松尾大輔監督


消えた二人の少女を探す二人の姉…途切れた糸を追って深淵に迷い込む――『偽りのないhappy end』の松尾大輔監督のオフィシャルインタビューと、各界の著名人からのコメントが到着した。

田舎で一人で暮らしていた妹が東京で自分と一緒に住み始めた途端に行方不明になってしまったエイミと、同じく妹が行方不明のヒヨリが、共に犯人を捜すミステリーをベースに、姉二人の心の揺れを丁寧に描く。主演は、NHK連続テレビ小説「なつぞら」でドラマデビューし、CMを中心に活躍中の鳴海唯と、マドンナのバックダンサーとしてワールドツアーに約1年半同行し、舞台Rock Opera「R&J」ではヒロイン役を演じた仲万美。エイミの妹・ユウ役を、『由宇子の天秤』で注目を集める河合優実がミステリアスに演じる。大都会・東京と、美しい琵琶湖がある滋賀を舞台に、いなくなって初めて自分は妹のことを何も知らなかったと気づき、必死に真実を暴こうとする姉二人が辿り着く先は…。

今回、各界の著名人からのコメントが到着した。

戸塚純貴(俳優)

引き裂かれそうな残酷さに危うさ、信じがたい現実に冷たさを感じた。
シーンの移り変わりの流れゆく景色に登場人物の心の機微も重なってこの作品の持つ深い温もりを感じた。

駒井蓮(俳優)

彼女たちはまるで、消えたかった時間も消したい時間も何処にやってしまったのか自分でさえ分からず、いつの間にか岸に打ち上げられた波の一部のようでした。ふとした時に、この不安定で深い波を私も思い出して、愛おしくなるのだと思います。

テラシマユウカ(GO TO THE BEDS)

点と点で存在していた6人の女性たちの物語が明かされる程、複雑に絡まる解けない糸のように、それぞれの傷ついた想いが深く交錯する。
よく知っているようで実は何も知らない身近な存在のあの子の顔が浮かび、まるで深い湖の底へと沈んでいくように息が詰まる。
人間の脆さと儚さを知る物語。

坂部三樹郎(ファッションデザイナー)

映画の中の時間の流れ方が僕たちが今生きているものとはちがったものに思えました。
もっと心の深いところでの交流が行われてるようなそんな感覚の映画でした。携帯電話をあまり使わないことで現実との向き合い方が違う気がします。

