『君の顔では泣けない』の公開後御礼舞台挨拶が11月26日(水)にTOHOシネマズ新宿で行われ、芳根京子、髙橋海人、坂下雄一郎監督が登壇した。

物語の始まりは、高校1年生の夏。プールに一緒に落ちたことがきっかけで、心と体が入れ替わってしまった坂平陸と水村まなみ。これは何かの間違い、と元に戻ることを信じその方法を模索し奔走する。しかし、誰にも言えない秘密を抱えた陸とまなみは、15年経っても元には戻らなかった。人生の転機を入れ替わったまま経験していくふたり。しかし30歳の夏、まなみは「元に戻る方法がわかったかも」と陸に告げる。主演は芳根京子。入れ替わったことをなかなか受け入れられないまま馴染めず、不器用でありながらも誠実に生きようとする主人公・坂平陸を、揺れ動く衝動と痛みをもって演じ切った。そして、陸と入れ替わってしまう水村まなみ役には髙橋海人。心に【まなみ=女性】である本音を隠し、うまく【陸=男性】として気丈にふるまう難しい役どころを、柔らかな眼差しと感情で体現した。監督は『決戦は日曜日』(2022)の坂下雄一郎。リアルとフィクションの境を繊細に編み、入れ替わったまま大人になっていくふたりの時間を切なく、そして瑞々しく描き出している。

坂平陸役の芳根は「公開から2週間が経過して、このように皆さんの前でお話をさせていただける機会をいただけて嬉しく思います」と満面の笑み。水村まなみ役の髙橋も「僕は口が滑ってネタバレを言ってしまうタイプですが我慢して、もし言ってしまったら止めてもらって(笑)今日はマスコミの皆さんも来ていますので、ネタバレを言ったら書かないでください。観客の皆さんも僕がネタバレしたら記憶を消してくださいね」とユーモアを交えて挨拶した。

11月14日の公開以降、SNSを中心に絶賛のコメントが相次いでいる。周囲の反響について聞かれた芳根は「この作品はラストシーンが…え~と、いやそれは一旦置いておいて」と上映前だけにネタバレを気にし過ぎて急に緊張。髙橋から「さっきあれだけ僕に『ネタバレはダメ!』とツッコんできたのに?」とお叱りを受けると、「えっとえっとえっと、いっぱいポストの感想見ています!」と豪快に笑っていた。

一方、髙橋はKing & Princeのスタッフの感想のひとつとして「苦しみ過ぎて涙が出なくて、最後にドバーッと滝のように涙が出てきた」というものがあったと報告し、「観客の皆さんもそれに沿って観てください。涙は我慢して最後にドバーッと出してください」と指南していた。

普段はエゴサ等をしないタイプの坂下監督だが、絶賛の声が多いと聞いてSNSを覗きに行ったそうで「好評だったので次々に見てしまい…癖になる」と照れ笑いを浮かべると、髙橋から「SNSに沼りかける監督だ!」など和気藹々とした様子。

坂下監督は続けて、芳根と髙橋の注目してほしいシーンを発表。芳根に関しては、とあるシーンで2回タイミングよく風が吹き、前髪がそっと揺れるシーンがあるという。「そういうのは計算して用意できるものではないので、“持っていらっしゃる”んだなと思いました」と芳根の女優力を絶賛。髙橋に関しては、後半のとあるシーンでの沈黙が実は4~50秒ほどあることを明かす。「一見そんなに長いと感じないと思うんですが、大胆に沈黙されていて、すごいなと思いました」と、髙橋の演技力を受けて、ノーカットでいったことを明らかにした。そのことを明かされたふたりは、監督ならではの着眼点に満面の笑みを浮かべ、嬉しさを隠せない様子だった。

芳根と髙橋は、お互いの芝居に感銘を受けたシーンを発表。芳根は「まなみの電話からの“もしもし”。その一言で泣きそうになった。髙橋くんの声にグッと感情が上がっちゃって。撮影中に『もう一度やっていいですか?』と言ってしまった記憶があります。あの“もしもし”はなんだろうかと。安心できるし、ちょっと怖い気持ちになる。あの“もしもし”に負けました」と髙橋の絶妙なボイスに完敗したことを明かした。

髙橋は「芳根ちゃんの表現の素晴らしさは隣でお芝居をさせてもらってたくさん感じたけれど、難関だと思うのが物語の流れや出来事を説明するセリフ。それをいかに自分事として説明セリフとして聞こえないようにするのか…。それは上手い下手ではなくて、職人だなと。凄い、この人はと思った」と芳根のナチュラルな演技力に目を見張り「映画を観てくれたみんなと語り合いたいくらいの凄いお芝居をされている」と絶賛が止まらなかった。

さらにラストシーンの秘話も飛び出した。芳根が「この作品は何を持ってハッピーエンドと言うのか、それさえも人それぞれ違う。撮影を通してNGが多くなかった作品という印象があるけれど、ラストシーンの撮影時には『もう一回!』がありましたね」と回想。髙橋は一旦、登壇者を舞台奥に呼び寄せ、マイクを通さず“作戦会議”をした後に「完成版で観る事が出来るラストシーンは元々ラストシーンではなくて、その前のシーンで終わる予定でした。けれどクランクイン直前に、最後にもうワンシーンを追加したいという話がありました。最後のシーンが追加された作品に出会ったのは初めてだったので、そこを含めて皆さんに楽しんでもらいたいです」と舞台裏を紹介。坂下監督は「ラストについては撮影直前まで議論があって、スタッフとも話し合いを重ねました」と熟考に熟考を重ねたそうで「原作者の君嶋彼方さんに聞いた小説のラストの解釈の答えを表現したかった」と狙いを明かすと、芳根は「それが大成功という事ですね!」と納得のラストシーンだと胸を張っていた。

最後に坂下監督は「SNS等の感想を読ませていただき、愛される作品になっているなと思って嬉しいです」としみじみ。髙橋は「上映前の皆さんのワクワク顔を拝むことが出来て嬉しいです。ラストを含めて感じ方は人それぞれだと思います。今日観に来てくれたあなた、あなた、あなた、刺さる方が一人でもいたら良いなという思いで撮影現場に入って全力投球で臨んだ作品です。この作品が観てくださる誰かのお守りになることを祈っています」と期待した。主演の芳根も「公開して2週間近くが経ちましたが、沢山の応援、本当にありがとうございます!SNSでも盛り上げてくださって感謝の気持ちでいっぱいです。本作が誰かの思い出の一本、心に残る一本になっていただけたら凄く嬉しいです」とさらなる広がりに期待を込めていた。

【提供写真、オフィシャルレポート】

『君の顔では泣けない』は全国で公開中
監督・脚本:坂下雄一郎
出演:芳根京子、髙橋海人
 西川愛莉、武市尚士
 中沢元紀、林裕太/石川瑠華、前野朋哉/前原滉、ふせえり
 大塚寧々、赤堀雅秋、片岡礼子、山中崇
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2025「君の顔では泣けない」製作委員会