『君の顔では泣けない』のジャパンプレミアが10月1日(水)に都内で行われ、芳根京子、髙橋海人、西川愛莉、武市尚士、中沢元紀、坂下雄一郎監督が登壇した。

物語の始まりは、高校1年生の夏。プールに一緒に落ちたことがきっかけで、心と体が入れ替わってしまった坂平陸と水村まなみ。これは何かの間違い、と元に戻ることを信じその方法を模索し奔走する。しかし、誰にも言えない秘密を抱えた陸とまなみは、15年経っても元には戻らなかった。人生の転機を入れ替わったまま経験していくふたり。しかし30歳の夏、まなみは「元に戻る方法がわかったかも」と陸に告げる。主演は芳根京子。入れ替わったことをなかなか受け入れられないまま馴染めず、不器用でありながらも誠実に生きようとする主人公・坂平陸を、揺れ動く衝動と痛みをもって演じ切った。そして、陸と入れ替わってしまう水村まなみ役には髙橋海人。心に【まなみ=女性】である本音を隠し、うまく【陸=男性】として気丈にふるまう難しい役どころを、柔らかな眼差しと感情で体現した。監督は『決戦は日曜日』(2022)の坂下雄一郎。リアルとフィクションの境を繊細に編み、入れ替わったまま大人になっていくふたりの時間を切なく、そして瑞々しく描き出している。

15歳から15年間入れ替わっている2人を演じる芳根と髙橋。その難しい役どころに「撮影が始まる前に何日かリハの日を設けていただいて」という芳根は、その際に坂下監督から「お互いの役を入れ替えてやってみませんか?」と提案があったようで、その言葉をきっかけに「シンプルに私は陸と向き合う、髙橋くんはまなみと向き合う。私たちはただ陸として生きる、まなみとして生きる。陸の一番の理解者であり、まなみの一番の理解者である」と気づきがあったようで、「入れ替わりに引っ張られすぎて、そういうことじゃないと気づけたときにすごく楽になった瞬間があって」と明かした。

髙橋も「最初に芳根ちゃんのYouTubeを見て」と明かすと、芳根からは「絶対に間違えてる(笑)」ツッコミを入れつつ、髙橋は「どんな仕草するんだろうと。形から入ってみようとやっていて。リハーサルの時に、身振り手振りを強めでやってみたり、なしでやってみたりしていくうちに、見ていただく人にストレートに見てもらうためには気持ち勝負でいったほうがいい」と演技プランが見えてきたという。

15歳の陸とまなみを演じる西川と武市。「オーディションの結果をマネージャーさんから電話で聞いて、その時は頭が真っ白になっちゃって」という西川だが「嬉しかったし、(映画)初出演になるということもあって。選んでいただいたからには自分ができることを最大限にやって楽しもうと思って」と振り返りつつ、役作りでは「すぐに自分に置き換えて想像できるお話ではなかったので、たくさん台本を読んで、陸の抱えている孤独感や葛藤はどれほどのものなんだろうとたくさん考えて、陸を作るというより、陸が抱えているものを一緒に背負おうという気持ちで役に入っていきました」と振り返った。

武市は「ライブの帰りにマネージャーさんに呼び出しを食らって。怒られると思っていたら、手紙をいただいて。“『君の顔では泣けない』の出演が決定しました”と。嬉しいより動揺が勝っちゃって。後からじわじわ心が盛り上がって、嬉しいてなりました」と振り返った。これに髙橋は「きっとマネージャーさんに呼び出されたときは一回気持ちがどん底になったよね。でも嬉しいサプライズを用意してくれていて、素敵なマネージャーさんですね」と共感し、会場は笑いに包まれた。

演じる上で、武市は「撮影に入ってから、監督に水村まなみとして生きることを教えてもらって。まなみならどう考えるかを想像しながら意識していました」と明かした。その撮影現場では、一緒に時間を過ごすことはなかなかなかったという髙橋と武市だが、髙橋は「自分がインするタイミングでしゃべったよね。King & Princeを好きでいてくれていて、さっきも舞台裏で緊張するからって『moooove!!』という曲を踊って。自分も緊張したとき『moooove!!』踊ろう」と笑いを誘いつつ「同じ人間として生きていくから、好きなものが一緒だったり、一緒に話せた時間は大事だった」とコメント。

武市は、撮影中に二人きりになったことがあったようで「右も左もわからなかったので、どうやって台本を深く読んでいますか?と聞いて」と言うと「それは恥ずかしいかも」と照れ笑いを浮かべる髙橋。武市は「髙橋さんが台本を読んで、セリフだけじゃなくて、その中の心情も読んで考えてと教えてくださって、練習法も教えてくださったんです。相手役がいるお芝居で、セリフを言って録音して、後から再生して対談みたいに練習すると教えていただいて」と実際にその練習法を試したという。

また、「(芳根が)リハーサルの時に来てくださって」と明かす西川は「監督からも『入れ替わっているのが分かるように』ということだったので、でもそれがすごい難しくて、芳根さんに『どうすればいいですか』と聞いて。本当にお優しいんです。いっぱい話してくださって、緊張も解けて」というと、「あの時2人とも、緊張してガチガチで。『大丈夫だから!』って」とチームワークで乗り切ったことを明かした。

【写真・文/編集部】

『君の顔では泣けない』は2025年11月14日(金)より全国で公開
監督・脚本:坂下雄一郎
出演:芳根京子、髙橋海人
 西川愛莉、武市尚士
 中沢元紀、林裕太/石川瑠華、前野朋哉/前原滉、ふせえり
 大塚寧々、赤堀雅秋、片岡礼子、山中崇
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2025「君の顔では泣けない」製作委員会