『星と月は天の穴』公開記念舞台挨拶が12月19日(金)にテアトル新宿で行われ、綾野剛、咲耶、田中麗奈、荒井晴彦監督が登壇した。

キネマ旬報脚本賞に5度輝いた⽇本を代表する脚本家・荒井晴彦。⾃ら監督を務めた作品では⼈間の本能たる“愛と性”を描き、観る者の情動を掻き⽴ててきた。最新作『星と月は天の穴』は、長年の念願だった吉行淳之介による芸術選奨文部大臣受賞作品を映画化。過去の離婚経験から女を愛することを恐れる一方、愛されたい願望をこじらせる40代小説家の日常を、エロティシズムとペーソスを織り交ぜながら綴っている。主人公・矢添克二を演じるのは、荒井と『花腐し』(2023)でもタッグを組んだ綾野剛。これまでに見せたことのない枯れかけた男の色気を発露、過去のトラウマから、女性を愛すること、愛されることを恐れながらも求めてしまう、心と体の矛盾に揺れる滑稽で切ない唯一無二のキャラクターを生み出した。矢添と出会う大学生・紀子を演じるのは咲耶。女性を拒む矢添の心に無邪気に足を踏み入れる。矢添のなじみの娼婦・千枝子を田中麗奈、さらに柄本佑、岬あかり、MINAMO、 宮下順子らが脇を固める。

主人公・矢添克二を演じた綾野は矢添という人物を「想像力豊かなロマンチスト」と表現。荒井監督の脚本が持つ言葉の強さを信頼し、特別な役作りはしなかったとしつつも「タバコの吸い方や角度が気持ち悪いというか違和感」を意図的に取り入れることで「妙な複雑さ」を滲ませたと明かした。また、文学的な演出や字幕の多用についても触れ、綾野は「今は字幕を読むことに長けている人がたくさんいる」と現代の視聴習慣を肯定的に捉えていた。

撮影現場での意外なエピソードが披露された。綾野は「この作品はアドリブが本当にない」と前置きしつつ、作中で咲耶から「良かったね、お父さん」と声をかけられるシーンについて、綾野は「こんなにナチュラルに咲耶さんに言われて父性が湧いたといいますか(笑)」と笑った。このセリフは台本にはなかったようで現場で監督から咲耶に「絶妙なところで言って」と演出があったといい、綾野は「なんてリアクションしたか覚えてない」と明かした。

イベントでは「今年1年を振り返って印象に残っていることや来年の抱負」についてそれぞれの想いを言葉にした。「印象に残っているのは、とにかくこの作品のこと」と切り出した咲耶は、情報解禁を経て世の中に作品が知られ、自身の役柄が発表され、プロモーション活動を行い、そして初日を迎えたこの一連の流れそのものが印象的だったと語った。作品と出会ってから丸2年が経つことに触れ、「この作品に携わっていた期間すべてが私にとって宝物。今この瞬間もそうです」と本作への愛着と感謝を真っ直ぐな言葉で伝えた。

続いて田中は「今年はとにかく映画館に通った年でした」と笑顔で回答。「邦画が豊作で、月に8本くらい観ないと追いつかない」と明かしつつ、出演作の公開初日を迎えられたことに「改めてすごく幸せな映画の年でした」と喜びを噛み締めた。また、本作のような作品が公開され、多くの観客と共有できることの尊さを改めて感じている様子だった。

綾野は「健康第一」と答え、「役に体を預けるのでその母体として、いい状態で鮮度の高さは改めて考えなきゃいけないというか向き合っていかなきゃいけない。感覚やそういうものじゃ押し切れない」とコメント。さらに「来年のことや今年のことや、いろんなことが前進していることがたくさんあって。だけど、それ以上に大事なのは今生きているという事実に対して、この瞬間に対して何に関わっているのか。改めて今に集中していく」と話す綾野は「遠くを見るチャンスも想像力も膨らむけれど、たった一歩目の今のこの瞬間がすごく大事だと改めて思っている」と、実感を込めて語り、「肉体的にも精神的にも必要な鍛錬をこれからも続けていく」と語った。

【写真・文/河野康成】

『星と月は天の穴』は全国で公開
脚本・監督:荒井晴彦
出演:綾野剛
 咲耶、岬あかり、吉岡睦雄 MINAMO 原一男/柄本佑/宮下順子、田中麗奈
配給:ハピネットファントム・スタジオ
© 2025「星と月は天の穴」製作委員会