チャップリンからの贈りもの

ちりばめられているオマージュ

本作にはチャップリン・ファンが見て納得のオマージュが随所に見られる。住んでいる家は『モダン・タイムス』の掘建て小屋のよう。主人公は『給料日』のチャップリンのように高いところで作業をするなど、チャップリン作品に出てきそうな人物。メイクから衣装まで『ライムライト』のカルヴェロの楽屋を模したシーンもある。また、同じく『ライムライト』のチャップリンとキートンの2人組そのままのように見える後姿も映っている。ほかにも『サーカス』などの名作の1シーンを思わせるような姿を見ることができるので、チャップリン映画との関連を探してみるのも楽しい。

日本が好きだったチャップリン

映画には庭のサクラの話が出てくるが、チャップリンは親日家としても知られている。きっかけは映画デビュー3年目の1916年、日本人の高野虎市を運転手として雇って以来、誠実な働きぶりに惚れ込んですっかり日本人びいきとなった。彼のトレードマークであるステッキは、滋賀県産の根竹でできたもので、戦前の日本の輸出工芸品だった。1932年に初来日したチャップリンは、生涯で4回来日している。

本当にあったチャップリン遺体誘拐事件

本作はチャップリン遺体誘拐事件の実話に基づいている。チャップリンの死去から2ヶ月たった1978年3月2日の朝、チャップリン邸近くにあるスイス・レマン湖畔のヴヴェイ墓地に埋葬されていた遺体が棺ごと盗まれたことに気づく。数日後、遺体と引き換えに60万スイスフランを要求する電話があった。妻ウーナは「夫は天国で私の心の中にいます」と身代金取引を拒否。やけくその犯人たちは子どもたちに危害を加えると脅してきたので警察も本格的に捜査を始めた。犯人からの電話に対応したのは、娘で女優のジェラルディン。悲観にくれている見事な演技力で会話を引き伸ばして逆探知に成功し、事件は解決した。犯人は失業中のポーランド人自動車修理工と東欧からの亡命者で、映画どおりのドタバタの2人組だった。