
『終点のあの子』ジャパンプレミアが12月1日(月)にグランドシネマサンシャイン池袋で行われ、當真あみ、中島セナ、平澤宏々路、南琴奈、深川麻衣、石田ひかり、吉田浩太監督が登壇した。
原作の「終点のあの子」は、2008年に第88回オール讀物新人賞を受賞した短編「フォーゲットミー、ノットブルー」を第一話においた全四編からなる連作集で、世田谷区小田急線沿線にある私立女子高校に進学したばかりの少女たちが登場する。映画は、中学校から上がってきた内部生の希代子と外部生の朱里を主人公に添えた第一話に注力した物語。入学式の日。中学からの内部進学者の希代子は、高校から入学した奥沢朱里に声をかけられた。海外暮らしが長い彼女の父は有名なカメラマンだった。希代子は風変わりな朱里が気になって仕方がないが、一緒にお昼を食べる仲になった矢先、ある変化が訪れる―。主人公・希代子と朱里を演じるのは當真あみと中島セナ。監督を務めたのは、『好きでもないくせに』(16)や『愛の病』(18)などで知られ、2021年には、ロッテルダム国際映画際に招待され話題を呼んだ『Sexual Drive』など、これまで女性を主体的に描いてきた吉田浩太。
周囲に合わせて生きる主人公・希代子を演じた當真は、自身の役どころについて「私が演じた希代子は、本当に普通の女の子」と分析。「学校生活の中で、発言する方かというと、周りに合わせて生活をしている。周りを伺いながら、自分をその中に溶け込ませるように生活している女の子」と語り、自身の小中学校時代と比較しつつ、「役作りに関しては、すごく役を作り込むというよりも、自分自身とすごく似ている部分が多かったので、できるだけナチュラルに、自分のまま自然体で演じられるように意識していました」と振り返った。
一方、知的で大人びた朱里を演じた中島は「普通であることを嫌っていて、人と違うことに意味を見出す人」と表現し、「さらに高校生特有の万能感と自意識の中で揺らいでいる人」と続け、「希代子との距離感だったり、自分が自由でいようとする姿勢みたいなのを意識しながら演じました」と明かした。自身との共通点を問われると「絵が好きっていうのは一つ共通点としてあるので、この中では一番自分に近いなと思うのは朱里です」と語り、自由でありたい、縛られたくないという思いは自身にも似ている部分があると語った。
吉田監督はキャスティングについて、當真を「透明な空気感を持っている」、中島を「独特な、自由を求めるオーラみたいなものを放っている」と評し、それぞれの個性が役にピタリとハマっていたことを強調した。また、平澤については「森(役名)の傷つきやすさ、繊細さを演じてくれた」、南については「クラスのトップの存在でありながら、実は繊細で不器用な一面を持つ部分を見事に表現してくれた」と、若手キャスト陣の演技を称賛した。
瑠璃子を演じた深川は「希代子と朱里のわだかまりみたいなものは、そこまで感じ取ってはいなかったと思う」と話しつつ「初めて試写で完成したものを見た時に、皆さんの台詞じゃない時の表情などが本当に素晴らしくて。同じ経験をしたことがなくても、この空気とかこの感じ、なんか感じたことあるなとか、なんか知ってるな、なんか聞いたことある気がするっていう感覚がすごくあって。皆さんの表情とお芝居を見ていて、刺さりました」と、若手キャスト陣の言葉以外の表情から滲み出る感情表現や、作品全体に漂う空気感に強く感銘を受けた様子を見せた。石田も「冒頭から自由な天候性が来て、みんなが注目したりするあたりからずっとですけど、気まずさというものが最初から終わりまであったなと思います」と冗談めかして会場を笑わせつつ、その気まずさこそが青春特有のリアルな空気感であることを示唆した。
また、“憧れの存在”について質問されると「現在進行形で増えているんですけど」と前置きした當真は「作品で共演させていただいた俳優の皆さん」と答え、「現場での振る舞いだったり、お芝居への向き合い方だったり、本を読んだりとかそういう姿を見て、自分もこういうふうにしっかり勉強していきたいなというふうに憧れ、尊敬という気持ちを込めて思います。現場で出会う俳優の皆さんは本当に素晴らしくて。日々学びが続いています」と、先輩俳優たちへの純粋な敬意を語った。中島は「漫画とか映画とか映像作品とか、創作物を作る人たち」に憧れを抱いているとし、「作る人に対する尊敬とか憧れみたいなのが今は強いです」とクリエイターへの眼差しを向けた。
最後に中島は「10代の頃は、いい思い出も苦い思い出もあると思うんですけど、そういう経験が今の自分を構築している要素になっていると思います。映画を観て、大人の方は10代のころを思い出すきっかけになればうれしいですし、学生の方は自分がどういう学生生活を過ごして生きたいのか、どう考えているのか考えるきっかけになればうれしい」、當真は「原作や脚本を読んだ時に、すごく気持ちが共感できるというか、自分も経験したなという気持ちと共に、すごく痛いところを突かれているような気持ちになって。それは後ろめたく思ってたことだったり、過去の自分に後悔していることがあったりとか、そういうのも含めて感じるものなんだろうなと思ったんですけど」と自身の感情を吐露。「振り返ってみて、いつかそれを笑って話せるような大人になりたいと思っています。この作品は、見てくださった大人の方はやはり過去の自分を思い出すでしょうし、学生の方は今自分も同じ状況にいるなとか、それで苦しい思いをしているいたりする方もいるかもしれないし、そういう方はこの作品を見て、自分だけじゃないっていうふうに、ちょっと安心してほしいなっていう気持ちもあります」とメッセージを送った。
【写真・文/編集部】
『終点のあの子』は2026年1月24日(金)より全国で公開
監督・脚本:吉田浩太
出演:當真あみ、中島セナ
平澤宏々路、南琴奈
新原泰佑、小西桜子、野村麻純、今森茉耶、陣野小和/深川麻衣、石田ひかり
配給:グラスゴー15
©2026「終点のあの子」製作委員会

























