『長崎―閃光の影で―』の東京プレミア上映会が7月22日(火)にTOHOシネマズ日比谷で行われ、菊池日菜子、小野花梨、川床明日香、南果歩、松本准平監督が登壇した。

太平洋戦争末期の1945年、日本赤十字社の看護学校に通う17歳のスミ(菊池日菜子)、アツ子(小野花梨)、ミサヲ(川床明日香)は、空襲による休校のため長崎へ帰郷。8月9日11時2分、長崎市に原爆が落とされたことで、家族や恋人と過ごす彼女たちの日常は一変する。久しぶりに帰郷した長崎で過酷な体験をすることになる看護学生の田中スミを演じるのは、本作が映画初主演となる菊池日菜子。あどけなく清らかな存在感を放つ等身大の姿は、戦争の落とす暗い影との対比を浮かび上がらせる。スミの幼馴染であり看護学校の同級生・大野アツ子を演じるのは小野花梨。確かな演技力に定評のある小野が、本作では人一倍強い信念を持って被爆者救護にあたる少女を熱演。同じくスミの幼馴染で看護学校の同級生・岩永ミサヲ役に川床明日香。本作では、クリスチャンである自らの信仰心と現実のはざまで葛藤する少女という複雑な役どころに挑戦する。

先日行われた本作のワールドプレミア上映会が長崎で行われたが「僕の生まれ故郷である長崎で、まずお届けするというのが本当に望みでしたので、本当に感無量でした」と語る松本監督。会場には約2000人の観客が訪れたといい「地元の皆さんが本当に喜んでくださって、とても嬉しく思いました」と、万感の思いを口にした。

本作で主人公の看護学生・田中スミを演じた菊池は、長崎でのキャンペーンで数日間滞在し、被爆者と交流する機会があったという。その経験について「私では想像しきれなかったような、実際の苦しみだったり、つらいと思った出来事の数々を聞かせていただいて」と振り返り、特に印象的だったこととして、被爆者の方々から最後に「頑張ってね」と声をかけられたことを挙げた。「その『頑張ってね』の一言に、私のこの芸能活動に対する『頑張ってね』だけじゃなくて、『頼んだよ』というか、彼らが思っている平和に対する願いだったりを、私たちに託してもらったんだっていう実感がなんとなくそこにあったので、もらったエールを少しも薄めることなく、これから平和への祈りや願いを強く持って生きていかなければいけないなという、強い決意につながりました」と真摯に語った。

同じく看護学生を演じた小野と川床は、長崎で被爆クスノキを訪れたという。小野は「ものすごいパワーで。被爆してから2か月で芽が出たっていうのは、科学的にはありえないことだとおっしゃっていて、そういうありえないことを実現した樹々のエネルギーというものをとても感じました」と、生命の力強さに圧倒された様子。川床も「そのクスノキの下にいるだけで、本当に守られているような感覚になりましたし、これまで長崎という地を見守ってくれてたんだなっていうパワーも感じて、これからも見守っていてほしいなと思いました」と、静かに語った。

3人は劇中で80年前の若者を演じているが、その役作りについて菊池は「監督がいろいろ変わった提案をされる方で、私たちはそれに導かれながら当時のことを知っていった」と明かし、当時の遊びであるゴム跳びや刺繍を3人で体験したという。「ゴム跳びは初めてやりました。存在を知らなかったくらいなので。でもすごく楽しかったです」と初々しく語った。

小野は「すごく印象的なのが、監督が2人同士で見つめ合って、4分間何も喋らず、ただただ目を見つめるっていうワークショップを開いていただいて。それすごい印象的で。何が印象的かって、こうやってプロモーションの中で『あの時こう思ってた』っていうのが、3人とも全然違ったのが面白くって」と、ユニークな役作りの一端を披露した。川床も、ワークショップで本作の元になった手記の中から「印象に残った一節を朗読する会」があったことを振り返り、「それは印象に残ってますね」と語った。

これらのワークショップの意図について問われた松本監督は「原爆に直面した人を、突然演じてくださいって言われても、それは難しいというか、不可能だなと。いろいろ調べ物しても不可能なものは不可能ですけれども、でもそこに極限まで近づきたいという思いがあったので、いろいろ提案させていただきました」と、俳優たちに寄り添いながら作品の世界観を構築していった真摯な姿勢を明かした。

【写真・文/編集部】

『長崎―閃光の影で―』は2025年7月25日(金)より長崎で先行公開、8月1日(金)より全国で公開
監督:松本准平
出演:菊池日菜子
 小野花梨、川床明日香
 水崎綾女、渡辺大、田中偉登、加藤雅也、有森也実、萩原聖人、利重剛/池田秀一、山下フジヱ
 南果歩 美輪明宏(語り)
配給:アークエンタテインメント
©2025「長崎―閃光の影で―」製作委員会