撮影/河野康成
「テート美術館 - YBA&BEYOND 世界を変えた90s 英国アート」が国立新美術館で開幕するのに先駆けて、2月10日(火)にプレス取材会が行われ、本展覧会のアンバサダーを務める齋藤飛鳥、ヘレン・リトル(テート・ブリテン 現代美術部門キュレーター)が登壇した。

本展は、1980年代後半から2000年代初頭にかけて制作された英国美術に焦点を当てた展覧会。サッチャー政権時代(1979~90年)を経験し、社会の緊張感が高まる中で、既存の美術の枠組みを問い、実験的な試みに挑んだ作家たちが数多く登場した。当時「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBA)」と呼ばれた作家たち、そして同時代のアーティストたちは、大衆文化、個人的な物語や社会構造の変化などをテーマに、絵画、彫刻、写真、映像、インスタレーションなど多様な手法で独創的な作品を発表してきた。約60名の作家によるおおよそ100点の作品を通じて、90年代の英国美術の革新的な創作の軌跡を検証する。

一足先に展示を鑑賞した齋藤は、その感想について「どの作品においても作られている意図がとてもはっきりしているし、すごく強いものがあるので、どの作品を見ても圧倒されるものがすごくあって、とても心が動く作品がたくさんあるなと感じました」と、作品が放つエネルギーに感銘を受けた様子で語った。

特に印象に残っている作品として、「選ぶのが難しい」と前置きしつつも、齋藤は入り口付近に展示されているフランシス・ベーコンの作品を挙げ、「時代背景も汲み取れるような感じもしますし、なんとなくこちらに恐怖感みたいなものも与えるけれど、すごく深く考えさせられるような作品だと思うので、それがとても好きです」とコメント。さらに「私はアートに詳しいわけではないので、そういう方がもし来ていただいて見て回っていただいた時も、色のインパクトとか雰囲気とか、そういうものを感じ取っていただけるんじゃないかなと思うので、私はそれが好きです」と魅力を語った。

また、本展の音声ガイドナレーターも担当している齋藤は、収録時の心境について「皆さんが素晴らしい作品を見るのを邪魔してはいけないと思って、静かな空間で素敵な作品を見ている時に、ちょっと作品の解説として、分かりやすく届けられるように、何か添えられるものがあればいいなと思いながら一生懸命声を入れました」と、鑑賞者に寄り添う姿勢を明かした。

取材会には、テート・ブリテン現代美術部門キュレーターのヘレン・リトルも登壇。齋藤はリトルに対し、「今回これだけの多くの作品がわざわざ日本に来てくださったということは、私たちはただ見るだけじゃなくて、何かここで感じ取りたいなと思うし、学びたいなとすごく思います。この展覧会に込めた思いや、どんなことを見る人に感じ取ってもらいたいかをお聞きしたいです」と質問を投げかけた。

これに対しリトルは「90年代というのはまさに激動の時代だったんですけれども、そこに彼らがすごく感じ取ったものであったりとか、心に抱えていたものを作品に投影した。そして彼らの物語というものを、彼らは現代美術でよくある崇高なものではなく、日用品を使って、それを芸術の表現する上で使って、一つの素晴らしい芸術的なすごい作品を作っていったわけです」と解説。「現代美術のあり方を変えるような彼らの視点もそうですけれども、こんな日用品のものから彼らが作品を作ったというような背景というものも、今回ご覧いただきながら楽しんでいただければと思います」と、作品に込められた物語や素材への注目ポイントを語った。

また、齋藤は、これから来場する人々に向けて「今回の展覧会は、とてもそれぞれの作品に強い意志だとか、気持ちが込められているので、一つ一つ、見ていただける皆さんに何かが届いたら、こうしてアンバサダーをさせていただいている私もとても嬉しいなと思います」とメッセージを送った。そして、「もしアートとかそんなに分からないな、ちょっと敷居が高いように感じるなっていう方も、ちょっと一歩踏み出してここに来ていただいたら、何も分からなくても何かは届くものがあるので、ぜひスマホで『こういうのが展覧会にされてるんだな』って見るのもいいですけど、実際にここに足を運んでいただいて、ここの美術館の空気とか音とかそういうものも五感で体感していただけたらとても嬉しいなと思います」と呼びかけた。

【写真・文/河野康成】

「テート美術館 - YBA&BEYOND 世界を変えた90s 英国アート」は2026年2月11日(水・祝)~5月11日(月)に国立新美術館で開催