『TOKYOタクシー』の完成披露試写会が10月20日(月)に丸の内ピカデリーで行われ、倍賞千恵子、木村拓哉、迫田孝也、優香、中島瑠菜、山田洋次監督が登壇した。

ある日タクシー運転手が乗せたのは、人生の終活に向かうマダム。東京から葉山へと向かいながら、彼女の思い出の地をめぐるうち、彼女の壮絶な人生が明らかになっていく。他人同士だった2人の人生が交差し、やがて想像もしなかった“奇跡”が訪れる―。長きにわたり日本映画界で活躍し続け山田監督作品には欠かせない名女優・倍賞千恵子、そして『武士の一分』以来19年ぶりの山田組参加となる木村拓哉。さらに蒼井優、迫田孝也、優香、中島瑠菜、イ・ジュニョン、笹野高史など多彩な豪華キャストが集結。フランスで初登場新作1位を獲得、2023年に日本でも公開しヒットしたフランス映画『パリタクシー』を原作に、昭和から平成、令和と、日本に生きる人々を長年描き続けてきた山田監督が、刻々と変化する大都市・東京を舞台に、人生の喜びを謳いあげる感動のヒューマンドラマ。

万雷の拍手で迎えられた登壇者たち。倍賞は映画を観終えたばかりの観客へ「何かいろんな思いがあって、出ていく時に誰かと目があったら、ちょっとハイタッチをしていただけると私は幸せかなと思います」と、作品に込めた温かいメッセージを伝えた。続いて木村は「ものすごいアクションとか事件とかではなく、そばで実在していそうな空気感が、きっと感じていただけたんじゃないかなと思います」と語りかけ、「話さなければわからないこと」や「愛情の確認」、そして「愛することのすごく幸せだったり」を感じてほしいと続けた。

上映後の舞台挨拶への心境を問われた倍賞は「もう逃げ出したくなるくらい、でも勇気を出して出てまいりました」と語りつつ、本作で演じたすみれ役では、これまで演じた役とは違い、マニキュアを塗り、高価なイヤリングやネックレスを身につける華やかな役柄と説明し、マニキュアを塗るのに「最初は3時間くらいかかった」と明かした。さらに撮影中には何度も塗り直すことがあったといい、暗がりで作業するために、「木村くんが来て、スマホで明かりをつけてくださるんです。それでずいぶん助けられました」とエピソードを披露し、「その時はありがとうございました」と木村に感謝を伝えた。

また、倍賞は「私にとっては生涯忘れられない作品だと思っております」と、作品への深い思いを語った。さらに山田監督の91作品のうち、70作品に出演する倍賞は、長年出演してきた山田組の現場を「私にとっての学校かなって思っているんです。お芝居的な学校ではなくて、人間としてどう生きていくかということを、いつも作品を演じながら考える、私にとっての人間としての学校という感じで出演しています」と表現した。

19年ぶりに山田組へ参加した木村は、観客の表情を見て「すごくみんないい理解者になってくださったんだなっていう風な思いでいます。すごく感謝してます」と語った。山田組の現場の魅力を「作業場なんですけど、すごく人の気持ちが乗っかっていて、やっていて嬉しいというか、すごく豊かな場所です」と表現した。

本作では、タクシーの走行シーンでバーチャルプロダクションが使用されているが、「今のテクノロジーの凄さはものすごく感じさせてもらったんですけど、そういうテクノロジーに囲まれてる中でも、人として大事なことはこうじゃないという、あくまでも人が先行するっていう現場でした」と、山田組ならではの創作の核心を語った。

また、山田監督は、自身の映画作りについて「俳優さんを始めとして、大勢のスタッフたちと一緒になってわあわあ言いながら作り上げていく。それが楽しくなきゃいけないっていうかね。辛いこともいっぱいありますけども、それを含めて、楽しかったなあっていう思いをスタッフ全員が、俳優さん全員が抱いて、クランクアップできるような状態が僕にとって理想だし、僕自身も本当にみんなと一緒にいて、ああ楽しかったっていう風に思っております。そういうのが映画作りっていうもんだすね」と、その哲学を穏やかに語った。

【写真・文/編集部】

『TOKYOタクシー』は2025年11月21日(金)全国公開
監督:山田洋次
出演:倍賞千恵子、木村拓哉
 蒼井優、迫田孝也、優香、中島瑠菜
 神野三鈴、イ・ジュニョン、マキタスポーツ、北山雅康、木村優来
 小林稔侍、笹野高史
配給:松竹
©2025映画「TOKYOタクシー」製作委員会