『人数の町』の公開記念リモート舞台挨拶が9月5日(土)に都内で行われ、中村倫也、石橋静河、吉田萌果、荒木伸二監督が登壇した。

少しずつ解禁されていった物語の要素が謎を呼び、その不思議な設定が話題となっている本作。中でも印象に残っているシーンについて中村は「プールのシーンかな。みんな同じ水着を着ているけれど、個性が出るシーン。町での撮影から、プールでの撮影になったので、そういう場所ってなんか気持ちがほぐれますよね。不思議な感覚というか。心地いい(空間)けど、芝居で会話をするとギョッとするという、不思議なバランスの空間でした。(芝居を)やっていて楽しいって感じました。そのへんの構成というのは、荒木監督の巧みなところなんですよね。ニクいね、ってなります」と称賛。これに荒木監督が「ありがとうございます」とお礼を言うと、中村は「そのへん、ニクいねってなりますね」と再び褒め、さらに荒木監督が「ありがとうございます」と繰り返し、「ありがとうございます」というフレーズがキーワードになりそうなことを予感させるやりとりを見せた。

石橋は「どのシーンもすごい不気味でおもしろかったです。個人的には私が演じた紅子が妹を探す旅を始めるときに、病院に行くシーンが印象に残っています」とコメントし、「病院に行くシーンというとても日常の世界なのに、すごく不穏な空気が流れている。そこから、誰を信じていいのか、誰が嘘をついているのかと考えて悩んで行く。おもしろいシーンだったなと思います」と説明。ここで荒木監督がすかさず「ありがとうございます」と応えて笑いを誘った。

タイトルにちなんで「もし町長になって好きな町を作るとしたら、どんな町を作りたい?」という質問に、中村は「公園をいっぱい作って、ラベンダーをたくさん植えて・・・。そこで夜な夜なみんなで踊り明かして。フォークギター片手にジョン・レノンを歌いたいです」と答え、「お前らが“イマジン”しろという世界を作りたいです」とジョン・レノンの名曲にちなんで独特の表現で説明。続けて「(質問への回答が)深いですね~」と自身のコメントに関心した様子を見せながら「ありがとうございます」で締めくくるという、回答、感想、締めを一人で対応するトーク術で魅了した。

石橋は「宇宙飛行士が訓練しているときのような、(人が)浮遊する町を作りたい」と回答。中村が「町全部が無重力空間ってこと?」と質問すると、「はい!」と元気よく返答した石橋。中村が「やりたいの?」と顔を覗き込むような動きを見せると、石橋は「1日くらいならって思います」と恥ずかしそうに笑い、中村が「町長だって言ってるのに1日なの?」とツッコミを入れると、石橋は「1日限定で」と笑顔。「(1日)署長とかならあるけれどね」と考え込む様子を見せる中村に「1日じゃダメですかね?」という石橋の質問に「いや、できるって。諦めんなよ」と鼓舞する中村。これに対し石橋は「あきらめずに頑張ります」と気合十分。するとすかさず、中村が「協力するよ」とフォローする息の合ったやりとりを見せた。

しかし、中村自身は石橋構想の浮遊空間の町には「行かないです」と宣言。その理由は「楽しそうだけど、維持するのにすごいお金がかかりそうだから」と答え、「全面NASAを味方につけるしかないね、そうNASAれ!」とジョークを飛ばし、笑いを誘った。

イベントでは、Twitterで募集した質問に答えるコーナーが用意され、「ルールがわからないものに挑戦するとき、バイブル(説明書)は熟読するタイプなのか、実戦で試していくタイプなのか」という質問に、中村、石橋、荒木監督は声を揃えて「実戦派!」と回答。中村が「こういう仕事をしていると、そういう場面に出くわすことが多いですよね」とコメントし、「やってみてから考えるみたいなところがありますね」と、撮影現場では臨機応変な対応力が求められることを明かした。

さらにイベントでは、モスクワ国際映画祭、バンクーバー国際映画祭への正式招待作品として選出されたことが発表。荒木監督は、「カナダとロシア、行きたいです。バンクーバーとモスクワ行きたいです。パスポート取りに行かないと」と語り、「(気になるところ)そこですか?」と中村からツッコミが入る場面も。

最後に石橋は「監督が今まで生きてきて、考えて来たことがそのまま作品になっているのだと思います。そんな嘘がない作品に出れることがうれしいです。映画はそうあるべきだと思うので、そういう作品に参加できてうれしいし、観た人にも、これから観る人もそんなところを楽しんでほしいと思います」、中村は「いろいろな作品に関わらせてもらって、(自分が感じたことなどを)考えてコメントする場面もたくさんあります。でも、この作品は、それぞれの反応、感じること、記憶に残るポイント、家に帰って思い出すポイントが違ってくる作品です。この映画を観ることは、お金と時間を払っていただいて、ゲットした自由だと思うので、何度か思い返しながら、楽しんでいただければと思います。ん?萌果が僕を見て笑っています。バカにされているのかな?萌果もなんか言う?」と吉田との可愛いやりとりを見せながらイベントは幕を閉じた。

本作は、衣食住が保証され、セックスで快楽を貪る毎日を送ることができ、出入りも自由だが、決して離れることはできない、という謎の“町”を舞台に、借金で首の回らなくなった蒼山(中村倫也)が、その“町”の住人となり、そこで出会う人々との交流を経て“町”の謎に迫っていく新感覚のディストピア・ミステリー。2017年に発表された第1回木下グループ新人監督賞で、241本の中から準グランプリに選ばれた。主演に中村倫也を迎え、石橋静河、立花恵理、山中聡などフレッシュな面々が顔を揃える。監督・脚本は荒木伸二が初の長編映画に挑戦する。

映画『人数の町』は2020年9月4日(金)より新宿武蔵野館ほか全国で公開!
出演:中村倫也、石橋静河、立花恵理、橋野純平、植村宏司、菅野莉央、松浦祐也、草野イニ、川村紗也、柳英里紗/山中聡
配給:キノフィルムズ
©2020「人数の町」製作委員会