『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』の初日舞台挨拶が6月27日(金)にユナイテッド・シネマ豊洲で行なわれ、綾野剛、柴咲コウ、亀梨和也、三池崇史監督が登壇した。

2003年、小学校教諭・薮下誠一(綾野剛)は、保護者・氷室律子(柴咲コウ)に児童・氷室拓翔への体罰で告発された。体罰とはものの言いようで、その内容は聞くに耐えない虐めだった。20年前、日本で初めて教師による児童への虐めが認定された体罰事件。報道をきっかけに、担当教輸は『史上最悪の殺人教師』と呼ばれ、停職処分になる。児童側を擁護する550人の大弁護団が結成され、民事裁判へと発展。しかし、法廷は担当教諭の完全否認から幕を開けるのであった。第6回新潮ドキュメント賞受賞、福田ますみのルポルタージュ『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮文庫刊)を映画化。主人公の薮下誠一を演じるのは綾野剛。共演には柴咲コウ、亀梨和也、木村文乃、大倉孝二、迫田孝也、光石研、北村一輝、小林薫ら豪華キャストが勢揃いしている。監督は三池崇史。

イベントでは、SNSなどで「『でっちあげ』は気になるけれど、怖そうで観るのを迷う」という声が上がっていることが紹介され、そんな観客の背中を押す言葉を求められた登壇者たち。綾野は、迷っている観客に向けて「映画も出会いの一つ」と話し、「映画は、一つの時間の中に、いろんな1秒を体感できる。これこそが映画の醍醐味であったり、エンタメとして必要な要素だと思っています」と力説。「まだ体感したことのないこの1秒に出会いに来ていただいた暁には、129分後、皆さんにとってどんな1秒を生きていこうかという、新たな再発見になる作品である可能性が高いと僕は思っていますので、ぜひ、まず出会って触れてみてもらえたら。決して怖い作品では…ありません」と語った。その一方で「確かに氷室さんの目は…。コウさんは優しいんですけど」と付け加え、会場は笑いに包まれた。

また、「まさしく出会っていただきたい」という亀梨は「キャストの皆さんの本気度もそうですし。ぜひ受け取っていただきたい」と語り、「僕自身も見た後に、改めて景色がクリアに見えてくる。周りだけではなくて自分自身の、人間としての強さ、弱さも感じた部分ではあるので。決して怖い作品ではありません」とアピールした。

柴咲は「私自身は割と物事をはっきり言うタイプで、言い過ぎる所もあるんですけど」と前置きしつつ、「事実っていうのは何なのかとか、その側面しか見ていないのに『そうだろう』と決めつけてしまうところが私の中にもあるな、と」と、自身を省みるきっかけになったと明かし、「自分たちが一体何を根拠に判断しているのか、良いきっかけをもらう気もすると思います」と、作品が持つ深いテーマに言及した。

三池監督は、本作の“怖さ”の本質について「怖いのは怖いんですけど、その怖さの根っこにあるのが、悪魔が出てきたり、犯罪者が出てきたりするわけじゃなくて、全員普通に暮らしてる普通の人間たちなんです」と語り、「その普通の人々が、それぞれ家庭であるとか何かを守って生きていて、そのちょっとしたボタンの掛け違いで被害者にもなっていくし、一番怖いのは、知らないうちに加害者になっていること。そういう点では怖い作品かも」と、誰もが当事者になり得る恐怖を描いていると明かした。

さらに亀梨は「観る前の自分には戻れないというか、これは僕自身としても観終わった後に思ったところで。何か生きていくということに関して気づきがもらえる映画だと思います」と断言し、「何かちょっとモヤモヤということも含めて、その感覚をたくさんの方に共有してもらいながら、この輪が広がっていってくれたら嬉しいなと思いますので、ぜひ大きいスクリーンで、(柴咲演じる)律子さんの目に飲まれてください」と呼びかけた。

柴咲は、この日の自身の衣装に触れ、「黒いんですけど、中は白いわけですよね。だから、黒だと思ってたものが白だったっていうこともあり、一面じゃわからない内面というものが、人間100人いれば100通りの生き方、捉え方があり、感情の出し方もある。そういった想像力を培うことの大切さを、出演しても、できた作品を観ても学んだ部分でもあるので、そういった部分を捉えていただけたら嬉しいなと思います」とコメント。

そして綾野は「この映画の楽しい見方」として、「初めの10分は、僕もすごくワクワクして観たんです。すごくジェットコースターで、すごい勢いで物語が始まる。そのスピード感にちょっとワクワクしちゃう感じがあると思うんです」と紹介しつつ、「どうこの作品を正しく見ようかっていう必要は僕はないと思っていて、一つの映画として、エンタメとして、ただただまずこの映像やお芝居やシチュエーションをぜひ楽しんでいただきながら観ていただいて」と続け、「最後終わった後に持ち帰っていただいた時に、初めてこの作品は育っていくというか。皆さんが最後にこの作品を育ててくださる最大の共演者であるので、ぜひそういうところも含めて、最後まで楽しんでください」とメッセージを送った。

【写真・文/編集部】

『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』は全国で公開中
監督:三池崇史
出演:綾野剛、柴咲コウ
 亀梨和也
 大倉孝二、小澤征悦、髙嶋政宏、迫田孝也
 安藤玉恵、美村里江、峯村リエ、東野絢香、飯田基祐、三浦綺羅
 木村文乃、光石研、北村一輝
 小林薫
配給:東映
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