『おーい、応為』の完成披露上映会が9月21日(日)にTOHOシネマズ新宿で行われ、長澤まさみ、永瀬正敏、髙橋海人、大谷亮平、大森立嗣監督が登壇した。
江戸時代、破天荒な絵師・葛飾北斎と、彼の娘であり弟子でもあった葛飾応為。「美人画では父を凌ぐ」と言われた才を持ち北斎の右腕として、そして数少ない女性の絵師として、人生を描きぬいた応為。夫と喧嘩し離縁、北斎のもとに出戻ったお栄(のちの応為)は、すでに有名な絵師だったがより高みを目指し、絵のことしか頭にない父・北斎と再び暮らし始めた。絵筆を握る父の背中を見つめながら、お栄もいつしか絵を描き始める。絵師として生きる覚悟を決めたお栄に北斎は名前を送る。――それが「葛飾応為」。それは、いつも北斎が「おーい、飯!おーい、筆!」と、何かにつけて、お栄に用を頼むことから付けられた、師匠から弟子へ、父から娘へと渡された名前だ。茶も入れられず、針仕事もできないが、親ゆずりの画才と豪胆さで、男社会を駆け抜けていった先駆的な女性アーティスト・葛飾応為とは。自分の心に正直に自由に生きた彼女が、最後にたどり着いた幸せとは——。監督・脚本を手がけるのは大森立嗣。主人公・葛飾応為を演じるのは長澤まさみ長澤にとって本作は初の時代劇主演作となる。
一昨年の秋に撮影されたという本作だが、その期間を「あっという間に時は流れて」と話す長澤は「愛着があった分、寂しいなという思いがあって。そういう気持ちにさせてくれる作品になったことも嬉しい」と感慨深げな様子を見せた。自身が演じた応為については「この時代でもこんなに自分の思う通りに生きることができるんだなと思ったら、今の女性像にも通じるものがあると思う」と話し、「私自身も、自分のやりたいことに向かっていく心意気を学んだ気がして、応為から得られるものが多かった」と撮影の日々を振り返った。
“この映画の長澤まさみは最高かもしれない”と話している大森監督だが「応為という役が長澤さんに合っていると勝手に思っていて」と思いを明かし、「生きてきた人生がそのまま応為という役に乗っかってくれた気がした。演技から長澤さんの生きざまが見えてくる感じ。この人を肯定することで映画が生きてくる、私たちは生きやすくなるんじゃないかと感じた」と絶賛した。
劇中では吹き替えなしで絵を描くシーンを演じたという長澤、髙橋、永瀬の3人。髙橋は「撮影が終わったら練習する小屋があって、3人で一言も話さずそれぞれの絵を描き続ける」と明かし、葛飾北斎を演じる永瀬は「(北斎は)みんなが認める天才ですからね」と苦労も多かったようで、「2人(長澤と髙橋)がうまいんだもん。僕は必死についていこうという感じでひたすら練習していました」と練習を続けたという。さらに永瀬は「ちょっと持ち方が変わってますよね」といい、長澤も「笛を立てて、初めての持ち方で練習していました」と明かした。
一方で、もともと絵を描くシーンがなかったが追加されたという髙橋。大森監督は「うまいのでせっかっくだったらワンカット内で描いてもらっちゃおうかなとやってもらいました。すいません」というと、髙橋は「めちゃくちゃ嬉しかったです。絵を描く経験をするだけで、ちょっとでも英泉のことを分かった気になれる。役作りをする上での一つ一つが大事だった」と話しつつ、自身について「“逆聖徳太子”で一個のことしかできない。だからすごく練習して、しゃべりながら描くことを練習しました」と告白したが、これに長澤は「さらっと描いていらっしゃるので」と驚いていた。
【写真・文/編集部】
『おーい、応為』は2025年10月17日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開
脚本・監督:大森立嗣
出演:長澤まさみ、髙橋海人、大谷亮平、篠井英介、奥野瑛太、寺島しのぶ、永瀬正敏
配給:東京テアトル、ヨアケ
©2025「おーい、応為」製作委員会