『てっぺんの向こうにあなたがいる』初日舞台挨拶 のん、“てっぺんの向こうにあるもの”は「お布団」

『てっぺんの向こうにあなたがいる』の初日舞台挨拶が10月31日（金）にTOHOシネマズ新宿で行われ、吉永小百合、佐藤浩市、天海祐希、のん、木村文乃、若葉竜也、工藤阿須加、茅島みずき、阪本順治監督が登壇した。

“女性だけで海外遠征を”を合言葉に女子登攀クラブを設立し、1975年にエベレスト日本女子登山隊の副隊長兼登攀隊長として、世界最高峰のエベレストの女性世界初登頂に成功した田部井淳子。その後も飽くなき挑戦は続き、生涯で76か国の最高峰・最高地点の登頂を成功。そんな日本を代表する偉大な女性登山家・田部井淳子の実話をもとに、エベレスト女性初登頂から晩年の闘病、余命宣告を受けながらも亡くなる直前まで山に登り続けたその勇壮な生涯を壮大なスケールで描く本作。主人公・多部純子を演じるのは今作で映画出演124本目となり、日本映画界を牽引する俳優・吉永小百合。純子を支える夫・正明を演じるのは佐藤浩市。純子の盟友であり、エベレスト登頂の相棒でもある北山悦子役には天海祐希。青年期の純子役はのん。また、木村文乃、若葉竜也、工藤阿須加、茅島みずきと険しい高峰へ向けて実力派の俳優たちが揃う。

主演の吉永は、悪天候の中集まった観客に感謝を述べると、「124本目の映画になるんですけれども、昔はこのような初日の舞台挨拶などはなかったんですね。毎回次の日のこと思って胸がドキドキしてしまいます」と、長年のキャリアを持つ今も変わらぬ緊張感を吐露。「準備から3年ぐらいかかって、やっと皆様のお目にかけるっていうことはもうとても嬉しいことです」と感慨深げに語った。純子の盟友役を演じた天海は「偉大な女性を、偉大な女性が演じた映画が今日公開になりました」と、主演の吉永と、彼女が演じた主人公・多部純子への敬意を表した。

純子の青年期を演じたのんは「この作品に参加することが決まってもう本当に嬉しくて、家の中で飛び上がってしまうほど大興奮だった」と喜びを爆発させ、「見るとなんかこう人生が豊かになるような映画だなと思いました」と作品をアピールした。

イベントでは、映画のタイトルにちなみ、「てっぺんの向こうには、どんな大切なものがあるか？」というテーマでフリップトークが展開された。トップバッターの工藤が「甥っ子」というフリップを掲げると、「いやあ可愛いんですよね。ついに工藤家にも甥っ子ができまして。もう甥っ子バカです」と満面の笑み。その溺愛ぶりで会場を和ませた。一方、佐藤のフリップには「てっぺん」という深遠な言葉が。「そこそこ登ったかなと思って、はっと景色を見ても、まだてっぺんが。いくら歩めど頂上に、いただきにいけないのがこの世界だな」と、俳優人生の厳しさと終わりなき探求心を語り、観客を唸らせた。

天海は「自分」と回答。「なんかどこまで行っても自分との闘いだなと思って。毎作だって自分の才能のなさにぶつかりませんか？それと闘うの」とストイックな姿勢を見せると、吉永も「そうですね。もうダメだダメだと思って、じゃあ次はもうちょっと成長できるんじゃないかってこの年齢にしてもそう思います」と共感を示した。

若手キャストもそれぞれの思いを語った。プロゴルファーを目指していた過去を持つ茅島は「母親」と回答。「私の小中は全部お母さんのおかげでできていて、一緒に夢を応援してくれてた」と、二人三脚で歩んできた母親への感謝を述べた。木村は「仲間」と答え、「地道にこう這いつくばりながらやってくっていうことはできるなと思ったときに、その先に、応援して待っててくれる仲間とかそういう人たちがいてくれたら、頑張った甲斐もあったかなって思えるな」と願いを込めた。

若葉は「ともだち」と回答。「母親に、私より付き合い長くなったりとか、ずっと怒ってくれるのは友達なんだから、人生で一番大事にしなさいよということを小学校の時に言われて、それからずっと頭に残っていて」と明かした。そんな中で、「お布団」という回答で笑いを誘ったのんは「毎日、おうち帰ったらお布団に帰って、いっぱい寝て三度寝くらいするぞっていう気概で頑張ってるんです。真っ先に思い浮かんだのがお布団だったので、直感を信じて」と照れ笑いを浮かべていた。

そして、吉永は「観客の皆様」とフリップを掲げ、会場に温かい視線を送った。「こういう大変なお天気の日に初日に、全国でこの映画を観に行ってくださった、今見てらっしゃる方もいらっしゃると思うので、それをとてもありがたく嬉しく今、思っています」と語ると、客席からはこの日一番の大きな拍手が送られた。

また、吉永は「みんなで一生懸命作りました。おうちにお帰りになる時に温かい気持ちになっていただけたらと願っております」と改めて観客にメッセージを送り、阪本監督は「この映画、2回目が一番面白いです」と宣言すると、会場は大きな笑いに包まれた。

【写真・文／編集部】