2003年、全国に衝撃を与えた事件を追った名ルポルタージュを映画化した『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』の公開記念予告映像と場面写真が解禁された。

2003年、小学校教諭・薮下誠一(綾野剛)は、保護者・氷室律子(柴咲コウ)に児童・氷室拓翔への体罰で告発された。体罰とはものの言いようで、その内容は聞くに耐えない虐めだった。20年前、日本で初めて教師による児童への虐めが認定された体罰事件。報道をきっかけに、担当教輸は『史上最悪の殺人教師』と呼ばれ、停職処分になる。児童側を擁護する550人の大弁護団が結成され、民事裁判へと発展。しかし、法廷は担当教諭の完全否認から幕を開けるのであった。第6回新潮ドキュメント賞受賞、福田ますみのルポルタージュ『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮文庫刊)を映画化。主人公の薮下誠一を演じるのは綾野剛。共演には柴咲コウ、亀梨和也、木村文乃、大倉孝二、迫田孝也、光石研、北村一輝、小林薫ら豪華キャストが勢揃いしている。監督は三池崇史。

今回解禁された公開記念予告映像の冒頭では週刊誌のページに薮下の実名がはっきりと記載され、テレビからは「悪魔のような教師」「体罰だけでなく、人種差別、自殺まで強要」と責め立てるアナウンサーの声が聞こえてくる。「虐めを認めてましたよね?」と嫌悪感をあらわにする教頭、「完全にクロですよ、この教師」と確信する週刊誌記者、日本で初めてとなる教師による虐めの認定に声を荒げる教育委員会、体罰したと思うと証言する校長に、それを裏付ける情報を提示する精神科医。

そして、それらをもとに下された薮下への処分に揺るがない自信を見せる、児童側の弁護士。すべての人々は自身の目の前にある情報を、自分が認識している状況を、”正しい”と信じて疑わない。しかしここで「なぜ、それを信じますか?」というメッセージが大きく映し出される。続けて、薮下の弁護を引き受ける弁護士の湯上谷が「そもそもこの事件、リアリティが無いんですよ」と投げかけるのだが、果たして男は殺人教師か、それとも――。

本映像は当事者である薮下と律子の視点が一切含まれず、加熱していく周囲の糾弾とそこに疑問を投げかけるメッセージだけで構成されている。様々な情報が溢れるこの時代、これは決して創られた物語上の出来事ではなく、すべての人が今”信じて”いるものに疑問符を投げかける「真実に基づく、真実を疑う物語」である本作ならではの、心えぐられる映像だ。

公開記念予告映像

併せて解禁された場面写真からも、追い詰められる薮下の様子を垣間見ることができる。誹謗中傷の落書きが散乱する薮下の自宅前に押し寄せる多くのメディアや、出廷してきた薮下を待ち構える報道陣、カメラを構える鳴海と、法廷で主張を繰り広げる湯上谷。自身を取り巻く身に覚えのない状況に翻弄され、怯えと絶望の色を宿した薮下の表情をみて、あなたは今、何を思うだろうか。奇しくも本作の公開日である今日、6月27日はメディアリテラシーの日(※一般社団法人・日本記念日協会認定)。もう一度、目の前にある“真実”を見つめなおしてみると――。

『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』は全国で公開中
監督:三池崇史
出演:綾野剛、柴咲コウ
 亀梨和也
 大倉孝二、小澤征悦、髙嶋政宏、迫田孝也
 安藤玉恵、美村里江、峯村リエ、東野絢香、飯田基祐、三浦綺羅
 木村文乃、光石研、北村一輝
 小林薫
配給:東映
©2007 福田ますみ/新潮社 ©2025「でっちあげ」製作委員会