夏の砂のように乾ききった心に沁み込む一筋の希望を描く映画『夏の砂の上』の場面写真が解禁された。

長崎出身の松田正隆による読売文学賞 戯曲・シナリオ賞受賞の傑作戯曲を、気鋭の演出家・玉田真也の監督・脚本で映画化。本作は、息子を亡くした喪失感をきっかけに人生が止まってしまった主人公と、妹が置いていった17歳の姪との突然の共同生活からはじまる。愛を失った男、愛を見限った女、愛を知らない少女…それぞれの痛みと向き合いながら、彼らが夏の砂のように乾き切った心に、小さな希望の芽を見つけていく姿を描く、切なさと温かさが交錯する珠玉の物語。主人公・小浦治を本作で共同プロデューサーも務めるオダギリジョー、治の姪・優子を髙石あかり、治の妻・小浦恵子を松たか子、優子の母で治の妹・阿佐子を満島ひかり、優子へ好意を寄せる・立山を高橋文哉、治が働いていた造船所の同僚・陣野をフォークシンガーの森山直太朗、同じく同僚・持田を光石研が演じる。

今回、映画公開前には封印されていた、乾いた心を抱える治と優子に雨が降り注ぐ、本作の重要シーンを捉えた場面写真が解禁された。本作の舞台は、雨が降らない渇水状態の夏の長崎。蝉の声が鳴り響き、うだるような暑さがスクリーンを通して伝わってくる。主人公の治は、幼い息子を亡くした喪失感から、働きもせず街をふらふらとしている。妻も彼から離れつつあり、大切なものを失い続ける日々の中、治の妹の阿佐子が、娘の優子をしばらく預かって欲しいと突然訪ねてくる。優子もまた父親の愛を知らず、乾いた心を抱えていた。こうして、どこか似たもの同士の2人の共同生活がはじまる……という物語。

解禁された場面写真は、渇水状態の長崎の街に雨が降る場面。心の乾きを潤すかのような待望の雨に、治と優子が歓喜するシーンを切り取ったもの。優子を演じた髙石は、このシーンに特別な思い入れがあり、「治と優子が雨を喜ぶシーンは、とても印象的です。のちにオダギリさんが“あのシーンの芝居は本当に映画的だった”と言ってくださって、鳥肌が立つほどうれしかったです」とコメントしている。

主演だけでなく、共同プロデューサーとして本作に携わったオダギリは、本作に込めた思いについて「監督作ではないけれど、とても深い関わり方をさせていただいたので、すべてのシーンに思い入れがあります。優子と治のシーン次第で見え方の変わってくる映画だと思いますが、その瞬間が幸せに見えるといいなと。ただ僕は、映画をつくる側として、観客に答えを渡す作業ではダメなのではないかと感じていて。人によって受け取り方が違ったりするものこそが、映画であってほしいと思っています。水を飲むシーンだって、僕はハッピーであってほしいと思いましたが、悲しいシーンだと受け取る人もいるはずで、それこそが映画としての成功であり、正解だなと。観終わった後に余韻を感じたり、深く考えることのできる作品がないと寂しいものですよね。やはり僕は手軽に観られる作品にはあまり興味が持てないので、今後もこういった映画に関わっていきたいなと思っています」とコメントする。登場人物が抱える喪失感や孤独感に差し込む一筋の希望。それぞれの痛みと向き合いながら、彼らが夏の砂のように乾き切った心に、小さな希望の芽を見つけていく姿を描く映画『夏の砂の上』は公開中。

『夏の砂の上』は全国で公開中
監督・脚本:玉田真也
出演:オダギリジョー
 髙石あかり、松たか子
 森山直太朗、高橋文哉、篠原ゆき子/満島ひかり
 斉藤陽一郎、浅井浩介、花瀬琴音
 光石研
配給:アスミック・エース
©2025 映画『夏の砂の上』製作委員会