『兄を持ち運べるサイズに』初日舞台挨拶が11月28日(金)にTOHOシネマズ日比谷で行われ、柴咲コウ、オダギリジョー、満島ひかり、青山姫乃、味元耀大、中野量太監督が登壇した。

宮沢りえ主演『湯を沸かすほどの熱い愛』で日本アカデミー賞など多くの映画賞を席捲、二宮和也主演『浅田家!』では国内の大ヒットのみならずフランスでも大ヒットを記録した中野量太監督が5年ぶりにメガホンをとった最新作は、作家・村井理子が実際に体験した数日間をまとめたノンフィクションエッセイ「兄の終い」をもとに映画化した『兄を持ち運べるサイズに』。絶縁状態にあった実の兄の突然の訃報から始まる家族のてんてこまいな4日間の物語を描く。マイペースで自分勝手な兄に幼いころから振り回されてきた主人公の理子を演じる柴咲コウ。家族を振り回す原因となる、映画史上稀にみるダメな兄ちゃんを演じるのはオダギリジョー。兄と一時は夫婦でありながらも、ある理由で離婚した元嫁・加奈子を演じるのは満島ひかり。兄と加奈子の娘で両親離婚後は母と暮らす満里奈を演じるのは青山姫乃。2人のもう1人の子供で最後まで兄と暮らした息子・良一を演じるのは味元耀大。

主人公・理子を演じた柴咲は、公開初日を迎えた心境について「3か月前から皆で宣伝活動などをして盛り上げてきたので、今日で終わりかと思うと寂しい反面、やっと皆さんに届くのだなと感慨深い気持ちです」と、公開を迎えた喜びと一抹の寂しさを滲ませながら挨拶した。兄役を演じたオダギリは「どのような人生を歩んだ方にも共感していただける、とてもメッセージ性の強い映画になったと思います」と自信を覗かせ、中野監督も「この企画は4年くらい前に始まってやっと完成して経を迎えることができました。このメンバーでもう一回やることはおそらくなくて。でも、でも、映画を撮りえ終えて、映画を観て、このメンバーじゃないとこの映画は成立しないと思えるのはとても幸せで。そう思わせてくれるメンバーが集まって完成しました。僕にとって最新作で、自信作です」と力強く語った。

劇中ではオダギリと元夫婦役を演じた満島は、高校生の頃に映画館で柴咲やオダギリの出演作を見ていたことを明かし、「そのお二人と同じ映画の中にいるのが感慨深くて。映画に映っているお二人が先輩なんだけど、とても不器用な感じがして。素直なまま映画と向き合っている先輩たちの姿を見て、もう一度後輩に返れた気がして」と振り返った。また、今回が初めての映画出演となった青山は「すごく緊張したんですけど、今日公開というのがまだ実感が持てていなくてふわふわした感じです。舞台挨拶を通して、みなさんが公開の日に映画を観てくださったこととか、お話をすることが私の実感につながると思います」と笑顔を見せた。

既に先行公開されている本作だが、その反響について「私友達少ないのでそんなに」と笑いを誘いつつ「私自身が数少ない友達に勧めたい映画。あまり自分が出ているから見てというタイプではないんですけど」と話す柴咲は「密に付き合っている深い友情でつながっている人たちって、他の人には話せない家族の話もしてくれるし、私自身もすることもあるし。そういう人たちにはこの映画は一回は見てほしい思える作品」と語った。

イベントでは、原作者の村井理子からキャストと監督に向けた手紙がサプライズで読み上げられた。「6年前の10月末、寒い東北で、必死になって兄の部屋を片づけていたことを思い出しています」から始まるその手紙には、どうしようもない兄だったが、「父としては、最後の瞬間まで、精一杯頑張っていたはず」、そして今回の映画化によって兄の人生に大きな「マル」がついたことへの感謝が綴られていた。「兄を持ち運べるサイズに、の登場人物になれたことで、苦労が多かった兄の人生に、大きなマルがついたとも思っています」という言葉に、柴咲は「原作者の方で、本当に兄を持っていらしたご家族の肩なので、体現した我々を認めていただけてうれしい」と語った。また、中野監督は「誰かのために映画を作りたくて。それが一番近い原作者のためになっていることは最大の喜び」と語った。

【写真・文/編集部】

『兄を持ち運べるサイズに』は全国で公開
脚本・監督:中野量太
出演:柴咲コウ、オダギリジョー、満島ひかり、青山姫乃、味元耀大
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会