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第35回東京国際映画祭 コンペティション部門出品作品『テルアビブ・ベイルート』は、レバノンとイスラエルで生きるふたりの女性の半生を描いたロードムービー。

10月24日(月)~11月2日(水)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区地区で開催される第35回東京国際映画祭。コンペティション部門は、2022年1月以降に完成した長編映画を対象に、107の国と地域から応募された1,695本の中から、厳正な審査を経た15本の作品が期間中に上映される。

ポスターにはテルアビブとベイルートと書かれた間の道を車で走っていくふたりの女性の姿。レバノンとイスラエルで生きるふたりの女性の半生を描いたロードムービー。タイトルのテルアビブはイスラエル人口第2位の都市の地名であり、ベイルートはレバノンの首都。

イスラム系組織ヒズボラが実権を握った2000年のレバノン。レバノン人兵のヨシィはヒズボラに対する反対工作を行っていた友人フアドとその娘タニヤをイスラエルに亡命させる。一方でレバノンへ出征した夫ヨシィの帰りを何年も待っていた妻ミリアム。ひとり息子もミリアムの反対を押し切り夫と同じ兵士という道を進み、消息を経ってしまった。息子を探すため国境へ向かうことを決意し、偶然出会ったタニヤに道案内を頼む。1980年代のイスラエルとレバノン間の紛争を背景に、兵士の娘、兵士の妻であり母というふたりの女性の心中を描いている。

フィクションではあるが、これは昔話でもなく今を生きる私たちと同時間での出来事ということを理解しなければならない。ふたりの女性がどう生きてきたのか断片的ではあるが、彼女たちが守ってきたものや失ったものの大きさがわかる。ふたりが過ごした時間を映し出していた時間は短かったが、心を通わせ、つかの間の深い友情を感じた。彼女たちの描かれていない部分も観客に想像させるような、幸せであってほしいと願わせるようなそんな作品だった。

監督は『故郷よ』(11)で知られるイスラエル出身の女性監督ミハル・ボガニム。撮影は全編パンデミック下のキプロスで行われた。

【文/片岡由布子】

第35回東京国際映画祭は2022年10月24日(月)~11月2日(水)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催
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