石川慶監督×広瀬すず主演『遠い山なみの光』の本予告編、メインビジュアルが解禁された。

2017年にノーベル文学賞を受賞し、「日の名残り」「わたしを離さないで」など、映画化作品でも非常に高い評価を受ける作家カズオ・イシグロが、1982年に綴り、王立文学協会賞を受賞した⻑編小説デビュー作品「遠い山なみの光」。自身の出生地⻑崎を舞台として繰り広げられる本作は、戦後間もない1950年代の⻑崎、そして1980年代のイギリスという、時代と場所を超えて交錯する“記憶”の秘密を紐解いていくヒューマンミステリー作品。監督を務めるのは石川慶。主人公の悦子を務めるのは、抜群の演技力と表現力で映画・ドラマと幅広く活躍する広瀬すず。

今回解禁された本予告編は、本作の原作者カズオ・イシグロの一節から始まる。

人間ははね、ときに他人を欺(あざむ)くためではなく、
自分を騙(だま)し、
困難な真実から目を背けるために嘘をつくんですよ。 (カズオ・イシグロ)

1980年代、イギリスに暮らす悦子は、娘のニキ(カミラ・アイコ)に「ここへ来る前の話を聞かせて、長崎のこと」と、問いかけられる。目の前の娘を見つめながら過去へ思いを馳せる悦子の顔が、30年前、戦後復興期の長崎で暮らしていた頃の自分の記憶と重なっていく。「あんときは、1人で立ってられんかったんです」と戦争直後の自分を振り返る悦子。そして佐知子は「あの辺は原爆でなにもかもふっとんじゃったから、しばらくは本当に大変だった」と、凛とした強さで語る。

悦子のお腹の子を心配し、「君があの日、被爆せんやったとは、本当に良かった」と愛情を見せる夫・二郎(松下洸平)のセリフが続き、最後に二郎の父、緒方(三浦友和)から「二郎はあんたには優しかね?」と温かい言葉を投げかけられる。苦労もありながら幸せな思い出として蘇る長崎の記憶を語る悦子は遠い目をして「素敵な思い出よ」とつぶやく。しかし、そんな母に対してニキはひとこと、「嘘」と言い放つ。

そこから画面は一転、様相を変える。「私がついた嘘」という印象的な文字と共に、人が変わったかのような鋭い表情の悦子。「私、佐知子さんに言っとらんことのあると」という言葉が重なる。「きみにも、もう少し母親らしく振舞ってもらいたかよ」と言葉をぶつける二郎に対し、悦子は「母親らしく振舞うって何?」と静かに問いかけ、自由奔放に自らの人生を謳歌する佐知子を、意味ありげな視線で見つめる——。それぞれの登場人物の感情が交錯し、次第に“あの夏に隠された切なすぎる真実”へと向かっていく。そして最後に悦子がつぶやく「大丈夫ね、希望があるとやもん」。全てを包み込むその一言に込められた強い想いとは──。ニキが、母の語る物語の思いがけない真実にたどり着いたとき、観客はそこで明かされる激動の人生に心揺さぶられる。

戦後80 周年となる 2025 年の夏にスクリーンに描かれるこの物語は、終戦間もない長崎という、まだ過去にしきれない「傷跡」と、未来を夢見る圧倒的な「生」のパワーが渦巻いていた時代を生き抜いた女性たちの姿を鮮明に描き出す。先の見えない時代を生きる私たちに前へ進む勇気をくれる感動のヒューマンミステリー。

本予告編

『遠い山なみの光』は2025年9月5日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開
監督・脚本・編集:石川慶
出演:広瀬すず、二階堂ふみ、吉田羊、カミラ・アイコ、柴田理恵、渡辺大知、鈴木碧桜、松下洸平/三浦友和
配給:ギャガ
©『遠い山なみの光』製作委員会