阿部寛主演の日本×台湾共同製作映画『キャンドルスティック』の米倉強太監督が、「影響を受けた監督」藤井道人との対談が実現した。
天才ハッカー・野原(阿部寛)は、ハッキングによる株価操作の罪で刑務所に収監されていた。そんな彼の前に現れたのはFXトレーダーの杏子(菜々緒)。一方、サイバー大国・台湾のリンネ(アリッサ・チア)は、野原の卓越した技術を利用し、FX市場で巨額の利益を得ようと企む。その作戦とは、金融取引の番人である「AIを騙す」こと――。決行日は、日本に新天皇が誕生し、金融機関が最も警戒を緩める2019年5月某日。杏子は野原に、自らと同じ「共感覚」を感じ取り、計画をサポートすることを決意。そして、かつての仲間たちも次々と呼び戻されていくのだが…。本作で描かれるのは、「騙し、騙され」金が巡る世界の縮図。日本、台湾、イラン、ハワイ――世界4か国6都市を舞台に、美しき男女が仕掛けるスリルと策略が交錯するマネーサスペンス。罠にはめられ、すべてを失った元・天才ホワイトハッカーで“AIを騙す”計画の発案者・野原を演じるのは阿部寛。FXトレーダーで、野原にも自分と同じ共感覚を感じ、計画をサポートする杏子を菜々緒、杏子の元夫で数学者の功を津田健次郎が演じる。
元「MEN'S NON-NO」専属モデルであり、GUCCIやユニクロなどの広告映像を手がけてきた映像作家・米倉強太が、映画監督として新たな一歩を踏み出す。長編映画デビュー作『キャンドルスティック』が、7月4日より全国公開される。米倉監督が影響を受けたのが、『新聞記者』『余命10年』『青春18×2 君へと続く道』など話題作を次々と手がけ、第48回日本アカデミー賞で最優秀監督賞を受賞した藤井道人監督。ともに30代の2人は、デビュー時の経験や映画製作における哲学を語り合った。
米倉監督が長編映画に挑むきっかけとなったのは、パリでの展示で出会ったプロデューサー・小椋悟氏のひと声だった。初期段階では、中国の「元」が日本の「円」を飲み込むという、よりスケールの大きな構想だったという。撮影は難航を極め、阿部寛が出演を決めたのはクランクインの約4か月前。台湾やイランのキャストが未確定のまま、相手役のいないシーンでは、阿部はストイックに演じ切り「現場の緊張感を支えてくれた」(米倉)。そんな状況で始まった作品の監督に抜擢された米倉に対して「もし自分がこの企画でデビューしていたら、きっと無理だった。それくらい大変そうな企画ですよね。」と驚きつつ、自信のデビュー作『オー!ファーザー』での経験を回顧。「当初は右も左もわからず苦しんで、その後は一度自主映画に戻った」と語り、米倉監督の苦労に思いを馳せた。
『新聞記者』などを通じて“社会派”のイメージも強い藤井監督だが、自身は「インディーズという概念はもはや精神的なもの」と語る。全スタッフが責任感を持って作品に向き合うことが「真のインディーズ」だという。藤井は「メジャー作品でも連帯感を持てる現場づくりが必要」とし「自主映画のような熱量が、大作現場にも求められる時代になっている」と語った。米倉は『キャンドルスティック』では自主映画から共に歩んできたスタッフと制作することができたと言い「全員が“自分事”として作品に取り組めた」と振り返るとともに自信をのぞかせた。
藤井は「メジャーとインディーズの境界は曖昧になっているが、現実問題としてインディーズでは食べていけない」と警鐘を鳴らす。「精神性ではインディーズでも、経済的にはメジャーの枠組みでやる必要がある」と語り、生活とクオリティの両立を強く意識しているという。デビュー作後に一時インディーズに戻った経験も踏まえ、「プロデュース力や宣伝との連携も、監督の重要な仕事」とも述べた。米倉は「藤井監督の作品は“伝える力”に優れている」とし、『新聞記者』のモンタージュに感銘を受けたという。藤井はその力の源について「自主映画時代に鍛えられた」「伝わるかどうかは常に自分が一番厳しく見る」と語った。藤井監督のこだわりに感銘を受けたという米倉は、藤井の現場をいつか見学したいと希望。藤井も「『キャンドルスティック』が米倉監督の映画人生の始まりになる。賛否は必ずあるが、変化に負けず続けてほしい」と熱いエールを送った。
デビュー作から非凡な実力を発揮した米倉が、初長編作品としてワールドワイドな規模で展開する本作。描かれるのは、騙し騙され、金が回る世界の縮図。美しき男と女たちのスリルと策略が交錯する新時代の“コンゲーム”だ。ひりひりした予測不可能な展開に戦慄し、誰もがあっと驚く結末は劇場で―。
『キャンドルスティック』は2025年7月4日(金)より新宿バルト9ほか全国で公開
監督:米倉強太
出演:阿部寛、菜々緒、アリッサ・チア、サヘル・ローズ、津田健次郎、リン・ボーホン、YOUNG DAIS、マフティ・ホセイン・シルディ、デイヴィッド・リッジス、タン・ヨンシュー
配給:ティ・ジョイ
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