“死の向こう側”を描くファントム・ファンタジー『白の花実』の予告編とビジュアルが解禁された。
2019年公開の『21世紀の女の子』の一篇「reborn」を監督し、中編「レイのために」(2019)や短編「木が呼んでいる」(2020)などで国内数々の映画祭で受賞し、その才能が評価されてきた坂本悠花里の初の長編作品『白の花実』。先日スペインで行われた第73回サン・セバスティアン国際映画祭のNewDirectors部門ではクロージング作品として上映され、現地で熱い喝采を浴び注目を集めた。
今回、本作のビジュアルと予告編が解禁され、併せて本作を一足先に鑑賞した作家・嶽本野ばらからコメントが到着した。
今回解禁されたビジュアルは、3人の少女が寄り添い、美しさと不穏さを同時にまとった空気を漂わせている。黒い服に身を包み中央に座るのは、周囲と上手く馴染めず転校を繰り返す主人公・杏菜(美絽)。杏菜に寄り添うのはクラスメイトの栞(池端杏慈)。そして、ただ一人、視線を落とし寂しげな表情を浮かべるのが、劇中で突然命を絶つ莉花(蒼戸虹子)だ。コピーには「あなたは、あたしの、誰なんだ」という含みのある言葉が添えられ、タイトルの横には白い花があしらわれている。
併せて解禁された予告編は、「ねえ、莉花ってなんで自殺しちゃったんだと思う?」という衝撃的な問いかけから始まる。賛美歌が響く中、杏菜(美絽)、栞(池端杏慈)、莉花(蒼戸虹子)の3人の少女が、ガーリーな制服に身を包み、キリスト教の寄宿学校で過ごす日々が映し出される。しかし平穏な日常は一変。莉花が突然、自ら命を絶ってしまうのだ。残された日記を読み進める杏菜の身体に、青白い鬼火のような魂が入り込む。杏菜は栞に「莉花の魂が私の中に入り込んできたの」と告げるが、栞はあきれた様子で「は?」と返す。
やがて莉花の死と日記の存在によって揺らぐ少女たちの心、そして大人たちとの対立が静かに渦を巻いていく。門脇麦演じる教師・澤井が「そういうのは暴力と言うんです!」と涙ながらに叫ぶ姿も強烈な印象を残す。予告のラストは、「少女は、“死”に触れて、自分を知る」というナレーションとともに、杏菜が凛とした表情で遠くを見つめるシーンで締めくくられ、新たな未来を予感させる。さらに、「『ピクニック at ハンギング・ロック』を彷彿とさせる、今年屈指のデビュー作」、「視覚で語り、余白で魅せる、新たな才能」といった絶賛レビューが期待をさらに高める。少女たちは莉花の死を前に、どのように変化していくのか――。
予告編
嶽本野ばら コメント
果実の中で種子が抱いているのは世界への希望か恐れか?
何にでも染まる筈の白が一点の汚れも拒む時、称賛は非難に変わる。
少女は誠実と残酷の二律背反に折り合いをつけない。
だから彼女達の命は花となり揺れる。
嶽本野ばら 作家
『白の花実』は2025年12月26日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で順次公開
監督・脚本・編集:坂本悠花里
出演:美絽、池端杏慈、蒼戸虹子
河井青葉、岩瀬亮、山村崇子、永野宗典、田中佐季
伊藤歩、吉原光夫/門脇麦
配給:ビターズ・エンド
©2025 BITTERS END/CHIAROSCURO