『夏の砂の上』の公開記念舞台挨拶が7月5日(土)にTOHOシネマズ日比谷で行なわれ、オダギリジョー、髙石あかり、玉田真也監督が登壇した。
長崎出身の松田正隆による読売文学賞 戯曲・シナリオ賞受賞の傑作戯曲を、気鋭の演出家・玉田真也の監督・脚本で映画化。本作は、息子を亡くした喪失感をきっかけに人生が止まってしまった主人公と、妹が置いていった17歳の姪との突然の共同生活からはじまる。愛を失った男、愛を見限った女、愛を知らない少女…それぞれの痛みと向き合いながら、彼らが夏の砂のように乾き切った心に、小さな希望の芽を見つけていく姿を描く、切なさと温かさが交錯する珠玉の物語。主人公・小浦治を本作で共同プロデューサーも務めるオダギリジョー、治の姪・優子を髙石あかり、治の妻・小浦恵子を松たか子、優子の母で治の妹・阿佐子を満島ひかり、優子へ好意を寄せる・立山を高橋文哉、治が働いていた造船所の同僚・陣野をフォークシンガーの森山直太朗、同じく同僚・持田を光石研が演じる。
最初の挨拶で口火を切ったのは、小浦治を演じたオダギリは「映画を観終わったばかりで、きっと読後感というか、映画の思いに浸りたいところだろうにお付き合いいただいて申し訳ない気持ちもありますけど」と観客を気遣いつつも、突如「何も起きなかったですね、今日」と切り出し、“7月5日に大災害が起きる”とSNSなどで話題になっていることに触れ、「舞台挨拶がなくなるのかなと思ってたんですけど、まあやっぱこんなもんですね」とユーモアを交えて挨拶をして、会場を沸かせた。
続いて、川上優子を演じた髙石は「この作品で私の俳優人生は大きく変わっていくだろうなと思いながら撮影をしていて」と語り始め、「先日、このお二人と一緒に上海国際映画祭に登壇させていただいて、賞までいただいて、本当に変わっていくと今実感しています。そんな素晴らしい作品がやっと公開ということで、すごく嬉しく思っております」と、受賞を経ての確かな手応えと喜びを力強く語った。
本作は先日行われた上海国際映画祭において審査員特別賞受賞となったが、その心境を問われたオダギリは、『ニュー・シネマ・パラダイス』で知られるジュゼッペ・トルナトーレ監督がコンペティション部門の審査員長だったことに触れ、「その方が一押ししてくれたということで、とても光栄」と喜びを語った。一方で、「ただの賑やかしで呼ばれてんのかと思ってたので、嬉しかったですね」とここでも“オダギリ節”を炸裂させ、会場を和ませた。
初めての海外映画祭参加となった髙石は、現地の熱気を肌で感じたといい「いろんな国の方々がオダギリさんに『写真撮ってください』『サインを』って、たぶん一番求められていて。オダギリさん、世界に名を…と、勝手に嬉しくなっちゃいました」と興奮気味にエピソードを披露。これにはオダギリも「いろんなとこで言ってください、それ」と満足げに返し、笑いを誘った。
また、本作の評価ポイントとなった「抑制の効いた演技」について、オダギリは「日本の繊細な芝居がどこまで伝わるのか疑問だった」と明かしつつ、「評価していただけると、伝わっているのだなと実感できますね」とコメント。しかし、すかさず「(評価の言葉は)『抑制の効いた』ですもんね。だから、やっぱちょっと足らないみたいなニュアンスもちょっとある…」と深読みしてみせ、会場は笑いに包まれた。
さらに、髙石は本作の撮影中にNHK連続テレビ小説『ばけばけ』のヒロインに決定したことを聞いたというが「言いたかったです! 一番近くにいたから、めちゃくちゃ言いたくて」と当時のもどかしい心境を明かす髙石だが、オダギリが「(自分は)特に言っちゃいけないタイプですね」と絶妙な相槌を打ち、キャスト陣の仲の良さをうかがわせた。
イベントでは、七夕にちなんで願い事を書いた短冊も披露された。
【写真・文/編集部】
『夏の砂の上』は全国で公開中
監督・脚本:玉田真也
出演:オダギリジョー
髙石あかり、松たか子
森山直太朗、高橋文哉、篠原ゆき子/満島ひかり
斉藤陽一郎、浅井浩介、花瀬琴音
光石研
配給:アスミック・エース
©2025 映画『夏の砂の上』製作委員会