『この夏の星を見る』の公開記念舞台挨拶が7月5日(土)に新宿バルト9で行なわれ、桜田ひより、水沢林太郎、中野有紗、早瀬憩、星乃あんな、河村花、萩原護、秋谷郁甫、増井湖々、安達木乃、蒼井旬、岡部たかし、山元環監督、さらにサプライズゲストとして原作者の辻村深月が登壇した。
2020年、新型コロナウィルスが蔓延したコロナ禍を背景に、登校や部活動が次々と制限され、更には緊急事態宣言に直面し、大人以上に複雑な思いを抱える中高生たちの青春を描いた本作。斬新な映像表現とキャラクター造形の深さに定評があり、映像界を疾走している新進気鋭のアーティスト・山元環が監督を務め、脚本はデリケートな心を真面目に描くだけではなく、物語として昇華させる力量が高水準の実力者・森野マッシュが務める。そして、haruka nakamuraが音楽を担当する。主人公で茨城県立砂浦第三高校の二年生・溪本亜紗を演じるのは桜田ひより。亜紗と同じ茨城県立砂浦第三高校に通う生徒役を水沢林太郎、河村花、増井湖々、安達木乃が演じ、原作小説を執筆する際に取材した茨城県立土浦第三高等学校で本作の撮影が行われ多。また、リモート会議を駆使して同時に天体観測をする競技「オンラインスターキャッチコンテスト」に参加する長崎五島に住む学生を中野有紗、早瀬憩、和田庵、蒼井旬、東京の学生を黒川想矢、星乃あんな、萩原護や秋谷郁甫らネクストブレイクが期待される若き俳優たちが演じる。
イベントが和やかな雰囲気で進み、最後の挨拶へと移る直前、司会者から「実は本日、この方をお呼びしております」という合図とともに原作者の辻村深月がサプライズで登場。会場は拍手に包まれ、キャスト陣も驚きの表情を隠せない様子で、主演の桜田は感極まった様子で辻村を迎えた。
辻村は「朝早い回からこんなにたくさん観に来てくださってありがとうございます。そしてキャストの皆さん、ようやく揃ったところでお会いできて本当に嬉しいです。各キャラクターが本当にお世話になりました」と、温かい言葉を贈った。
突然の出来事に、桜田は「びっくりしました!」と素直な気持ちを吐露。「でも、同時にすごく嬉しかったですし、以前一緒に取材をさせていただいて、辻村先生の思いだったり、私たちからの原作への思いだったりというのをお伝えさせていただいたので……嬉しいです」と、言葉を詰まらせながら喜びを語った。
2020年のコロナ禍を舞台にした本作。辻村は映画化にあたり、「私、これ映像化できないと思っていたんです」と当初の心境を明かし、その最大の理由として「俳優の皆さんにマスクをつけていただかなきゃいけないっていうことでした」と挙げた。しかし、山元環監督をはじめとする制作陣から「だからこそ挑みがいがある」という力強い言葉を受け、映画化が実現した経緯を語った。
完成した作品について「こう見たら、桜田さんをはじめ、皆さんがマスクをしていても目に輝きがあって。目の中に本当に、桜田さんなんて星があって」と、キャスト陣の表現力を絶賛。「その輝きで、マスクをしていても皆さんが今何を思って、どんな気持ちになってっていうことが、より伝わるっていう映画になっていて、もうこの形にしてくださって本当に感謝しかありません」と、制作陣とキャストへの深い感謝を述べた。
また、自身が原作の取材で訪れた茨城の高校で行われた映画の撮影現場にも足を運んだ辻村は「私の書いた砂浦チーム、みんないる!と思って、すごい感動して」と、自らが創り出したキャラクターたちが、まるでずっとそこで生活していたかのように存在している姿に胸を打たれたという。特に高校生たちが天体観測に挑む「スターキャッチ」のシーンについては「原作で私が書いた時以上に、皆さんのこの体幹と身体能力と、ものすごく競技としてかっこいいものになっていて。最初に出てきた感想が『かっこいい』だったんですね」とコメント。「この2020年に青春を送った子たちの頑張りとかに涙をしたりするような気持ちがあるんだろうなと思ってたんですけど、もう涙を超えて、かっこよさに対して拍手を送りたいっていう、敬服するような思いがしました」と、作品が持つ力強さを称えた。
辻村からの言葉を受け、桜田は「本当にあの、それこそさっきおっしゃったスターキャッチコンテストについても、今回の映画では本当にスポーツのような迫力と綺麗を重要視して、それぞれがペアを組んでやっていたり。学校についても、本当に原作に出てくる高校を使わせていただくことなんてなかなかないので、本当に人のぬくもりが残ったままの学校で、実際に使っているものもそのまま生かしで使わせていただいていたので、本当にたくさんの方の協力があってこそのこの映画だなっていう風に思っております」と、撮影当時を振り返り、改めて作品に関わった全ての人々への感謝を示した。
また、辻村は、キャストと監督に向けて「本当にありがとうございました。かっこいい映画にしていただいて」と改めて感謝を伝え、「書いたものがそれ以上の体感を持って見るのが、円華が初めて望遠鏡を覗いて月を見て『あ、本物だ』と思ったのと同じような感動がありました」と、原作を超えた映像体験への喜びを語った。「そうやって作っていただいたものを、小説もそうなんですけど、観てくださる皆さんがいて、初めて映画とか小説は完成するものだと思うので、今日皆さんにこうやって観ていただけたことも本当に嬉しいです。いい作品にしていただいてありがとうございました」と締めくくり、会場は再び温かい拍手に包まれた。
【写真・文/編集部】
『この夏の星を見る』は全国で公開中
監督:山元環
出演:桜田ひより
水沢林太郎、黒川想矢、中野有紗、早瀬憩、星乃あんな
河村花、和田庵、萩原護、秋谷郁甫、増井湖々、安達木乃、蒼井旬
中原果南、工藤遥、小林涼子、上川周作、朝倉あき、堀田茜、近藤芳正
岡部たかし
配給:東映
©2025「この夏の星を見る」製作委員会