松尾大輔監督 オフィシャルインタビュー

――本作制作の経緯をお教えください。
2019年の6月に、僕が助監督として参加しようとしていた映画が中止になって、その空いた期間に脚本を執筆しました。出来上がった時に、なるべく早く映画にしたと思い、この企画が動き始めました。
――舞台を東京と滋賀にした理由を教えてください。
脚本を書く2年位前に一度滋賀に行ったことがあって、その滋賀で、たまたま行方不明のチラシをみたんです。女性ではなかったんですけれど、「琵琶湖で行方不明になった」というチラシがずっとひっかかっていて、このストーリーで映画を作るとなった時に、まず滋賀が思い浮かびました。
――2011年の『ヒミズ』から10年間、園子温監督のほとんどの作品の助監督を務め、園監督に師事してきたそうですが、園監督の助監督をやってきたことで本作に活きたことはありますか?
園さんの前に僕がついていた監督たちは、感情やキャラクターについて説明したり、場面場面でキャストと深く話すというのが主流だったんですけれど、園さんについた時に、細かく説明して作り上げていくのではなくて、「その役者がその場面に対して向かう気持ちや現場での芝居に対して監督がリアクションする」という、役者が持ってきたものを大切にして盛り上げていくという演出をされていて、「こういう演出があるんだ。もしかしたら自分に合っているのかもしれない」と思いました。
――エイミの妹・ユウが、「言っていないことなんていっぱいある」と言ってすぐ行方不明になり、「妹は自殺なんてしない」と言っていたヒヨリが、実は妹のことはわからないというのが、家族や親しい友人などが行方不明になってから直面する現実を描いているように思いましたが、そういう皮肉に日頃からひっかかっていたのでしょうか?
そうですね。家族であっても仲が良い人であっても、みんな知っているようで知らない、当たり前のように知っていると決めつけて話すことが多いというのはあると思います。親しい人が自分が思っていない行動をした時に、「自分はこの人のことを知らないんじゃないか」と思う瞬間が日々あったので、そこを取り上げました。
――兄弟・姉妹についてどのような想いがあるのでしょうか?
姉妹であったり友人であったり、古くから知っているけれど最近会わなくなった人であったりに対して、「あの人どうしているのかな」「幸せにやっているのかな」「元気でやっているのかな」と気がかりなことがあっても、連絡しないで、妹が来るなどある瞬間にそれが解決した気になってしまう。そういうところを描きました。姉妹としたのは、肉親にすることによって、自分から切らなければ絶対どこかで繋がっているだろうという安心感を持った人間という設定にしたかったからです。
――エイミが過去のトラウマに直面するシーンなど、迫真の演技でしたが、鳴海唯さんのキャスティング理由は?
色んな人のお芝居した映像を見たんですけれど、鳴海さんは、「この子は、僕が求めている芝居が出来るかもな」というところがあり、キャスティングさせていただきました。
――ヒヨリが記者と湖で対峙するシーンや下着姿でナイフで脅すシーンはすごい迫力でしたが、仲万美さんのキャスティング理由は?
「ダンスをやっている方は芝居も上手い」というのが僕の中でありました。キャスティングディレクターから提案があった時に映像を見たのですが、「絶対何か面白いことをしてくれるだろうな」というのがあって、キャスティングさせていただきました。撮影では、自分の中にあるものをぶつけていただきました。
――エイミの妹・ユウ役を、『由宇子の天秤』で注目を集める河合優実さんがミステリアスに演じていますが、キャスティング理由は?
ユウが一番芝居として難しいというか、役と寄り添っていない人がやるのは難しいと思ったので、どういう人なら表に出さない芝居をできるかと色々探しました。河合さんがダンスをしている動画を観た時、あまり表情を表に出さずにただ踊っているんだけれど、節目にちょっと感情が出るような表情があって、そのイメージがユウに合って、「この子だったらできるだろう」とキャスティングしました。
――ユウがカーテン越しの影でしか見えないのがミステリアスでよかったですが、ユウがエイミの部屋をカーテンで仕切るというアイデアはどこから生まれましたか?
二人で暮らす中で、分かち合えない隔りみたいなものをどこかで視覚的に表現しなくてはと思い、思いつきました。
――本作の見どころはどこだと思いますか?
脚本自体は誰からも指示を受けていないというか、プロデューサーも出資者もいないので、エンターテイメントに寄せることもできたんですけれど、あえてそれはせずに、自分の思う「映画とは何なのか」というのを描きました。他の映画だと「こう終わってしまうだろうな」という着地点が見えると思うんですけれど、この映画は着地点は見えないままどんどん進んでいくのが、他の映画と違う見所だと思います。
――読者にメッセージをお願いいたします。
決して全員が全員ではないですが、この映画に出会えて、この映画が存在していて良かったと思う方が、おこがましいですが必ずいると思っています。なので是非、色んな方に観て頂き出会って頂けたら幸いです。

『偽りのないhappy end』は2021年12月17日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国で順次公開!
監督・脚本:松尾大輔
出演:鳴海唯、仲万美、河合優実、田畑志真、小林竜樹、奥野瑛太、川島潤哉、三島あよな、見上愛、メドウズ舞良、藤井千帆、野村啓介、橋本一郎、谷風作、永井ちひろ、鈴木まりこ、古賀勇希、安田博紀、原知也、宮倉佳也、笹川椛音、白石優愛、土屋直子、馬渕英里何、カトウシンスケ
配給:アルミード
© 2020 daisuke matsuo