってくる」。街の子どもたちにいじめられて帰宅するのを見るや、「男が戦う理由は3つだけ。女、名誉、フランス」「今度、母さんが侮辱されたら、担架に乗って帰ってきなさい」「母さんを守ることに命をかけなさい」などと一喝する。戦地までも毎週のように手紙を送り、いかなる時にでも小説を書けと叱咤激励を飛ばし続ける。

人によっては支配的なモンスター・マザーに映る瞬間もあるだろうか。しかし、怪物的というより極めて人間的であることに純粋であった母親の在り方は、大なり小なり、きっと誰の身にも覚えがある親の思い出ではないか。実際に、本作の主人公は作家として数々のベストセラーを発売し、ロサンゼルス総領事となり、『勝手にしやがれ』の女優ジーン・セバーグと結婚するなど、大成功をおさめる。あの温もりが、厳しさがあって、はじめて今の自分がいる。あらためて親の大切さ、親への感謝の気持ちを実感できる真実の愛の物語がここに誕生した。

映画『母との約束、250通の手紙』は2020年1月31日(金)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国で公開!
監督・脚本:エリック・バルビエ
出演:ピエール・ニネ、シャルロット・ゲンズブール、ディディエ・ブルドン、ジャン=ピエール・ダルッサン 
配給:松竹
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