『長崎―閃光の影で―』の公開記念舞台挨拶が8月2日(土)にTOHOシネマズ日本橋で行われ、菊池日菜子、小野花梨、川床明日香、松本准平監督が登壇した。

1945年、長崎。看護学生の田中スミ(菊池日菜子)、大野アツ子(小野花梨)、岩永ミサヲ(川床明日香)の3人は、空襲による休校を機に帰郷し、家族や友人との平穏な時間を過ごしていた。しかし、8月9日午前11時2分、長崎市上空で原子爆弾がさく裂し、その日常は一瞬にして崩れ去る。久しぶりに帰郷した長崎で過酷な体験をすることになる看護学生の田中スミを演じるのは、本作が映画初主演となる菊池日菜子。あどけなく清らかな存在感を放つ等身大の姿は、戦争の落とす暗い影との対比を浮かび上がらせる。スミの幼馴染であり看護学校の同級生・大野アツ子を演じるのは小野花梨。確かな演技力に定評のある小野が、本作では人一倍強い信念を持って被爆者救護にあたる少女を熱演。同じくスミの幼馴染で看護学校の同級生・岩永ミサヲ役に川床明日香。本作では、クリスチャンである自らの信仰心と現実のはざまで葛藤する少女という複雑な役どころに挑戦する。

全国公開を迎えた心境について、長崎出身で祖父が被爆者である松本監督は「映画を始めた時から、この長崎、原爆についての映画を撮ることは、僕にとって本当に念願でした。この作品が僕の手から完全に離れて、皆さんのもとへ、そしてまだ見ぬ方々のもとへ届くと、そういう願いを込めています」と感慨深げに語った。

主演の菊池は「100%華々しいというよりかは、どこか緊張感だったり不安もあります」と正直な胸の内を明かしつつ、「決して後ろ向きな意味ではなく、何か少しでも未来が変わるんじゃないか、そういう前向きな予感を感じてもいるので、(本作の全国公開日である)8月1日を楽しみにしていました」と希望を口にした。

17歳の看護学生を演じるにあたり、小野は「少女特有の不安定さや拙さの表現は忘れてはならないなと思っていました」と役へのアプローチを振り返る。川床は、1945年当時の人々の感覚を掴むことに当初は不安があったというが「監督がワークショップを開いてくださって、昔の遊びを3人でやってみたりする時間を取っていただいた。3人の関係性を撮影前から作ることができたのは、すごくいいものだったんだなと」と、丁寧な準備期間が支えになったと語った。

全編が長崎弁で描かれる本作。方言の習得について、菊池は「監督が事前に全セリフのイントネーションを付けた音声データをくださって、現場ではひたすらそれを直前に聴いていました」と努力を明かした。松本監督が「(福岡出身の菊池と川床は)放置プレイっていうか、絶対大丈夫だと思ってたんで。小野さんだけちょっと大丈夫かなと思いながら見てましたけど」と冗談を飛ばすと、会場は和やかな笑いに包まれた。

また、川床は「この映画は、決して『楽しい』と思って劇場に来ることはないと思うんです。それでもこの作品を選んで足を運んでくださっていることが、皆さんが平和を望んでいる証のようなものだと、思うようになりました」と、観客の行動そのものに感謝を述べた。小野は「こうして人と人を繋ぐような作品があれば、そしてこうして顔を見合わせて一期一会の出会いを慈しめるような時間があれば、もしかしたら明日は今日よりも少しだけ温かい日になるんじゃないかなと、なったらいいなと思っております」と切なる願いを語った。

菊池は「『平和を願う』というこの一言にも、すごくグラデーションがある」と述べ、「無差別に奪われる命があっていいわけないっていうのは強く断言できるので、これからの未来で奪われる命がないこと、恐怖しなくていい日々がどこまでも続くことをただただ願っていたいです。平和への願いを強く高く持って、一緒に何か変えられたらと思っています」と力強く訴えかけた。

【写真・文/編集部】

『長崎―閃光の影で―』は全国で公開中
監督:松本准平
出演:菊池日菜子
 小野花梨、川床明日香
 水崎綾女、渡辺大、田中偉登、加藤雅也、有森也実、萩原聖人、利重剛/池田秀一、山下フジヱ
 南果歩 美輪明宏(語り)
配給:アークエンタテインメント
©2025「長崎―閃光の影で―」製作委員会