『港のひかり』の初日舞台挨拶が11月14日(金)にユナイテッド・シネマ豊洲で行われ、舘ひろし、眞栄田郷敦、尾上眞秀、藤井道人監督が登壇した。

昨年公開され、数々の映画賞を総なめにした映画『正体』で第48回日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞した藤井道人監督とキャメラマン・木村大作が初タッグを組み、北陸の港町を舞台にした完全オリジナル脚本で描く映画『港のひかり』。主人公で元ヤクザの“おじさん”を演じるのは7年ぶりの単独主演作となる舘ひろし。歌舞伎界の新星として注目を集める尾上眞秀が演じる盲目の少年・幸太との年の差を超えた、十数年の友情を描いた感動作となっている。

『ヤクザと家族 The Family』(2021)以来の藤井監督とのタッグとなる舘は「もう一度この監督とご一緒したい思いました」と当時を振り返り、本作について「俳優人生50年の集大成と言うべき映画になったと自負しております」と力強く語った。

既に鑑賞した人からは多くの反響が寄せられている本作だが、35mmフィルムで撮影された本作について舘は「今フィルムで映す映画がないんです。それを大作さんのこだわりで35㎜のフィルムに映し込んだ。その画の奥深さを感じました」と語り、尾自身もフィルム撮影の映画は初めてだという藤井監督は「違う映画作りを楽しめました」と、普段の撮影とは異なる現場だったことをうかがわせた。

また、渡哲也さんと重なって見えたという感想が寄せられた舘は「そういう風に演じようとは思っていなかった」と明かしつつ、「40数年一緒でしたから、いつも渡さんを見ていたので似てくるんでしょうね」と語りつつ、本作を鑑賞して「顔は似てないんですけど雰囲気は似ているところがありました。ちょっとした佇まいとか顔の角度とか」と自身でも感じるところがある様子だった。

青年期の幸太を演じた眞栄田は「おじさんと出会ったことで今幸せに生きていますとか、12年間おじさんに見せられた強さや優しさを心の中で思いう続けているというのがにじみ出れば」と本作に込めた思いを語り、舘との共演については「接しやすい空気を作ってくださるのでやりやすかったです」と信頼関係をうかがわせた。そんなキャスト陣について「素晴らしい目を持った俳優さんとご一緒することがかなった」という藤井監督は「キャスティングの時点で目を大事にしていました」と明かし、尾上について「たくさんの訓練を撮影のためにしてくれた」と称賛した。

作品にちなんで、“誰かのためについたやさしい嘘”を聞かれると「自分のためにしか嘘ついたことない(笑)」と笑う舘は「アイスクリームが好きで特にいちごアイスが好きな時期があって、1日に2個か3個か食って、奥さんにダメだと言われて内緒で食ってたことがあります」と明かし、「『食べたでしょ』と言われて『食べてない』と嘘をついたことがあります」とエピソードを披露し、会場を沸かせた。また、尾上は「『薬を飲んだ?』って言われて、『飲んだよ』と言うんですけどたまに飲んでない」と明かした。

自身について「嘘つけなくてお世辞も言えない」という眞栄田は「正解のない世界にいると『よかったよ』とか言ってくださる。それを疑ってしまう自分がいて、それを嫌だなと思っちゃう。逆なんですけど。この作品、本当の意見を聞かせていただきたい」と観客に呼びかけた。その一方で舘は「僕は嘘でもいいから褒めてほしい。褒められて伸びるタイプなので」と笑いを誘った。

また、本作への出演を振り返り「気持ちでぶつかっていくしかないと最初から決めて、形ではなくて気持ちだけでお芝居をしようと決めてやりました」と明かす舘に、藤井監督は「幸せな日々でした。舘さんとホテルで、明日のセリフを整理しようとか、フィルムだからこそできることできないことがあるんですけど、三浦をどう生きるかを主演として寄り添って考えてくださって。映画の仕事を選んでよかったと思った瞬間でした」と感慨深げに語った。

【写真・文/編集部】

『港のひかり』は全国で公開中
監督・脚本:藤井道人
出演:舘ひろし、眞栄田郷敦、尾上眞秀、黒島結菜、斎藤工、ピエール瀧、一ノ瀬ワタル、MEGUMI、赤堀雅秋、市村正親、宇崎竜童、笹野高史、椎名桔平
配給:東映 スターサンズ
©2025「港のひかり」製作委員会