『アフター・ザ・クエイク』の公開記念舞台挨拶が10月4日(土)にテアトル新宿で行われ、鳴海唯、渡辺大知、佐藤浩市、のん、井上剛監督が登壇した。
原作は、2000年に刊行され、25年経った今も世界中で愛読されている村上春樹の傑作短編連作『神の子どもたちはみな踊る』(新潮文庫刊)。同著に収録されている4編をベースに一部時代設定を変更、1995年から2025年の30年にわたる物語として新たに生まれ変わった。誰もが抱く孤独をマジックリアリズムを交え描き出し、別々の時代・場所に生きる4人の物語が時空を超えて未来へ繋がってゆく。先の見えない現代を生きる私たちが、今見るべき希望の物語が誕生した。
満員御礼で実施されたこの日、25年前に刊行された短編連作を2025年の今、映画化した経緯を井上監督はこう解説した。「今年は阪神・淡路大震災から30年。かつて阪神・淡路大震災を題材にしたドラマや映画を作ったことがあって、それからだいぶ経って今年何かできないだろうかと相談したところ、プロデューサーから原作小説を頂いた。それはかつて震災をテーマにした映画を作った時に参考にしたものだったので、縁を感じました」と述べた。
家出をして地元から離れた地域で暮らす順子役の鳴海は、海辺での撮影を回想し「本物の焚火で撮影をしたので、風向きが変わるたびにカメラポジションを変えて撮影しました。自然には敵わないなと思わされる瞬間がたびたびありました」と苦労もあったようだった。
「神のこども」として育てられた青年・善也役の渡辺はプライベートで「兄貴!」と慕う渋川清彦との初共演にしみじみ。「現代パートで対峙した時に、30年くらい時が経ったように一気に歴史を背負っている渋川さんに重みを感じて圧倒されました。まるでタイムスリップしてきたかのような……。さすが兄貴だなと思いました」と改めてリスペクトした。
歌舞伎町を舞台に身長2m以上ある“かえるくん”と共演した佐藤だが「最初に監督から読んで欲しいと渡された僕のパートの内容がチンプンカンプンで意味がわからなかった。でもその後に原作を読んで“なるほど”と納得しました」と映画ならではのマジックリアリズムに唸った。かえるくんの声を務めたのんについては「どんな覚悟を持って演じられるのかと思ったけれど、のんさん自身が“これではない”と気付き工夫しながらやられている気がして、かえるくん=のんになっていた。頑張ったなと思って、すごく良かった」と絶賛。
そんなかえるくんの声を務めたのんは「かえる役は初めてだったので、どんな声になるのだろうかとビックリした。原作も読んで、かえるくんが救いになる役だと思って、意外と責任重大だけど頑張ってやってみようと思いました」とニッコリ。井上監督とは連続テレビ小説「あまちゃん」で関係性は築かれており「朝ドラでとてもお世話になったので、そういう繋がりもあってこれは安心して飛び込もうと思いました。変わらずの井上ワールドだったので軽快に明るく演出してくれたので、楽しくアフレコ出来ました」と伸び伸び声を当てる事が出来たと報告していた。
終盤には出演者の岡田将生からVTRが届き、「観た人の数だけ解釈が分かれる作品だと思いますので、皆さんの感想が本当に楽しみです。村上春樹さんの唯一無二の世界観を最後まで楽しんでください」と呼び掛けていた。
最後に佐藤は「なぜ4本の連作なのか、そしてなぜかえるくんが続編なのか。観る人によって解釈は変わると思います。再生の話なのか、蘇生の話なのか。そのニュアンスを自分の心の中で感じていただければ幸いです」とPR。井上監督も「日本の30年の節目を4つの章で描きました。観た方の中でもそれぞれの節目があると思います。本作はたまたま4つの物語ですが、それの間なのか後の話なのか、ご自分の中にある物語を想像して感じていただければ嬉しいです」と話した。
【提供写真、オフィシャルレポート】
『アフター・ザ・クエイク』は全国で公開中
監督:井上剛
出演:岡田将生、鳴海唯、渡辺大知/佐藤浩市
橋本愛、唐田えりか、吹越満、黒崎煌代、黒川想矢、津田寛治
井川遥、渋川清彦、のん、錦戸亮/堤真一
配給:ビターズ・エンド
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