クロエ・ジャオ監督最新作『ハムネット』の本編映像が解禁された。

2020年に発表され、英女性小説賞、全米批評家協会賞を受賞し、世界から喝采を浴びたマギー・オファーレル著の同名小説「ハムネット」の実写映画化である本作。舞台は16世紀イングランドの小さな村。薬草の知識を持ち、不思議な力を宿したアグネス・シェイクスピアと、作家としてロンドンで活動する夫ウィリアム・シェイクスピア、そして3人の子どもたちが描かれる。夫がロンドンで働くため、父親不在のなかで子どもたちを守り奮闘するアグネスだったが、やがて不運にも11歳の息子ハムネットを失うー。深い悲しみと苦悩、そして家族の愛と絆が浮かび上がっていく。ペスト禍に揺れる当時の人々の姿や、アグネスの視点から映し出される夫ウィリアムの存在、そして「ハムレット」という戯曲が生まれた背景にある悲劇と愛の物語が描かれた1作。

今回解禁された本編映像は、恋焦がれるアグネスの視線を引き留めようと不器用に接触するウィリアム・シェイクスピアの姿を捉えた印象的な一幕。そのなかでひときわ目を奪うのが、緑豊かな自然の中に鮮烈に浮かび上がるアグネスの〈真紅の衣装〉だが、生命力と痛みの記憶を同時に感じさせるこのドレスには、キャラクターの内面を読み解くための緻密な設計が込められている。

衣装デザインを手がけたのは、Netflixシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」や、A24製作の『X エックス』『Pearl パール』などで知られ、第98回アカデミー賞衣装デザイン賞にもノミネートされたマウゴシャ・トゥルジャンスカ。アグネス役のジェシー・バックリーは、この赤いドレスについて「まるで開いた傷口のような色で、時間をかけて縫い上げられ、いくつもの穴が繕われています。誰にも見えないほど小さなものまで」と語り、鷹匠、薬草採集者、治療師として自然と結びつく彼女の精神性を象徴する衣装であることを明かす。

ロサンゼルスプレミアに登場したマウゴシャ・トゥルジャンスカ
©2025 Eric Charbonneau

トゥルジャンスカは衣装デザインの着想についてこう説明する。「思い浮かんだのは鼓動する心臓、生命力と血で満ちた筋肉でした。彼女は自然と有機的につながり、ベリーのように慎重に扱わなければ毒にもなりうる存在です」アグネスが初登場する時のベリーレッドやオレンジ、さび色といった鮮烈な色彩は、物語の進行とともに灰紫やプルーンブラウン(深みのある濃い黒紫色)へと変化し、癒えない傷のように、最後には深く成熟した赤へと移ろっていくという。

素材面でも徹底したコンセプトが貫かれている。アグネスの大地との結びつきを表現するため、衣装には主に植物繊維の生地を採用。リネンは歴史的背景とキャラクター性の双方に適合する素材として用いられ、さらに本物の樹皮から作られた有機的なテキスタイルも取り入れられた。重ね着の構造は時代考証に基づきながらも、着こなしには現代的な感覚が与えられている。

「整った装いのシェイクスピア家の人々と比べると、彼女は野性的で反抗的、パンクな印象を持っています。外見は変化しますが統一感を保ち、まるでムードリングのように、一着のドレスが自然に彼女に寄り添って変化していくように見せることが重要でした」視覚的なインパクトだけでなく、キャラクターの時間や感情の変遷までを織り込んだ衣装表現。真紅のドレスの意味を知ることで、本編の見え方もまた大きく変わりそうだ。

本編映像

『ハムネット』は2026年4月10日(金)より公開
監督:クロエ・ジャオ
出演:ジェシー・バックリー、ポール・メスカル、ジョー・アルウィン、エミリー・ワトソン
配給:パルコ ユニバーサル映画
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