パワードスーツ、ナノテクノロジーなど――現実社会とも深い結び付きがある科学技術が登場するマーベル作品を紹介

パワードスーツ、ナノテクノロジーなど現実社会とも深い結び付きがある科学技術が登場するマーベル作品を紹介。

“夏”の定番の一つが、小学生の夏休みの課題・自由研究。探求心や好奇心を掘り下げ、学ぶ楽しさを感じられる自由研究のように、近未来的な技術による様々な演出が施されたマーベル作品は、子どもから大人まで見て楽しめるだけではなく、新たな学びの入り口としてもぴったり。今回、現実社会とも深い結び付きがある科学技術が登場するマーベル作品と併せて、現在進行形で行われている開発・研究を紹介する。

常人離れした力を発揮するパワードスーツが現実でも開発中

「アイアンマン」シリーズ天才的な頭脳を持つトニー・スターク（ロバート・ダウニー・Jr.）が、自ら開発したパワードスーツを装着し、アイアンマンとして戦いを繰り広げる「アイアンマン」シリーズ。初のMCU（マーベル・シネマティック・ユニバース）作品として公開された『アイアンマン』（08）では、ある時テロ組織に捕われるも、自らのアイデアでパワードスーツの“マーク1”を開発し、その場を切り抜けることに成功。以降、アベンジャーズのメンバーとしても活動し、彼が開発したスーツは進化を重ね、“マーク85”にまで到達した。常人の肉体であるトニーだが、スーツを身に付けることで、常人離れしたパワーを誇るスティーブ・ロジャース＝キャプテン・アメリカ（クリス・エヴァンス）や、”雷神“ソー（クリス・ヘムズワース）とも肩を並べながら敵へ挑むほどの力を有した。

そんな圧巻の力を発揮するパワードスーツにインスパイアされた作業支援用のウェアラブルロボットの開発・導入が、製造業や建設業、医療現場などで進んでおり、身体への負担軽減や作業効率の向上といった効果をもたらしている。加えて、トニーが開発した人工知能「J.A.R.V.I.S」は、敵の動きを予測し攻撃の戦術を提案するなど、スーツのオペレーション管理を行ったり、世界中のネットワークから情報を収集したりと、頼れる相棒としてトニーをサポート。米国ではこの「J.A.R.V.I.S」もヒントに、複雑なミッション情報を可視化するための機能を搭載した宇宙飛行士用ヘルメットや、救護・防犯を目的として、視界で捉えた映像の物体検出を行うAR機能付きのヘルメットの開発などが現実でも進んでいる。

“瞬時に衣服を装着”できる未来も――

秘境にありながら、世界中のあらゆる技術を凌駕するほどのテクノロジーをもつワカンダ王国。『ブラックパンサー』（18）、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』（22）では、ワカンダの王位を受け継いだティ・チャラ（チャドウィック・ボーズマン）、そして彼の亡き後を継いだシュリ（レティーシャ・ライト）の物語が紡がれてきた。ブラックパンサーは、従来の“スーツを着脱する”方式ではなく、放出されたナノマシンが全身を覆うことで瞬時に変身することができる。

このナノテクノロジー（原子や分子レベルのスケールで物質を操作・制御する技術）は現在、医療や環境の分野で活発に開発が進んでおり、診察機器の小型化による診療技術の高度化や、水中の不純物を高精度で取り除くことができる処理方法の開発などが現実でも進んでいる。さらにマサチューセッツ工科大学では、レーザーを使用して物体を縮小する技術も開発中。「アントマン」シリーズでピム博士が発見した身長を縮小させる“ピム粒子”のように、物質の大きさを自由自在に操れる技術のさらなる開発に期待がかかる。

あらゆるMCU作品の随所で登場する“ホログラム”!スペインでは触れるホログラムの開発も！？

遠方にいる人物の姿を投影して会話をしたり、ホログラムで相手を翻弄したりと、マーベル作品では随所にホログラムが登場する。ホログラムを活用した開発や研究は現実世界でも着々と進行しており、今年の4月にはスペインにあるナバーラ州立大学が、宙に浮かんだ画像を触ったり動かすことができるホログラムの開発に成功。さらに米国では遠隔診療の際に、等身大ホログラムとして医師を患者の前に投影する技術も導入されており、フィクションでの出来事が現実社会にも徐々に浸透しつつある。

最先端の科学技術が随所に散りばめられたマーベル作品の近未来的な描写は、現実世界の研究や開発にも大きな影響を与えることもあり、作中の話が現実でも当たり前になる日も、そう遠くはないかもしれない。気になる作品を選んで、物語に登場する技術を深掘りしてみると、新しい世界が見えてくるかもしれない。